野口式応用──衣類「超」整理法文具王の「B-Hacks!」

整理整頓に困るものはたくさんあるが、自宅においては衣類の整理が頭の痛い問題だ。この問題を、野口悠紀雄氏の「超」整理法を応用して解決してみよう。ポイントはハンガーだ。

» 2008年01月23日 13時00分 公開
[高畑正幸,ITmedia]

 私たちの日常で、整理整頓に困るものはたくさんあるが、衣類の整理は自宅において頭の痛い問題ではないだろうか?

 ここにもビジネス書類の整理整頓の考え方を応用してみよう。ビジネス書類の整理法として最も有名なものの1つに野口悠紀雄氏が提唱する「野口式『超』整理法」があるが、その最も重要なポイントは下記の点である。

  1. ポケット一つ原則(収納は1カ所にまとめる)
  2. 規格の統一(すべてを角形2号の封筒に入れて形をそろえる)
  3. 時間順(内容で分類せずに最近使用したものを左端に入れて常に時間順に並べる)

 これを応用してみよう。

ポケットは一つに、規格も統一

衣類を分類して別々の引き出しに収納するのをやめ、パンツ・靴下・ネクタイ以外すべてをハンガーパイプにつるす

 まずポケット一つ原則。衣類を分類して別々の引き出しに収納するのをやめ、パンツ・靴下・ネクタイ以外すべてをハンガーパイプにつるす。衣替えでも場所を移さない。引き出しに入れてしまうと、そういう衣類を持っていること自体を忘れてしまうし、「しまったはず」の衣類を探すのに時間がかかる。自分がいったいどの衣類をどのくらい持っているのかを把握するためにもそれらを見えるように収納することにする。

 クローゼットや押し入れの中に突っ張り棒を渡すだけでも良い。見えないところに収納したら2度と使わなくなる確率が高くなるのは書類でも同じ。とにかく、基本的につるせるものはすべてつるしてハンガーパイプに片っ端から掛ける。これで「確かどこかに入れたような……」なんていう捜し物はなくなるはずだ。

 こうすると、自分の持っている衣類のバランスが棒グラフのごとく見えてくる。意外に偏ってはいないだろうか? こんなの持ってたっけ? というものがかなり出てくる一方、これだけしかなかったっけというジャンルがあったりする。この際だから、ここで不要なものは廃棄してしまおう。すべて同じところにあれば、そこにあるのがすべてである。全体像が把握できれば、買い増しの参考にもなる。

ネクタイを掛けるハンガー

 次に重要なのがなんと言っても規格統一。ということで、自分の衣類をできる限り同じフォーマットで扱えるようにする。もちろん衣類と言っても形状はさまざま。これをすべて1つのフォーマットというのはさすがに無理だ。そこで筆者はまず衣類を、外着・上着・Yシャツ・Tシャツ・ズボン・パンツ・靴下・ネクタイの8種類に分けた。

 パンツ・靴下は、それぞれ引き出しを用意し、そこに放り込んで終了。ネクタイはこのタイプのハンガーにすべて掛ける。類似品がいろいろあるようで、どれが元祖か分からないが、かなりの量まで1カ所に積み上げられるし(筆者の場合は1個で充分全てのネクタイを掛けられる)、必要なものは下の方からでもちゃんと取り出せるので、オススメである。問題はここからだ。


最重要アイテムは「ハンガー」

 外着からズボンまでは基本的にすべてハンガーにつるすことが可能である。つるせないデリケートなものや特殊なもの(筆者は持っていない)は今回の方式からは除外。ここで重要なのがハンガーだ。自宅にあるハンガーが何個あるのか、把握している人は少ないと思う。試しに一度想像してから実際の数を数えてみてほしい。

 思ったよりもたくさんあるのではないだろうか。この方法をやり始めた当初、筆者の場合はゆうに50本以上はあった。しかも、すべての服をつり下げるとなると、相当数必要になる(現在100本以上を使っている)。

文具王宅のハンガー(一部)
衣類 ハンガーの本数
スーツ(夏) 3本
スーツ(冬) 2本
スーツ(黒) 1本
Tシャツ 10本
無地Tシャツ 10本
ワイシャツ 10本
カジュアルシャツ(夏) 5本
カジュアルシャツ(冬) 5本
セーター 2本
トレーナー 1本
フリース 1本
パジャマ 2本
作業服 1本
ズボン(夏) 4本
ズボン(冬) 2本
コート 1本
ジャケット(夏) 1本
ジャケット(冬) 2本
ブルゾン 1本
特に衣装持ちというわけでもないと思うが、用途別に主要な品種を並べただけでもこれだけある

 ここで最も良いハンガーの選び方は何か。選択のポイントは「いつでも同じものが欲しいだけ、しかも経済的に入手できること」だ、これはA4書類や角形2型封筒と同じ。ではその条件に最も適しているのは? それは、近所のクリーニング店のハンガーだ。

 クリーニングに出した衣類が掛かってくる最も安価なハンガーである(ただし一部のお店で使われているハリガネハンガーは変形するので、今回は不採用。店を変えてでもプラスチックハンガーにする)。このハンガー、ほとんどのクリーニング店は3〜4種類に統一されていて、ハンガー代金はクリーニング料金に含まれている。これに切り替えていくのである。

 筆者は、シャツをクリーニングに出す度に入手したハンガーと同数のハンガーを捨てて入れ替えてきた。クリーニング屋さんと仲良くなると、回収されたものを分けてくれたりする場合もあるのでチャレンジしてみよう。筆者の場合は、これも合わせてかなりいいペースで入れ替えができた。今では自宅のハンガーはたった2種類。すべてそのクリーニング店のものである。普通の上着は問題ないし、重量のあるコートなど外着の場合は、このハンガーを2枚重ねにして変形を防ぐ。

筆者の近所のクリーニング店で扱っているハンガー3種。上から(大)主に紳士用(小)主に女性用の衣類・スカート・ズボン用(角)Yシャツ用。

筆者は(大)と(角)の2種類のみを使用。ズボン類は(角)それ以外はすべて(大)を使用している

クリーニングのススメ

 筆者はスーツとYシャツは100%クリーニングだ。クリーニングにお金を支払うことに抵抗を持っている人もいるようだが、特にYシャツは、ほとんどのクリーニング店でほかの衣類に比べ料金が安く設定されている。筆者の近所では100円である。洗濯による痛みやアイロンがけの手間、仕上がりの美しさなど考えれば、どう考えてもクリーニングが得だ。


 クリーニング店のハンガーにするのは、タダ同然で入手できるからだけではない。大きさや形状だって、あらゆる衣類を取り扱うことを考え抜いて決められたものだ。ある意味これに勝るものはないと言い切って良いと思う。時々、テレビショッピングなどで紹介される高性能なハンガーや、ホームセンターで見かけるアイデア物など、一見便利そうに見えるかもしれないが、そんなスーパーハンガーが10本や20本あったところで多勢に無勢、しかも余ったり不足したりしたときにも捨てにくかったり入手できなかったり。問題はトータルで整理することが重要なのだ。

 しかもクリーニング店のハンガーは薄くてコンパクト。ハンガーバーの収納力を最大化できる。これで最初に分けた大まかなジャンルごとにかためてつるすだけ。柄や用途では分類しない。これだけで驚くほど整然と衣類が並ぶ。この状況は感動的ですらある。

ハンガーを統一するだけで驚くほど整然とする

ハンガーで洗濯も簡単に

 Tシャツなどは最初からこのハンガーに掛けて干せば、畳む必要も一切なし。物干し竿からハンガーパイプに移動するだけである。しかも畳まないからシワもほとんど入らない。


 そして次が時間順整理、これは簡単だ。洗濯済みの衣類を右(または左)端から順に掛けていくだけ。使うときは好きなところから好きな服を取り出せばいい。右端から掛けていった場合、当然使用頻度の高いものが右に集まり、着ないものはどんどん左に押しやられていく。ワイシャツのようにローテーションで痛みを防ぐなら左端から順に使えばいい。

 何も考えずこれを続けていると、オフシーズンの物は勝手に左に集まっていくし、最終的にほとんど利用されないものが端っこに追いやられるので、処分の検討は左端からしていけばいい。おお! 「超」整理法っぽい。この方式、アタマを使う必要一切ナシなので、筆者のような忙しくてものぐさな人間でも続けることができる。ちなみに、今回ご紹介したネクタイハンガーも、じつは同様のシステムになっており、古い物は下の方に溜まり、よく使う物が自動的に手前に来るようになっている。

 ここまで書いてから気付いたが、よく考えたら、最もシステマティックに衣類を“ファイリング”しているのがクリーニング店である。客から預かったさまざまな衣類を洗い、保管し、返却する。その間効率よく衣類を収納し、管理していくノウハウがそこにある。この方式はその道具とやり方をそっくりそのまま戴いてきて再現しているに過ぎない。なんだ、そういうことか。

今回の方式は独身男性である自分のケースなので、女性や家族の場合、衣類の嗜好などそれぞれのケースに合わせて多少のカスタマイズが必要かもしれない。いずれにせよ、極力ハンガーの種類を増やさないことをオススメする。

著者紹介 高畑正幸(たかばたけ・まさゆき)

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 1974年、香川県生まれ。図画工作と理科が得意な小学生を20年続けて今に至る。TVチャンピオン「全国文房具通選手権」で3連覇中の文具王。現在は文具メーカーに勤務、文房具の企画開発を行っている。2006年「究極の文房具カタログ」上梓。文具サイト「TOWER-STATIONERY」を主催。


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