第10回 財務諸表の意味を身体感覚で理解する(後編)新入社員がやってくる──専門知識を教える技術(1/5 ページ)

「財務諸表の意味を身体感覚で理解する」ための教材を通じて、「考えて分かる」というよりも、ひと目見た瞬間に分かるようになる方法を考えます。ひと目で分かるようになると考え方も変わってきますよ。

» 2008年05月19日 15時04分 公開
[開米瑞浩,ITmedia]

 今回は前回の続きで「財務諸表の意味を身体感覚で理解する」ための教材の提示方法を具体的に検討します。課題テキストは前回記事末尾を参照してください。

計算ができればいい、というものではない

 会計の勉強をしていて例えば営業損益についての解説を読むと、こんなふうに計算式が書かれています。

  • 営業損益=売上高−(売上原価+販売費+一般管理費)

 もちろんこれで正しいのですが、こんなふうに計算式があるものを勉強しようとするときには

  • 式で計算ができるようになるだけで、分かったと思ってしまう

 という落とし穴にはまる場合がよくあります。これは小学生が算数を勉強するときによく起きることが知られていて、小学生の場合は「文章題ができない」という形で問題が顕在化します。

 そんなの小学生の話だろう、と思われるかもしれませんが、どうしてどうして、大人の場合でも本質的に同じ問題が起きています。「式」だけを覚え込んだ人に対して、例えばこんな質問をするとたいてい答えられません。

 「営業損益、営業外損益、特別損益、この3つを毎年たどっていくと発生パターンが違うよね? その違いが分かるようなグラフを書くとどうなる? 典型的なやつを書いてみて」

 この質問に答えるにはそれぞれの指標の「意味」を知っていなければならないので、「計算式」だけでは分かりません。これに答えるためには下記5点が表現できるようなグラフを書く必要があります。

3種類の損益の性質の差
a 営業損益は継続的に発生する
b 営業外損益も継続的に発生する
c 特別損益は継続的に発生しない。
d 健全な会社の場合、

営業損益=黒字
営業外損益=赤字(ただし営業損益の黒字よりも小さい)

という場合が多い
e 特別損益は巨額に上ることがある。

 そもそも「グラフ」というと、

  • Excelなどで作った、既にできている数値の表をグラフに変換するだけ。
  • その結果がどんなグラフになろうとあまり気にしたことはない。
  • 何かの意味を表現するためにグラフを1からでっち上げるなんて考えたこともない。

 という方が多いのではないでしょうか。もし心当たりがあれば、特に前述5点のうち(a)(b)(c)の3点だけでも表現する方法を考えてみてください。

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