第5回 ポスト・飲食店メニューのカロリー表示? 「フードマイレージ」みんなで作る地球のあした、企業発“巻き込みエコ”最前線(1/2 ページ)

パスタ好きな筆者が、先週食べたイタリア製パスタは4食。これがもし国産なら――大地を守る会のWebサービス「フードマイレージ・キャンペーン」で調べると、長距離輸送分のCO2を約2ポコ(POCO)削減できたという。Web上や宅配利用者用カタログに、ポコという独自単位でCO2削減量を示す狙いは?

» 2008年06月11日 18時46分 公開
[豊島美幸,ITmedia]

 筆者はパスタが好物。中でもイタリアの某食品メーカー製は、コシが強いため気に入っている。先週食べたそこのパスタ4食分を国産に切り替えた場合、どれだけCO2を削減できたのか。それをWebサービスの「フードマイレージ・キャンペーン」で概算してみると、「長距離輸送分のCO2が1.96ポコ(POCO)削減できた」と、結果が出てきた。「1ポコ=CO2が100グラム」である。だからこの場合、196グラムCO2を削減できたことになる。

Web上の「フードマイレージ・キャンペーン」

「フードマイレージ」経由、目的地は「環境に優しい生き方」

 フードマイレージ・キャンペーンは、前回紹介した「100万人のキャンドルナイト」(以下、キャンドルナイト)の事務局、大地を守る会(以下、守る会)が2005年から始めたキャンペーンだ。

 輸入依存率が高く、国内消費量も多い70品目の外国産食料を国産に切り替えると、どれだけCO2を削減できるか。その具体的数値をWebサービスや宅配利用者向けの紙のカタログや請求書などを使い、広く啓発しようというものだ。キャンドルナイト同様、守る会の「ブランディング戦略の1つ」だと、事務局の大野由紀恵さんは言う。

 フードマイレージの考え方は、もともと1994年に英国のNGOサステインが、「野菜の長距離輸送が環境に負荷を与えている」と唱えたのがその始まりだ。彼らは、食料の重さと長距離輸送距離を掛け合わせた新しい概念「フードマイルズ」を考案した。日本では2001年、農林水産研究所の中田哲也研究員がこれをアレンジし、「フードマイレージ」という言葉で取り入れた。守る会の展開するフードマイレージ・キャンペーンでは、さらに工夫を加えてポコという独自単位を作り出したのだ

 このキャンペーンを始めたのはなぜか。

大野由紀恵さん

 「有機国産野菜はおいしくて人体にいい。ここまでは皆さん、想像しやすいと思います。さらにもう一歩進んで、土壌など環境にもいいことまで想像する人は、あまりいないと思うんです」。確かに有機野菜は、農薬や化学肥料を極力使わないから、より安全なのかもしれない。それに国産なら、輸入時に大量にまかれる防カビ剤も、輸送にかかるCO2も不要だ。

 「有機国産野菜を食べ続けるライフスタイルは、実は環境を守ることにつながる――というとところまで、フードマイレージを通じてユーザーの意識を高めたい」。大野さんはそう話す。ライフスタイルとは日常に根付くもの。だから違和感なく溶け込んで受け入れてもらう必要がある。守る会では広く受け入れてもらうため、次の3ステップを踏んだ。

ステップ1:「見た目でつかむ」


 「全然違うと思いませんか?」。そう言いながら大野さんは、上の写真の現物を筆者の目の前に出す。「(キャンペーンで)有機野菜のオシャレなイメージに変えたかったんです。オシャレな印象でないと、初めから注目してもらえないですからね」。

 これらの言葉から左右どちらの写真がキャンペーン用かお分かりだろうか。答えは右。左側は、従来から使っているパンフレットなどの表紙だ。そして右側が、今回のフードマイレージ・キャンペーン用アドカードやWeb上のトップページに採用しているもの。田舎と都会、素朴と洗練。左右の写真からはそんな印象を受ける。

 国産有機野菜を食べることはスタイリッシュ。右のイラストは見る者にそうはっきりと主張する。泥臭い野菜を泥臭くは伝えていない。1ステップ目は、伝えたいイメージを的確に視覚化することだった。

ステップ2:「とことん肌感覚」

 守る会はキャンペーン内容の「分かりやすさ」「伝わりやすさ」にこだわった。

 フードマイレージとは、食料輸送による環境負荷を数値化しようという概念で、2001年当時、食料の重さに長距離輸送時のCO2排出量を掛け合わせ、「食料の重さ×輸出国から輸入国までの輸送距離」という式で表した。数字が大きいほどCO2による環境負荷がかかっていることになる。

 この時フードマイレージに使っていた単位は「トン・キロメートル」。国規模や年単位で算出するから、出てきた数値も自然と大きい。しかし守る会は、「こんなに数値が大きいと、理解しづらいのでは?」と考え、「もっと親しみを持ってもらうためには、身近な単位が必要」と判断した。

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