ITmedia NEWS > ネットの話題 >

「×」ボタンをタップしても消えない――「UI偽装広告」が壊すデジタル社会の常識小寺信良のIT大作戦(1/3 ページ)

» 2026年02月05日 14時00分 公開
[小寺信良ITmedia]

 ネットで無料で閲覧できる情報や、無料で利用できるサービスには、大抵広告が付いている。これはビジネスモデルとして仕方がないところではあるが、ニュース記事なのに広告で本文が読めないなど、その在り方には本末転倒感が漂ってきているところである。

 ネット広告の問題を挙げればキリがないところではあるが、昨今筆者が注意してサンプルを収集しているのが、UIを偽装するタイプの広告である。こう言われてピンとくる人は少ないと思うので、例を挙げながら解説する。なお広告画面には著作権があるため、純粋に広告に関わる部分、あるいはセキュリティに関わる部分にはモザイク処理を行っている。

 まずオーソドックスな例としては、以下のようなものがある。

UI偽装型広告のサンプル1

 一見何の変哲もないゲームの広告のように見える。ゲームのプレイ画面がアニメーションで表示され、上部に見える「Skip」もしくは「×」で広告を閉じられるという作りだ。

 この「Skip」と「×」が、偽装されたUIである。この部分も広告内の画像の一部で、どちらをタップしても結局はゲームのインストール画面へ誘導される。本当のUIは、画面上部に小さく表示されている「>>」である。

 こうした手法は、中国系ECサイトの広告でもよく見かける。「閉じる」ボタンをタップしたのに結局ECサイトに飛ばされるという経験をした人も多いのではないだろうか。

 ほとんどの人はタップする場所を間違えたか、タップしそこなったのかと自分の操作ミスをうたがってしまうが、実際には偽装されたUIによって、だまされて誘導されているのである。

 別のパターンも見てみよう。以下はニュースサイト内に表示された、次のページへ進むためのボタンのように見える。だが実際にはこの部分が広告枠である。

UI偽装型広告のサンプル2

 記事の続きを見ようと思ってここをクリックすると、ウイルス感染のアラートを偽装したフィッシングサイトへ誘導される。マイクロソフトの公式ページへ移動したような作りになっているが、URLは全く無関係であることを示している。

遷移先のフィッシングサイト

 多くのネット記事は複数のページに分かれていたり、参照画像だけ次のページに置いてあるといった構成が多く、ページの下部に「次へ」や「続き」といったリンクボタンが設置されている。このボタンを偽装した広告だ。

 この広告は、Google Adsenseで配信されている。よって広告に問題があれば、その場でユーザーが報告できるようになっている。だが報告の内容には、フィッシング詐欺に対する報告に相当する選択肢がない。

Google Adsenseの問題報告画面

 Googleへ報告したい場合は、「マイアドセンター」の「最近表示された広告」をたどって該当の広告を探し、詐欺広告として報告することはできる。

「マイアドセンター」での問題報告画面

 こうした違法サイトへ誘導する広告は、そもそも景品表示法において違法になるのではないかと思われるだろう。ただこのケースでは明確に線引きができていない微妙なところなので、生き残っているものと思われる。

 景品表示法は、表示された広告内容が明らかに違法性があるものに適用される。例えば内容が全くうそである、実物以上によく見えるように誤解を与えるような表現をしている、といった場合だ。単に「続きへ」と表示された広告は、こうした条件には当てはまらない。

 ネットの広告は表示されて終わりではなく、それをクリックすることで別ページへ遷移できる。この場合、その遷移先と広告表示の関連性も問題になる。景品表示法は、表示された広告とリンク先とを一体評価するという仕組みも備えている。

 例えば広告表示画面で「公式」をうたっているが、実際のリンク先は非公式や偽サイトであった場合は、優良誤認あるいは有利誤認表示として違法になる余地がある。

 一方単に「続きへ」と表示された広告においては、「続きへ」とは「広告の続きへどうぞ」という意味であるという主張も、一応成り立つ。

 景品表示法は、リンク先が違法サイトであるかどうかでは違法性を評価しない。あくまでも、広告表示とリンク先の関連性において、事実と異なるかどうかを評価するだけである。

 しかし、ニュースサイトにおいて「続きへ」という表示を見かけたら、普通は次のページへ行くためのリンクボタンであると思うだろう。これがユーザーインタフェースを偽装する広告手法である。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アイティメディアからのお知らせ

あなたにおすすめの記事PR