プリンタの知識ゼロの社員に、ある日「所属する各チーム用にプリンタを購入せよ」との辞令が下った。右も左も分からないまま、2人はプリンタの基礎から学ぶことに――。
繊維系マテリアルメーカーの中堅老舗アラレでは、新素材のACE開発に伴い、およそ10人編成の販促チーム、特許取得チームがそれぞれ立ち上がった。販促チームに配属された若手社員のプリンちゃん、特許取得チームに配属されたターくんに、ある日「所属する各チーム用にプリンタを購入せよ」との辞令が下る。
知識ゼロの2人は総務部に泣きつき、「プリンタ博士」と呼ばれるフリーのエンジニア、ドクトルPを紹介してもらうことに――。
プリンちゃん ドクトルP、いきなりプリンタを選べって言われても、何をポイントにどう選んだらいいか分からないんです。
ターくん そうなんですドクトルP。2人で調べてみたんですけど、種類の多さに圧倒されて余計に分からなくなったんですよ。
ドクトルP 2人ともそう情けない顔しなさんな。プリンタのことをちゃんと理解できれば、最適な一台はきっと見つかるはずだよ。
プリンちゃん&ターくん 本当ですか?
ドクトルP もちろん。順を追って解説していくから、2人とも付いてくるんだよ。
プリンちゃん&ターくん はい! よろしくお願いします。
2人はドクトルPの解説に耳を傾けていった――。
プリンタとは文字や画像を印刷する機器のことだ。「インクジェット式プリンタ」や「レーザー式プリンタ」という言葉を聞いたことがあるだろうか。この「インクジェット式」と「レーザー式」というのは印刷方式の違いを表している。
インクジェット式が文字通り、印刷にインクを利用することは容易に想像できるだろう。同様にレーザー式プリンタも文字通り、「レーザーを使って印刷する方式」というイメージを持つはずだ。もちろんこれも意味的には正しい。
しかし、インクジェット式が人に代わって筆と絵の具を使って文字や絵を描いてくれるわけでなく、レーザー式プリンタがレーザー光線を用紙に照射して印刷を行っているわけではないのだ。
チームに最適なプリンタを選ぶならプリンタ方式の違いを正しく理解しておきたい。そこで今回は2つの印刷方式の違いを解説していこう。なお、各方式の詳細な解説は別の回で行うので、まずは基本を押さえよう。
インクジェット式で印刷する仕組みは、エアブラシによるグラフィック描画や塗装を思い浮かべればいい。エアブラシは、圧縮空気で塗料を噴き出して塗装や描画を行う。これと似たような仕組みを凝縮し、印刷機構として搭載したのがインクジェット式と思えばいいだろう。
印刷機能では、シアン/マゼンタ/イエロー/ブラックの各色インクを混ぜ合わせることで、フルカラー印刷が可能になっている。さらに、特別に用意した色(フォトシアン、フォトマゼンタ、レッド、グリーン、グレー、マットブラックなど)を加えることで、最大10色構成などの多色印刷を行う製品も登場してきている。
次に、インクジェット式のメリットとデメリットを理解しておきたい。理解すれば製品比較時のポイントや妥協点を見つけやすくなるだろう。
メリットは主に3点ある。
まず何といっても多彩な色味の再現など、高品質なフォト印刷が行える点。逆に品質を追求する背景があるからこそ、最大10色構成などの多色印刷機が登場したのだ。専用の写真紙を使えば、さらに鮮やかなフォト印刷が可能になる。
2点目は、本体価格やランニングコストが、レーザー式より安価で済む点。本体価格でいえば、1万円を切るものも珍しくない。ランニングコストでは、カラー印刷を標準でサポートしていながら、消費電力がレーザー式よりはるかに低消費電力で済むから、インクジェット式はエコなプリンタといえるだろう。
そして3点目は、軽量でコンパクトな点。機構があまり複雑ではないので、多機能な複合機であっても軽量でコンパクトで済むのだ。
ドクトルP つまり、インクジェット式プリンタとは、インクを吹き付けて印刷するプリンタのことで、そのメリットは――
プリンちゃん ふむふむ。インクジェットはエコなプリンタなんですね。
ターくん エコか。うちのチームは何かっていうとコスト削減ってうるさいからなあ。ここはいっちょインクジェットにしとくかー♪
プリンちゃん え、もう決めちゃうの?
ターくん うん。だって善は急げっていうじゃん。
プリンちゃん 急ぎすぎっ。もう少し話を聞いてみない?
ドクトルP そうだよターくん。急がば回れともいうんだよ。
ターくん あ、そうか。
ドクトルP ターくんの気が変わらないうちに、こっちこそ善は急げだ。次はデメリットを見ていくよ。
プリンちゃん&ターくん は〜い!
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