コードネーム「Fennec」で呼ばれる携帯電話向けFirefoxはPC版と同様のGeckoエンジンを搭載。拡張機能やFlashなどのプラグインもすべて動作する。しかしiPhone上での動作に関しては、携帯プラットフォームを巡る綱引きもあらわに。
Firefoxの次のターゲットは携帯電話だ。コードネーム「Fennec」で呼ばれるFirefox Mobileは、PC版と同じGeckoエンジンを搭載し、“携帯電話にも完全なWeb体験”を目指すという。
6月26日、Mozilla Corporation CEOのジョン・リリー氏が来日し、Firefox Mobileの詳細を語るとともに、携帯電話市場進出への意欲を話した。
Firefox Mobileが目指すのは、“携帯電話用のインターネット”を見るためのブラウザではない。
「日本は携帯インターネットに関してはかなり洗練されている。しかしこれはWebではない。われわれのターゲットはWebの体験すべてだと思っている。デスクトップ版同様、Flashについてもエクステンションやプラグインを用意する。モダンなWebブラウザになるためにはFlashなどへの対応が必要だ」
PC版Firefoxと同じGeckoエンジンを使い、Firefox 3(Gecko1.9)で搭載したページ全体の拡大表示機能(文字だけでなく画像やレイアウトも含めて拡大縮小できる)を使い、携帯電話の小さな画面でもWebを見やすく表示する。正式版ではFirefox 3.1に搭載されるGecko1.91を使い、よりスムーズな拡大縮小をサポートする予定だという。ユーザーインタフェース部分は違うが、拡張機能も基本部分はPC版と同等だ。
Firefox 3がうたう、高速なJavaScript処理も、携帯電話へのブラウザ実装を見据えたものだ。「携帯上にFirefoxを載せるというと、CPUパワーが限られるので、パフォーマンスが重要になる」とリリー氏。
ハイエンド携帯電話端末をターゲットとするFirefox Mobileは、いずれiPhoneのSafariブラウザと比較されていくだろう。リリー氏は、Mozillaベースのブラウザが搭載されているというNokia製スマートフォン「Nokia810」を例に挙げ、「iPhoneが何も最高のUIではないんだよ──と言いたい」と話した。
とはいえ、携帯電話向けWebブラウザはノルウェーのOpera Softwareが注力している分野でもあり、プラットフォーム自体も、各社がスタンダードを巡ってしのぎを削っている。
OSの面では、「Linux、Windows Mobile、Symbian、そのほかも潜在的な対象」とするが、対応プラットフォームでは未確定な部分が多い。「われわれは(Googleが進める携帯プラットフォーム)Androidの一部ではない。(Linuxベースの携帯向けプラットフォーム)Limoには参加している。プラットフォームの決断はしていない」
しかも、AndroidやNokia Eシリーズなどが採用しているレンダリングエンジン「WebKit」(iPhoneのSafariにとっての基盤技術)上では動作しない。「GeckoとFirefoxは結合しているので、WebKit上では動かすことはない。GeckoのないFirefoxはFirefoxではない」
アップルはiPhone向けにアプリケーション販売を行うApp Storeをコントロールしており、販売の可否をアップルが決められる点、iPhoneのSDKの制約上、Firefoxの開発が行えない点を、リリー氏は指摘した。「(iPhoneは)非常に気に入っている。でもWebじゃない。オープンでもないし、クリエイティブでもない。これがWebではないと思っている」
Appleが出しているiPhone SDKのライセンスでは、Sun MicrosystemsがJavaを組み込んだり、Adobe SystemsがFlashを組み込んだりできない(3月21日の記事参照)。iPhone側としてはセキュリティ、パフォーマンス上の理由だと言っている。
「アップル側がMozillaに対して、FirefoxをiPhoneに載せることを許していない。(Firefox Mobileは)より多くのプラットフォームに、ただしビジネス上、敵対的ではないプラットフォームに対応していく」
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