コツは、「だいたい先週の水曜日」とか「だいたい20日くらい」と分かったら、その日の朝からの出来事を聞く(問いかける)ことです。朝、何時に起きて、そのときの気分はどうだったか、から聞くのです。朝は普通だったとなったら、むなしさを感じ始めたのは、朝以降ということになります。要するに、感情がピュンと出てくる瞬間を捕まえたいわけです。Aさんは最初に、むなしさを感じたのは「夕方くらいです」とおっしゃっていたんですが、よく思い出すとお昼くらいから感じていましたね。ここは見過ごしてやすい部分です。
朝、起きたときどうだったかと問いかけて、朝起きたときから、もうむなしい気持ちだったのなら、今度は前日から思い出してください。朝からむなしさを感じていたのだったら、「前の晩、何をしていたか?」と問いかけます。例えば、「前の晩、飲みに行っていた」。そのときの気分は? 「最初は結構良かったけれど……」となると、その飲み始めてから寝るまでのどこかで、ピュンとむなしさを感じた瞬間が来ます。そこをつかんでほしいのです。これを掴めるかどうかが、すごく重要です。
実は、これを自分でつかめるようになったら、ほとんどカウンセリングは必要なくなります。落ち込まない人間はいません。私も落ち込んだり不安になったりします。ただ、私はどこで落ち込んだかをパッと捕まえられるから、すぐ抜けられるのです。
平本 では、そのときをありありと思い出してください。「感情」「思考」「行動」「結末」を問いかけていきます。朝、起きた瞬間は平気でした? 起きて、まっさきに何をしましたか?
A 起きて、顔を洗って、トイレに行って……。
平本 そのときは? むなしいと思いましたか?
A いえ何も。普通でした。
平本 トイレのあとは?
A ご飯を食べたのかな。
平本 そのときの気分は?
A 普通でしたね。
平本 ご飯を食べた後、どうしましたか?
A ご飯を食べた後、ベランダに行ってタバコを吸って、そのへんにあった本を取って、本を読み始めました。
平本 そのときの感情は?
A う〜ん……特にそのときはどうということはなかったですが、本があまり面白くなくて、数ページ読んで閉じちゃいました。じゃあテレビでも見ようか、みたいになって、テレビの前に行って、つけて、でも面白くなくて。
平本 そのときの感情は?
A だんだんと「何をやっているんだろう、オレは」みたいな感じ。
平本 そのとき、何を考えていました? 本もつまらない、テレビもつまらないで。
A 「今日は何をやってもつまらないなあ」みたいな感じです。
平本 「今日はつまらない」と思いながら、気持ちはどんなでしたか?
A 「何をやっているんだろう、僕は」という感じ。
平本 それは“考え”ですね。気持ちは? 落ち込むのか、イライラするのか、むなしいのか。
A すごくむなしい感じです。
平本 で、どうしました?
A で、「買い物に行こう!」と思い立って、玄関を開けて、近くのスーパーまで買い物に行ったんですが……。
平本 行って、どう感じました?
A 「いろいろ買うものはあるなあ、楽しそうだなあ」と思ったんですが……
平本 ですが、結末は?
A 買うとなったら、欲しいものもなく……。
平本 なくて、どう感じました?
A 「何をしに、ここに来たんだろう」と。
平本 「何をしに、ここに来たんだろう」と考えて、どういう行動を取りました?
A 家に帰りました(笑)
平本 帰るとき、どんな気持ちで帰りました?
A 「オレは何をしているんだ、今日」
平本 気持ちでいうと?
A まさに「むなしい。やりがいがない」という気持ちです
平本 で、どうしました?
A 今度はパソコンでWebでも見ようと思って。でも、やっぱり読んでもつまらないんですよね。
平本 読んでいて、どんな気持ちですか?
A 「また時間を無駄にしちゃったなあ」と。
平本 「無駄にしちゃったなあ」と“考えた”。気持ちは? 落ち込んだのか、腹が立ったのか、イライラしたか、がっかりしたか、むなしいか。
A がっかりとむなしいの間くらいですね。ふがいない、かな。
平本 ふがいない。そしてパソコンの後、どうしました?
A その日は結局寝ちゃいましたね。「何をやってたんだろう、オレは」と思いつつ。
平本 「何をやっていたんだろうと思いながら」そういう結末だったという1日ですね。
A はい。たまに、そうなるんです。
平本 以上のように、「思考」「感情」「行動」「結末」を行き来して振り返りました。今のように明確化してみて、どんな気持ちですか?
A すごく集中できることがあると楽しいみたいですね。集中するとむなしさは感じないようです。
平本 なるほど、集中できることだと。
このように、ネガティブ感情を特定して、出来事を特定し、感情、思考、行動、結末を明確にしました。その結果、集中できるとむなしさは感じないようだ、という気づきが得られました。
次回はステップ3。状況が明確になったものの、不安から逃れられない場合の対策法を紹介します。
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