前日に“仕入れ”て飛行機の中で客先と親しくなる方法樋口健夫の「笑うアイデア、動かす発想」

あるメーカーの課長に同行して、ヨーロッパに出張することになった時のこと。筆者は出発日の前日、あるものを仕入れておいた。課長と親しくなるためだ。

» 2008年06月27日 15時18分 公開
[樋口健夫,ITmedia]

 以前、ヨーロッパに出張することになった。あるメーカーの課長を案内するためだ。約10日間ヨーロッパの3カ国を訪れる旅程である。課長は米国への出張は何度か経験していたが、ヨーロッパは初めて。一緒にどこかに出かけるというのは、日帰りであれ、数日間であれ、その間に親しくなる絶好のチャンスだ。

機内でお酒を飲む? 飲まない?

 成田空港でパスポートコントロールを通りながら、「樋口君、世話になるが、よろしく頼む。機内では何といっても飲み放題だから、ゆっくり飲みながら行こう」と言っていた。機内でいろいろなお酒を飲むのが楽しみな旅行客は多い。事前の打ち合わせでも、課長は機内のお酒の話をしていた。

 筆者の場合、1人旅では機内で飲酒しない。仕事をするか、寝るか、映画を見るか、本を読む。これは酒を飲むと到着後、すごく疲れるからだ。もちろん客先と同行の出張ではお酒に付き合う。1人で先に寝てしまうようなことはしない。

 「樋口君の手荷物は結構大きいね。何が入っているのかな」「まあ、いろいろ入ってますよ」。機内に乗り込んで座席に着き、シートベルトをして毛布を掛ける。定刻通り、機体は滑走路に向かって動き出した。離陸して急上昇していく時の気分は悪くない。これから十数時間の飛行だ。

飲むならつまみを仕入れておく

 機体が一定の高さに達するとシートベルトサインが消え、フライトアテンダントが小袋に入ったスナックを配り、飲み物を運び始める。

 スナックを食べ終わったところで、フライトアテンダントが早速「何をお飲みになりますか」と来た。課長は「じゃあ、ビールとワインをください」。このタイミングで筆者は座席下に置いていた紙バッグを取り出し、「課長、おつまみは何をご所望ですか」と、スモークサーモン、チーズ、ローストアーモンド、スルメ、缶詰のウィンナーソーセージなど、山のようなおつまみを課長にすべて見せた。割りばしやようじ、ウエットティッシュも入れてある。

「わあ、こんなのを持ってきていたんだ。酒の肴ばかりだね。すごい」「そうなんです。機内で飲む時に弱点は、飲み物はほぼ何でもありますが、おつまみがないことなんです。だから昨日、スーパーでたっぷり仕入れてきました」

 まずはスモークサーモンの袋を開けて、ビールで乾杯。「うまいなあ」。通りかかったフライトアテンダントに、次のビールをすぐ頼んだのは言うまでもない。缶詰を開けてウィンナーソーセージも食べ始めた。

おすそわけで広がるコミュニケーション

 通路の反対側にいる乗客が、筆者たちを見てフライトアテンダントに「私も、あのおつまみをいただけますか」と尋ねたが、「あれは、お客様がご自身でお持ちになったものです」と言われて、シュンとしていた。

 筆者は、スモークサーモンの袋とようじをその乗客に差し出した。乗客は「あ、ありがとうございます」と言いながら、サーモンをつまんでビールを飲んだ。「飛行機の中のおつまみ、おいしいですね」。まだ旅行は始まったばかりだったが、30分ほどで一気に盛り上がった。旅行の前日、ちょっとスーパーで買い出ししただけで、親しい会話を持つことができたわけだ。


 とはいえ、筆者にとっては睡眠できる機内が最高。帰りの飛行機では、親しくなった課長に残り少なくなったつまみバッグを渡して、筆者は時差に備えるべくグッスリと寝ることにした――。なお、昔と違って現在は、手荷物の食品に対するチェックが厳しくなっている。渡航先の国によっては持ち込めないものもあるのでご注意を。

今回の教訓

釣った魚にエサをやる――。


著者紹介 樋口健夫(ひぐち・たけお)

 1946年京都生まれ。大阪外大英語卒、三井物産入社。ナイジェリア(ヨルバ族名誉酋長に就任)、サウジアラビア、ベトナム駐在を経て、ネパール王国・カトマンドゥ事務所長を務め、2004年8月に三井物産を定年退職。在職中にアイデアマラソン発想法を考案。現在ノート数338冊、発想数26万3000個。現在、アイデアマラソン研究所長、大阪工業大学、筑波大学、電気通信大学、三重大学にて非常勤講師を務める。企業人材研修、全国小学校にネット利用のアイデアマラソンを提案中。著書に「金のアイデアを生む方法」(成美堂文庫)、「できる人のノート術」(PHP文庫)、「マラソンシステム」(日経BP社)、「稼ぐ人になるアイデアマラソン仕事術」(日科技連出版社)など。アイデアマラソンは、英語、タイ語、中国語、ヒンディ語、韓国語にて出版。「感動する科学体験100〜世界の不思議を楽しもう〜」(技術評論社)も監修した。「アイデアマラソン・スターター・キットfor airpen」といったグッズにも結実している。アイデアマラソンの公式サイトはこちら


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