ITmedia NEWS > 企業・業界動向 >

Adobe FlashのiPhone進出計画、阻むのはジョブズ氏?

» 2008年03月21日 16時28分 公開
[Daniel Drew Turner,eWEEK]
eWEEK

 iPhoneにFlashプレーヤーをねじ込むことがそんなに大きな問題なのか。AdobeとAppleがこの話題に費やした時間から判断すると、どうもそうらしい。

 Wall Street Journalによると、Adobeのシャンタヌ・ナラヤンCEOは投資家との電話会見で、Adobeは「iPhoneへのFlash搭載に尽力」しており「当社は(iPhone SDKの)評価を行い、iPhone Flashを社内で開発できると考えている」と語った

 「(iPhone SDKを使えば)AdobeがiPhone向けのFlashプレーヤーを開発することが可能になる」とナラヤンCEOは話したが、厳密に言うとそうではないらしい。

 eWEEKに送られてきたAdobeの公式プレスリリースもナラヤン氏の発言を繰り返し、「AdobeはiPhone SDKの評価を行い、Flash PlayerをiPhoneに搭載する方法の開発に着手することが可能になった」と述べている。

 しかしリリースはこう続けている。「しかしながら、iPhoneのWebブラウザでFlashのフル機能を提供するためには、SDKで提供されている内容およびそれにまつわる現行のライセンスを超えたところでAppleと連携する必要がある」

 言い換えれば、iPhone SDKのリリースでAdobeはFlashやFlash Liteクライアント開発に関するオプションを探ることはできるが、SDKを利用するだけでは不十分だということだ。Adobeはほかのデベロッパーが必要としない、あるいはできない範囲でAppleと協力する必要がある(Flash、Flash Liteとも、iPhoneには技術的に向かないとしてAppleのスティーブ・ジョブズCEOにはねつけられている)。

 Mac OS X向けと、恐らくiPhone向けアプリケーションの開発を手掛けるMarketcircleのマーク・オニシュク氏は次のように解説する。「AdobeがFlashをiPhoneに搭載させるためには、Appleとの間で何らかの特別契約が必要になるだろう」

 「iPhoneのアプリケーションインストールの仕組みとして、各アプリケーションがそれぞれの『サンドボックス』を持っている。このファイルシステムはすべて独自のもので、ほかのアプリケーションにはアクセスできないようにしてある」

 「従って、例えばSafariのようなアプリケーションにプラグインをインストールする通常の手順は、iPhoneには通用しない。サードパーティーのアプリケーションがアクセスできる共通ライブラリ/プラグインフォルダは存在しない」

 「Appleの意図は、システムの安定性とセキュリティを脅かす大きな根源、つまり複数のアプリケーションやその設定が相互にアクセスできるという点を、iPhoneから取り除くことにあると思う。つまりどんなプラグインであろうと、それがFlashやJavaであっても、Appleがソフトウェアアップデートの一部として特別に許可しない限り、iPhoneに現れることはあり得ない」

 新興ソフトウェア開発メーカーUnited Lemurの代表マイク・リー氏は、Adobeにとっての障壁はもっと大きいと見るが、解釈の仕方は異なる。

 「開発者がSafariのプラグインを開発できるかどうかという問題ではない。Adobeが開発したいと思うものを阻止する手段はない」

 「Appleが開発したシステムフレームワークのWebKitは、ほかならぬオープンソースソフトだ。AdobeはAppleのコードを使って、一見SafariそのものだがFlashに対応した競合ブラウザを開発することが可能だ。問題は、Appleがその実行を許すかどうかだ。Appleからリモートで取り消し可能なセキュリティ証明書を取得しない限り、iPhone 2.0上で何かを実行することは、絶対に誰にもできないのだ」

 リー氏によると、このセキュリティ証明書は、セキュアな「署名入り」アプリケーションを確認する鍵となる。

 「わたしのデジタル署名はわたしがそのアプリケーションを開発したことを証明するだけでなく、わたしが送信した後にアプリケーションが変更されていないことを証明している。もしOSが、有効な署名のないアプリケーションの実行を一切受け付けなければ、『悪質コード』のウイルスモデルは単純に機能できなくなる。(Appleの)App StoreでDRMを施してiPhoneがそれを実行するので、デベロッパーが海賊版の心配をする必要もなくなる」

 「もしAppleがAdobeに証明書を与え、Adobeがその証明書を使ってFlashプラグインに署名しても、AdobeはそれをAppleに提出して認可してもらわなければならない。Appleが拒めばApp Storeには入れず、iPhoneに搭載させる手段はない。もしAdobeがiPhoneをハッキングしてFlashをインストールしたとしても、AppleがAdobeの証明書を取り消せば、AdobeのiPhoneソフトは直ちに機能を停止する」

 ほかにも複数の筋が、AdobeはAppleからPDF表示用コードのライセンスを取得することも望んでおり、Flashをめぐって騒いでいるのはそのためだと指摘した。しかしFlashであろうとPDFレンダリングであろうと、両社が衝突するのか協力するのかが問題だ。

 その疑問をAdobe担当者にぶつけたところ、プレスリリースに書かれていること以外にコメントはしない方針だとの答えだった。

Editorial items that were originally published in the U.S. Edition of “eWEEK” are the copyrighted property of Ziff Davis Enterprise Inc. Copyright (c) 2011. All Rights Reserved.