インタビュー
» 2008年03月19日 14時37分 公開

ひとりで作るネットサービス:「子育てマイアルバム」を作ったのは元“子連れニート”――荒木稔さん (2/2)

[田口元,ITmedia]
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ちょっとだけ生活が便利になる「子育てマイアルバム」

 3カ月の無職期間を経て仕事が回せるようになってきた荒木さん。ここに至るまでの道はもちろん平たんではなかった。仕事でつらいことも多々あった。そうしたとき勇気をくれたのが、妻が送ってくれる子供の写真だった。「仕事が忙しくなると子供の寝ている顔しか見ることができないのです。妻が日中送ってくれる子供の写真が1枚でもあれば、『よし、がんばるぞ!』と思うことができました」

 子供の写真に元気づけられる毎日を送るうちに、「ケータイを使って夫婦で共有できるアルバムがあればいいかも……」と思うようになった。PCでアルバムを共有するサービスはすでにあるが、子育てをしながらこうしたサービスを使うのは至難の業だ。「子供はPCのふたを開けたとたんにバンバン叩き始めますし、とてもじゃないですが、PCから写真をメール添付して送るなんてできないですよね」

PC画面からも携帯サイト「子育てマイアルバム」のURLが簡単に送ることができる。au、ドコモ、Softbank、Disney Mobileで使える
こちらが携帯サイト画面だ。やわらかなトーンで統一

 ケータイで写真を撮って、子供を寝かしつけた後にちょっとしたコメントをつけて気軽に送ることができれば便利かもしれない……。そう思い立って「子育てマイアルバム」の設計を始めてみた。荒木さんが一番大事にしたのは「使っている人のストーリーを大切にすること」。人々の生活を大きく変えることはできない、と荒木さんは考えている。斬新なサービスよりも、ちょっとだけ今の生活が便利になるサービスにしたかった。

 あえてSNS的な要素を外したのもこうした理由からである。友達同士がつながっていくサービスが流行しているが、それよりもリアルな生活をサポートしたかった。バーチャルな仲間を増やすよりも、子供を通じて夫婦が少しずつ仲良くなっていくことを目指した。

 「1枚の写真を共有することで、昨日よりもちょっとだけ2人の空気が良くなればいいと思っています。夫婦が0.5歩ぐらい歩み寄れる、そういうサービスにしたかったのです」

 また、最初からすべての機能を提示するのではなく、ユーザーの経験値に合わせて「今できることを1つだけ説明する」というインタフェースも採用した。内部でユーザーのレベル値を保持し、「これができたら次はこれ」と、順を追って使ってもらえるようにしている。例えば登録したばかりのユーザーには「まず写真をアップしてみましょう」と促し、それが終わったら「次に相手を招待しましょう」という表示を出すようにしている。

 開発にあたっては奥さんや知り合い夫婦にテストしてもらい、細かな改善を重ねていった。一般向けにリリースしたのは2008年の2月末。続々と寄せられる感想メールに感動した。「こういうのが欲しかったです!」「あ、これはいいね!」。「誠」で連載している保田隆明さんにも取り上げられて感激したという。

サイトのコンセプトを説明する画面、その1。ママからのコメント
続いてその2はパパからのコメント
コンセプトの最後には、「たくさんのことをしなくていいんです」とある

 今はまだ始まったばかりの「子育てマイアルバム」。しばらくは地道にサービスを継続する予定だ。ユーザーの意見を取り入れつつ、サービスの改善をした後は、「子供を通じて家族が幸せになれるサービス」を追加していくつもりだという。家族で出掛ける場所を見つけたり、アップした写真を印刷して祖父母に届けることができればいい、と考えている。

ケータイが魔法の杖のようになってほしい

 「インターネットって調べ始めたら無限に情報が見つかりますよね。昔はネットの情報に流されていたような気がします」。やりたいことに集中するコツを荒木さんはそう話す。「インプットはあくまでアウトプットありき、です。アウトプットしたいときだけ、必要な分だけのインプットをしています。インプットよりもアウトプットの量を増やすようにいつも心がけています」。数百のRSSフィードを購読していた時期もあったが、現在は100もないぐらいまでに絞った。

いつも持ち運んでいるDELLのLatitude D610の背面

 よく使っているツールはGmail、Googleカレンダーなど。ケータイに力を入れているだけに、ケータイから使えるシンプルなツールを使うようにしている。PCはマウスを使わない派なので、キーボード中央にトラックポイントがあるDELLのLatitude D610を使っている。「以前はThinkPadを使っていたのですが、画面が大きく静かなマシンが欲しくて乗り換えました」

 開発にはUnEditorを愛用している。初期状態から言語別の色分けをしてくれていたり、文字列の検索や置換機能が強力なわりに無料なのが気に入っているという。


 「ケータイが魔法の杖みたいになってほしい、と思っています。机の上にポンッと置いたらそこが好きな色に変わったり、といったことを考えるとワクワクしますね」。ケータイといえば中高生というイメージが強いが、荒木さんは「若者の文化を追うよりも、(ケータイで)身近な生活をもっと便利にしたい」と考えている。

 やる気が出ないときはやっぱり子供と遊ぶのですか――。「やる気がないときは別の仕事をするようにしています。仕事のストレスは仕事でしか解消できませんから。子供と遊ぶのはだめですね。ずっと遊んでいたいのでさらに仕事したくなくなっちゃう(笑)」。なんとも言えない満面の笑顔でそう教えてくれた。

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