デジタルツールを使ったメモの一元化はうまくいかない シゴトハッカーズ(1/2 ページ)

いろんなところに書き連ねたメモ。何に書いたっけ? とメモを探したことのある人なら、“一元化”しかも“デジタルツールで”という夢を持ったことがあるでしょう。では、メモ整理の達人の2人が行っている方法とは?

» 2008年07月24日 16時34分 公開
[大橋悦夫、佐々木正悟,ITmedia]

Biz.ID 大橋さん、佐々木さん、今日のお悩みは「メモがバラバラになってしまっています」というものです。お2人は、どうしていますか?

佐々木 メモはMVPenでどこにでも書き、それを、Evernoteでまとめています。

大橋 大橋は、ロディアに書くようにしています。1日の終わりにタイムスタンプを押しながら、備忘メモは適切なタイミングにリマインダーをセット、タスクはタスク管理ツール(自作のExcelシート)に登録、アイデアはそのまま寝かせるか、Diigoや紙copiに転記。処理の終わったシートはロディアから切り取って捨てます。1日の終わりにタイムスタンプを押すのが儀式になっていて、整理している実感があり、気に入っています。

Biz.ID ポイントは、PCがないところでもちゃんとメモが取れるように工夫することでしょうか? PCのみでは、やっぱり挫折しますか?

切り取る感触も気持ちがいい、フランスのメモ帳「ロディア」。高級なメモ帳として日本でも普及している。ポピュラーなサイズの「No11」は一冊200円以下で購入できる

大橋 実際にロディアを使い始めてみて実感しています。今までは、ロディアの代わりを携帯メールが担っていたのですが、海外ではそれが無理なのと、物理的に携帯が使えないシーンがあるため、ロディアのユビキタス性を実感しました。もちろん、混雑した電車の中などで片手しか使えない場合は、引き続き携帯メールを使っています。そういう意味ではメモの守備範囲が広がった、といえそうです。「今は携帯が使えないからいいや」ということがなくなりました。

佐々木 スマートフォンのメモソフト、という方法はあると思います。またPCは起動に時間がかかりますよね。

Biz.ID 手書き系メモだと、あとで必ずPCなどに転記──という手間が発生しますよね。これがうまくやれず、やっぱり“メモがバラバラになってしまっています”なのですが、どうやっているのでしょうか?

佐々木 あとで検索したいし、転記が面倒なものは、まず携帯メールで、とにかく素早くしかも大量に書くのは、MVPenにしています。転記が不要になりますので。ロディアのようなものは、私も使っていますが、これはすぐ行うことに使うようにしています。使ってすぐに切り落とします。

メモを取るWebアプリケーションの「Evernote」。Windows版、MacOS版、WindowsMobile版、iPhone版などのローカルアプリケーションも用意されていて、取ったメモは自動的にサーバと同期される。画像を保存すると、画像内の文字を認識して検索できるようにしてくれるが、現状は英語のみ。

大橋 ロディアも携帯メールも、そしてPCも使えるシーンでは、書こうとしているメモの内容や優先度に応じて、どれを選ぶかを決めています。例えば、今すぐは必要ないが、今週中に手配したいものがあれば、ロディアに書き込みます。

 その場でPCに入力してもいいのですが、そうなると「すぐにできるから今やってしまおうか?」という迷いが生じ、多くの場合、やってしまいます。そうなると、迷うこともさることながら、「やってしまう」ことによって本来すべき仕事が後回しになるんですね。「Amazonでさくっと買って済ませよう」と思っていただけなのに、気づいたら30分たっていた、ということはざらにあります。

 PCが自由に使えて、さらにオンラインの状態にあると、どこまでも行ってしまえるのです。そういう意味では、最長24時間以内に必ずレビューされるロディアを選ぶことは、時間の節約とメモが確実に実行されるという安心感の両方のメリットが得られる方法といえます。

Biz.ID なるほど、あえて自由度の高いPCに触れないことが重要と。

佐々木 あとで確実に見るようにしたいものは手書きメモ──という傾向は私も強いです。要するにPCに入れてしまうと、ほかの情報にまぎれてしまうんです。メモは書いた順に並ぶことしかできないので、一定の間隔で見直すようにしておけば、大事な用事を何らかのカテゴリに入っていないせいで見落とす、ということがなくなりますね。

大橋 PCに入力しておくと、あとから検索できるから便利と思いがちですが、そのようにして入力された情報がノイズとなって、本当に必要な情報が見つからないということがままあります。もちろん、そういったノイズをゼロにすることは困難ですが、これに近づけることはできるはずです。

 ちょうど、企業が中途採用をする際に、試用期間を設けるのに似ています。いきなり本採用(=PCに入力)するのではなく、試用期間を設けて一定期間寝かせる(=ロディアに書く)ことによって、きちんとした検討ができます。さらに、PCへの転記という手間があることで、「入力するほどの情報か?」という見直しもできます。“本採用”の敷居を高めることで、結果としてアウトプットのプロセスのスピードアップ(=メモを探す時間の短縮)とアウトプットのクオリティーアップ(=厳選されたメモによって作られた成果物)の両立が実現するはずです。

すべてのWebページにコメントをつけられる「Diigo」。そのコメントは検索したり、チームで共有したりできる。ソーシャル・アノテーションサービスなどとも言う

佐々木 メモの一元化というのは、「すべてを見たい」という欲求と、全体を検索できるという可能性を追求することから来るものだと思うのですが、実はそれほどは必要じゃないことが多いですね。また無駄も多くなります。

 たぶん、買いものメモをPCに入れる人って少ないんじゃないかと。紙メモと、携帯メールなどのメモと、ノートと、それからテキストファイルなどに分かれていても、全部1日一度は見直せるなら、一元化しなくてもいいのではないかと。あとで検索がしたいものだけが、デジタル化されていれば。

Biz.ID なるほど。無理に一元化しない方がいいと。

佐々木 ちなみに誤解を招きそうな言い方ですが、一元化って誰もしてなくないかな? と思っています。

 転記する基準を設けられるということだと思いますが、こういうふうにしないと、一元化はそもそも無理なので、「ロディア(PCにでもモバイルフォンでも)にほとんど一元化」という状態を必死に築くようになってしまって無理が来て挫折する。というパターンにはまるのだと思います。実際私は頻繁にはまった。今は、一元化で得られるメリットの95%が得られるシステムを作ればいいかなあと思っています。

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