ふつうの人とプロはどこが違うのか?――『ビジネスマンのための「発見力」養成講座』5分で読むビジネス書

プロフェッショナルとは何なのか? 普通の人には見えないものを見えることがその違い。そして、そのためには“仮説を立てる力”が重要だと説く。

» 2008年02月26日 10時03分 公開
[大橋悦夫,ITmedia]
表紙

小宮一慶『ビジネスマンのための「発見力」養成講座』(ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)

 ちょっと見ただけで、パッと全体をつかむ人がいますが、実はそういう人がいちばん危険です。本質的なものを見逃していながら、そのことに気づかずに、分かったような気になって誤った判断をし、誤った行動を起こしてしまう可能性があるからです。

 (中略)

 何かのプロフェッショナルは、そのことについての素人には見えないものがたくさん見えるものですが、それは、何であれ、見れば見るほど、見たいもの、見ようと思うものが増えてくるからです。

 言い換えると、物事には奥行きがあって、深いところまで見れば見るほど、その先にまだ、見えていないことがたくさんあることが分かってくるのです

 つまり、分かっていないことが分かってくる。そして、それらについての関心が高まる。だから、それを見ようとします。(p.33)


3

 ビジネスパーソンである限りは、何らかの分野で自他ともに認めるプロフェッショナルであるはずだ。では、何を持ってプロたりえるといえるのだろうか? なぜ、クライアントはあなたをプロと認めてフィーを支払ってくれるのか?

 著者の主張によれば、同じ情報を前にしても、普通の人には何も見えないところを、プロであるあなたには何かが見える、このギャップこそがフィーの源泉ということになる。

 では、どうすれば「見える」ようになるか?

 その「見える」力を養うための具体的なトレーニング法として、筆者は以下の10の方法を紹介している。

  1. 先に要点を知る
  2. ヒントを先に得る
  3. 分解する
  4. 情報を減らす
  5. 気づいたことをすぐメモする
  6. 比較する
  7. 一部を取り換える
  8. 視点を変える
  9. 複数で話す
  10. 素直になる

 これらの方法はすべて1つの言葉で集約することができる。それは、「いかに仮説を立てるか」だ。つまり、「見える」力とは「仮説を立てる」力ということになる。

 本書には著者が自身の経験を通じて築き上げた「仮説を立てる」ための方法論が、豊富な事例とデータとともに紹介されている。

 例えば、著者は日経産業新聞に掲載される小金井カントリークラブの会員権相場を10年以上ウオッチしているという。会員権が日本一高いといわれているカントリークラブであり、この数字を経済指標として見ることができるのではないか、という仮説に基づいての行動というわけだ。経済指標としては株式相場が一般的だが、これとは別に自分の仮説から導き出したウオッチ対象を持っておくことで、アウトプットに「違い」を出すことができる。

 あるいは、一流ホテルを見分ける基準として、「サラダバーのプチトマトのへたが取ってあるかどうか」が挙げられている。これもまた、著者が自身の経験の蓄積から導き出した仮説だ。

BOOK DATA
タイトル: ビジネスマンのための「発見力」養成講座
著者: 小宮一慶 著
出版元: ディスカヴァー・トゥエンティワン刊
価格: 1050円
読書環境: ×書斎でじっくり
△カフェでまったり
◎通勤でさらっと
こんな人にお勧め: プロフェッショナルであり続けたいと思っている人。

 これらの例から、仮説とは他人から拝借するものではなく、自らの経験を通して作り上げていくものだ、ということがわかる。

 「仮説を立てる力」は、本を読むときも、人と話す時も、映画を見るときも、そしてクライアントと対面するときにも常に発揮されている。それが感覚を研ぎ澄まし、プロとしての「違い」を生み出すことになる。

 最後に、1つ注意すべきことがある。それは、本書もまた著者による仮説の1つにすぎない、という点だ。仮説である限りは、そこにあなたが別の仮説を立てる余地がある、ということだ。その時が、著者にも見えていない何かが見えるようになった瞬間となるはずだ。

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