そんなに重い荷物を持ってどこ行くの? 海外出張に「大判即写」編樋口健夫の「笑うアイデア、動かす発想」

今週は「大判即写」を取り上げたい。なに? 大判即写をご存じない? カシオのボードコピー機「大判即写」(CP-1000)だ。すでに生産終了しており、最近ではヤフオクなどで見かけるぐらいだが、なぜこの機械が筆者の宝物になったのかをご紹介しよう。

» 2008年05月09日 23時03分 公開
[樋口健夫,ITmedia]

 先週はプリンタの話をした。記事末に「次週は、海外防犯装備について説明したい」と言ったが、勝手ながら予定を変更する。海外防犯装備を楽しみにしていた読者諸兄には謝る。今後の連載に期待してほしい。

デジカメの元祖?

カシオ計算機のボードコピー機「大判即写」(CP-1000)。上のほうに見えるのがレンズ。右に付いたプリンタで出力する

 今週は「大判即写」を取り上げたい。なに? 大判即写をご存じない? カシオ計算機のボードコピー機「大判即写」(CP-1000)だ。筆者の宝物である。これを手に入れたのは1994年ごろだ。1台が9万8000円もしたことと、活用方法がよく分からなかったことが理由だろうか、製造停止になってしまったので、あわてて店頭在庫から1台購入したのを覚えている。最近ではヤフオクなどで見かけるぐらいだ。

 とにかくユニークな機械である。本体はプロジェクタのようでA4判よりも少し大きなサイズ。2〜3メートル離れた場所から黒板やホワイトボードを写真のように撮影する。平版なボードだけでなく、「グラフィックモード」を利用すれば立体感のある物体も撮影できるから、デジカメの元祖――かもしれない。ただし、内蔵メモリはないので、撮影した画像をそのまま15秒ほどかけて印刷することになる。本体にセットしたFAXのロール紙にモノクロ印刷するのだ。

 どんな黒板でも白板でも、離れた机の上からコピーできるのが魅力。例えば学校で先生の板書を、学生が自分の机からA4サイズの用紙にその場で撮影・印刷できる。白黒を反転して印刷する機能も備えており、場合によっては、かなり鮮明に写る。その場で、印刷してコピーが作れるのは信じられないほど便利で、学生には夢みたいな道具だ。高校時代に、この機械があったらもっと勉強がはかどっただろう。

 筆者がこの機械を手に入れたのは、ベトナムに駐在する直前だった。この大判即写をベトナム語の勉強に活用したのは言うまでもない。早朝の1時間を使ってハノイ大学の先生に会社で教えてもらっていた。授業は、学びたい場面の会話を先生と一緒に作ることから始まる。

 例えば、官公庁訪問、値引き交渉、客先の案内、安全運転をタクシーのドライバーにお願いする――などの会話を、黒板に先生と一緒に板書する。これを大判即写でコピーするのだ。ベトナムから帰国後、授業のことはほとんど忘れてしまったが、当時の労作は“健在”だ。大判即写にほかに必要なのはFAXのロール紙だけだったから、コストも安かった。

問題はあったが……

 ただ、いくつかの問題があった。

  1. CCDの感度が強すぎて、外で撮影には明るすぎた。だから、筆者はレンズフィルターを取り付けていた。
  2. 露出時間が長いかった。撮影している間、約15秒ほど被写体が動くとブレてしまう。
  3. 消費電力が大きかった。電池は大きなニッカドで撮影は10枚が限度。充電には7時間ほどかかった。筆者はスペアを3セット所持。
  4. A4大の筐体、スペアの電池3セットは、それだけで大きな荷物。

 だが、こうした問題を乗り越えて味のある“写真”ができるから面白い。露出時間が長いから、「はい、じっとして」とか「Don't move」とか、(ベトナム語では)「ホンクードン(動かないでの意味)」と、叫んでから撮影する。その国の大臣に対しても「動くな」――である。

 すると、昔のピンホール写真に匹敵(?)するほど風情のある白黒A4写真ができるのだ。これが結婚式やパーティなどで絶賛。民族衣装は最高の被写体だった。当時はデジカメもなかったし、すぐ印刷できるだけでもすごかった。

 いつも筆者は連続して2回撮影し、1枚を相手にプレゼントしていた。それだけで何度、ビールを乾杯したか! 1回の旅で数十枚の白黒“写真”を持ち帰り、背表紙を付ければ「思い出の写真集」のできあがりである。

 もちろん会議の議事録にも利用した。ちょっと重いのだけが最後までツラかったが……。

思い出の写真集たち。なかなか味のある写真ではないか

今回の教訓

相手の分を忘れない。議事録の時は人数分――。


著者紹介 樋口健夫(ひぐち・たけお)

 1946年京都生まれ。大阪外大英語卒、三井物産入社。ナイジェリア(ヨルバ族名誉酋長に就任)、サウジアラビア、ベトナム駐在を経て、ネパール王国・カトマンドゥ事務所長を務め、2004年8月に三井物産を定年退職。在職中にアイデアマラソン発想法を考案。現在ノート数338冊、発想数26万3000個。現在、アイデアマラソン研究所長、大阪工業大学、筑波大学、電気通信大学、三重大学にて非常勤講師を務める。企業人材研修、全国小学校にネット利用のアイデアマラソンを提案中。著書に「金のアイデアを生む方法」(成美堂文庫)、「できる人のノート術」(PHP文庫)、「マラソンシステム」(日経BP社)、「稼ぐ人になるアイデアマラソン仕事術」(日科技連出版社)など。アイデアマラソンは、英語、タイ語、中国語、ヒンディ語、韓国語にて出版。「感動する科学体験100〜世界の不思議を楽しもう〜」(技術評論社)も監修した。「アイデアマラソン・スターター・キットfor airpen」といったグッズにも結実している。アイデアマラソンの公式サイトはこちら


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