やり方を教えると部下はダメになる部下をやる気にさせて育てる指導術(3/3 ページ)

» 2008年09月17日 11時30分 公開
[水野浩志,ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

Doで1回失敗させることが育成の秘訣

 部下を育てるには、このPDCAの中でも特にDo(実行させること)が重要です。部下を育てるのがうまい上司は、自分が力を注ぐのはDo以外のプロセスだということを理解しています。そして、Doの部分に口を出すのは必要最小限にとどめ、部下に一度は軽い失敗をさせています。その上で、何がうまくいかなかったのかを考えさせ、助言は最小限にとどめて、またチャレンジさせる。そのプロセスの中で、自分自身の智恵と工夫によって成功する体験をさせていくのです。

 逆に、育て方がよく分かっていない上司は、失敗させないようと焦るあまりにDoの部分、つまりやり方ばかりに口を出してしまいます。そして、部下が智恵や工夫をする前に答を教えてしまって、部下の成長機会を奪ってしまっているのです。

 私自身、自分が一番成長できなかった時は、うまくいくやり方、成功するやり方を求めて本を読みあさっていたときでした。しかし、それを続けてもうまくいかないことが続いたので、思い切って今まで読んでいた本を捨ててしまいました。その後、自分自身の行動改善や、悪習慣改善をテーマとして公開セミナーを始めたときも、やり方やテクニックに関する本は一切読まず、ひたすらスタートとゴールを仮設定し、そのゴールに向かって、今自分ができることをやり続けました。

 当然、思い通りの結果が出ないという失敗を繰り返すのですが、その失敗を分析するたびに、自分にとって足りないものや、ゴールの設定に無理があったことなどを把握し、そのたびに、改めてスタートとゴールを決め直し、少しずついろいろな考え方ややり方を身に付けていったのです。

 その後、私が指導する側に回った時、すぐに結果を出してほしいという思いが強すぎるあまり、やり方を一生懸命教えていたのですが、思い通りの結果にならず相当落ち込みました。しかし、自分自身の成長を振り返って、やり方ではなく、その人の現在のスタート地点と、実現可能なゴール地点を明確にしてあげることが有効ではないか、と考えを変えたのです。こうして指導方法を変えたことで、最初は少し時間が掛かるものの、やり方ばかりを教えていたときよりも、具体的な成果や結果が出るようになったのです。

 「やり方を教える」というのは、一見教えているように見えて、実は手抜きの指導法なのです。本当に部下を育てたいと思っているのであれば、やり方を教えることは最低限にして、部下に対して現在のスタート状態をしっかり認識させ、ゴールの設定をしっかり理解させることが必要です。

 ただ、失敗を改善することを前提としたこの方法は、面倒くさいやり方かもしれません。ですが、部下はいずれあなたの手を離れます。その時までに1人でできるように成長させることこそ重要です。たとえ大変だったとしても、自発的に行動できる部下を育てることの価値をぜひ考えてみてください。

著者紹介 水野浩志(みずの・ひろし)

 マイルストーン代表取締役。「社会に活き活きと働く大人たちを生み出す」をスローガンに掲げ、リーダーシップ・モチベーション創造・自己表現力養成をテーマにした企業研修や公開セミナーを実施。また、研修・セミナー講師向けに、具体的な成果を生み出す効果的なカリキュラムの構築手法や、講師としてのマインド・人間力創りの指導も行っている。現在、日刊(平日)で、メールマガジン「1回3分でレベルアップ! 相手の心を掴むトーク術」を発行中。


前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ