第2回 相手を立ててねぎらえ目的を達成する説得法(1/2 ページ)

上司や会社、家族などを説得し、自分のしたいことを相手に認めてもらうには、どうすればいいのでしょう? 前回押さえたコミュニケーションの基本を踏まえ、具体的な事例を見ていきます。

» 2008年07月02日 09時00分 公開
[平本相武(構成:房野麻子),ITmedia]

 コミュニケーションには相手とのコミュニケーションと、自分とのコミュニケーションの2つあることが分かりました。今回はこれをベースに、仕事やプライベートでの説得法を解説していきます。

上司を立てろ――部下からのコミュニケーションは「相手のため」

 やりたいことを主張して、うまく相手を説得できないという場合、以下のようなやり方をしている場合が多いです。

 社員A君には、会社でやってみたいことがあります。A君は関連書を読み、成功している人の講演を聴き、自分でもいろいろなことを調べました。最終的に、「ウチの会社の業種とは違うけど、これをやりたい!」と決心しました。

 さて、A君はやりたいことが見つかり、元気もあって、「これをやりたいんです! 本当にやりたい! これをやらなきゃダメですよ!」と上司に叫ぶように主張しました。するとどうなるでしょう。5人に1人くらいの上司は、「元気があるな。なんだかよく分からないけど、キミがそこまで言うんだったら、やってみろ」と、OKを出してくれます。

 しかし、残りの4人は「なんだコイツ。自分は10年この会社でやってきてんだ。新人のくせに、わけ分からないこと言ってるよ。まあ、確かに言ってることは一理あるかもしれないけどさ」と煙たがります。

 さらに、A君のような人は大抵、「会社を良くしたいんです。部長の考え方は古いんですよ! 今はこういうこともできるんです。今のままでは絶対おかしいです!」というようなことを熱心に語ります。A君は上司を否定したいからではなくて、よかれと思って言っているのですが、大抵の上司は嫌な気分になります。

 上司も、別に会社を悪くしようと思ってやってきているのではない。本人なりにかんばっているので、否定されて嫌な気分になるのは当然です。

 A君のまずい点は、人とのコミュニケーションがうまくできていないところです。特に相手のためのコミュニケーションができていない。ですから、この能力を鍛える必要があります。大抵の人は、自分とのコミュニケーションで勢いが付くと、自分のためのコミュニケーションに走ってしまいます。

 セミナーなどで感化されて、「絶対、明日は部長に言うぞー!」「部長、あなた間違ってますよ!」と、元気いっぱいに言ってしまうんですね。そうすると、ほとんどの人は気分を害します。まれに、「キミくらい元気がある方がいい」という人もいますが、普通は自分を否定されていい気はしません。相手のためのコミュニケーションを無視しているからですね。

 昔はそういう上司がたくさんいました。「この会社は私の代で築いたようなもんだ」「私の代で上場させたんだ」と、自分のやりたいことが明確にあって、非常にリソースフルでした。会社の創業者もそうです。創業者には間違いなく自分軸がありますし、創業しながら元気がないなんてあり得ないですから、間違いなくリソースフルです。

 そうすると、「私はこうしたい。さあ、やれ!」と、どんどん自分の意見を伝えて、突っ走ります。カッコいいと思ってくれる人もいますが、それが続くのはカリスマ性があるうちだけですね。そのうち、「あんな強引なやり方は嫌だ」となってきます。そうすると何が大事かというと、相手のためのコミュニケーションです。

 A君の場合も、相手のためのコミュニケーションが必要だったのです。A君は、自分のやりたいことは明確です。そして、できる気分になっています。そうしたら、上司に対していきなり「やりたい!」と言わずに、相手の立場に立ったコミュニケーションをとります。

 例えば、次のように話します。

部下が上司を説得する場合

 「部長、部長は10年、この会社でがんばってこられたと思います。部長はいつも『つながりが大事だ』とおっしゃっていますね(相手の立場に立つ)」

 ↓

 「私は部長からそのことを学んだし、この会社をつながりを大切にする会社にしたいんです。そして、部長の思いを満たすために、私でよかったら協力させてほしいんです(ニーズを満たす)」

 ↓

 「そして、部長に“つながりが大事だ”という思いがあるように、私にもビジネスマインドが大事だという思いがあります。なぜかというと、ビジネスマインドを身につけることは、仕事に非常に役立つんです。さらに、仕事で疲れ果てた人が、このコーナーにフラッと立ち寄るだけで癒される。そこで、またアクセスが上がると思うんです(自分の思いを伝える)」

 ↓

 「だから、これを認可して、協力していただきたいんです。上の人たちに、部長からも話していただきたいんです(協力させる)」


 このように言われると、おそらく5人中4人はOKを出してくれます。1人くらいは出さない人がいますが、そういう上司に当たってしまったら、これは仕方がないです。でも、自分の直属の上司がダメでも、ずっと言い続けていると、そのうちほかの人が「いいんじゃないの、やらせてみれば」と言ってくれるはずです。

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