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» 2008年10月02日 11時00分 公開

樋口健夫の「笑うアイデア、動かす発想」:続・ツキの研究――樋口式十カ条

ツキが寄ってくるのはなぜだろうか。33年間に及ぶ筆者のビジネス経験から、ツキが寄りつきやすい条件を考えてみたら10件ほどあった。それを「樋口式ツキの十カ条」と呼ぶ。

[樋口健夫,ITmedia]

 世の中には、ツイている人がいる。ツキの強い人とはどんな人だろうか。ビジネスの世界では、一代で巨大な企業を育て上げるようなダイヤモンド級のツキを持つ人もいるだろうが、数は極めて少ない。一方、こうした数千億の資産を作る人とまではいかなくとも、どこの会社にだって結構ツキの強い人がいるものだ。

 かなり厳しい仕事やプロジェクトをしていても、何とかこなすし、幾多のピンチも脱出する。失敗もするが、知らない間に、その失敗を取り戻すほどの成功で挽回を果たしている。なぜかそういう人の周辺には、同じようなツキの強い人が集まっていて、仕事も人生も楽しんでいたりするのである。

 そうした彼らも会社という組織では、トップまで昇進しなかったりする。だが、そこそこのポジションで堂々と仕事をしている。これはやはりすごい人生のツキではないだろうか。

 ツキが寄ってくるのはなぜだろうか。33年間に及ぶ筆者のビジネス経験から、ツキが寄りつきやすい条件を考えてみたら10件ほどあった。それを「樋口式ツキの十カ条」と呼ぶ。

樋口式ツキの十カ条

  1. 明るいこと
  2. 敏捷であること
  3. 継続力を持つこと
  4. 集中力を発揮すること
  5. 人付き合いを大切にすること
  6. フェアであること
  7. 好奇心に素直なこと
  8. よく学ぶ人であること
  9. 欲張りでないこと
  10. 独創的であること
 苦境にもめげないこと。ニヒルにほくそ笑むのではなく、多忙で周囲から「大丈夫ですか」と話しかけても、微笑んで「大丈夫、頑張るさ」と受け答えができる人がツキを呼ぶ。案件がこじれて、もめて、最悪の状態になっている時、ある上司は「まったく退屈しないよな」と笑った。  ぼやき、なげき、悔やんでいると、必ずツキが去る。特に海外で仕事をしていて分かったのは、欧米人には、苦虫をつぶした顔をしている相手とは、誰も一緒に仕事をしたくないという人が多い。一方、日本人は、笑わない、ユーモアを解さない人種として認識されてしまっている。これは大きな“損害”だ。  仕事にまじめなのはいいことだが、逆境にあっても明るく振る舞うことを心がけたい。 ●敏捷であること  ツキはかなり足早だ。うかうかしていると、すぐに遠ざかる。近づいたときに、ビシッと捕まえる必要がある。欧米風に言えばツキの女神の後ろ髪をつかむ必要がある。すばしっこさが大事なのだ。  ビジネスチャンスにおける決定も当然ながら果敢に即断する必要がある。果報は寝て待てではライバルの多いビジネスの世界では通じない。刻一刻と変化し、過密で過当な競争にさらされている時代では、ゆっくりとしているライバルに出し抜かれ最悪の状態になる。 ●継続力を持つこと  継続力と粘りは筆者が一番頼りにしていた要素だ。例えば誰も長く駐在したくない海外の営業所であっても、最後まで残って粘り強く仕事を継続する者が最後の勝利を勝ち取ることがある。重要顧客とのつき合いは時間の長さが決めるからだ。  商社の場合、通常海外勤務は3年程度で場所が変わる。筆者がサウジアラビアに駐在した時には、粘りに粘って8年半滞在した。仕事が取れ始めたのは4年目からだった。 ●集中力を発揮すること  先ほどの継続力は長期間に渡って粘り強く仕事を続けることだが、集中力は一定の決まった短期間に全能力を集中して働くことと言えよう。それによって、物事の風向きが変わることがある。停滞している事態を打開したい時、集中力を発揮して仕事をこなすことでツキがわくのだ。 ●人付き合いを大切にすること  上司、部下ともに人付き合いを良好な状態に保つことは、短期間ならともかく、長期間では結構難しい。こちらを立てればあちらが立たなくなることもよくある。誰かが責任を取らなければならない事態も起こる。  特に上に立つと、下の責任をどのように自分が吸収するかが重要であるが、瞬間的な判断を必要とすることがある。そこに本音と性格が出てしまう。通常では言うはずもない責任回避の言葉がポロッと出てしまって、周りとの関係が冷えてしまうこともある。会社は人と人との協力で動いているから、社内で孤立してしまえば、ツキが近づくことができなくなるのだ。  社外の知り合いや、顧客とも同じことが言える。もう1つ大切なことは、いくらテレビ会議が普及しても、少なくとも数回に1回はリアルの世界で直接会う必要があるということ。恋人とも同じで、あまり長く会わないでいると関係がこじれる。 ^フェア、好奇心、学習―― ●フェアであること  嘘はもちろん論外だが、責任回避、無責任なども、その場では誤魔化せるが、時間がたてばツキに見放されることになる。部下をフェアに扱わないでいたり、パワハラで押し通すなら、周りだけでなくツキも怖がって逃げる。天網恢恢疎にして漏らさず――なのである。 ●好奇心に素直なこと  筆者が部下だったときに、好奇心のある上司の時は仕事が拡大した。逆の場合は停滞した。仕事が広がらないとやる気もなくなるので、ある意味当然の結果だろう。好奇心はやる気と知恵を作るビタミンで、ツキを呼び寄せるフェロモンである。  一方、筆者自身が上司になった時、好奇心の効用は仕事を広げるだけではないと知った。好奇心で、新しい分野、新規顧客、新規案件を開拓しておくこと で、1つの失敗もほかの商品や顧客で救われるというわけだ。1つだけに注力していると、それがポシャれば自分の仕事がゼロになる可能性がある。好奇心は、仕事の失敗を防ぐための防衛本能にも関係していたのだ。   ●よく学ぶ人であること  いつも何か新しいことを学ぼうという姿勢は魅力的だ。それが積極的な姿勢、真面目な対応につながり、お客との信頼を深めることができる。生涯何かを学ぶなかで、新しい仕事の基になる“宝石”を見付けることもある。そうなると仕事で一度失敗しても新しい宝石で再度戦えるのだ。  何もアカデミックなことだけを学べと言っているわけではない。筆者のオススメはやはりノートをしっかり取ること。議事録や日々の仕事の記録を取ることから始めれば、ツキもそばに寄って来るはず。筆者も書き留めておいたことで「私のメモにはこのように書いてあります」と、ピンチや危機を脱したことが何度かあるのだ。 ●欲張りでないこと  ケチではないこと。何はなくとも手土産という感覚も大切。筆者は同じポケットマネーであれば、昼食に部下を誘った。夜に飲みに行くよりも、4倍もの人数を同じポケットマネーでまかなえたからだ。営業で出張に行けば、自分の部署だけでなく、技術など周囲の部署へのお土産も考えた。  営業という側面からみると、大きな契約のみを評価して、小さな契約を馬鹿にしてはならない。 ●独創的であること  何をするにも、新しい切り口を意地になって探すこと。すべてのビジネスには新しい発想が必要だ。同じことを繰り返していると、いつか失敗し、失注する。ともかくも考えること。ツキは創意と工夫を好むのだ。そして独創的であるためには、いつも何か新しいことを考える必要がある。 〜〜  筆者自身これまでもツキがそれなりにあったが、そのツキを呼び寄せる方法は諸先輩から真似たものだ。こうして考えてみると、ツキとは結構きれいごとが好きで、きれいごとに寄ってくるように思う。  なお、ツキを呼び寄せる要素は、筆者が考案し、普及を勧めてきたアイデアマラソンのプロセスとも合致している。ぜひノートを取ってツキを呼び寄せてほしい。 □green ●今回の教訓 11.実行すること □□ □blue ●関連キーワード ○◆http://www.itmedia.co.jp/bizid/kw/idea.html◇アイデア(発想)◆ | ◆http://www.itmedia.co.jp/bizid/kw/failure.html◇失敗◆ | ◆http://www.itmedia.co.jp/bizid/kw/note.html◇ノート◆ | ◆http://www.itmedia.co.jp/bizid/kw/life.html◇人生◆ | ◆http://www.itmedia.co.jp/bizid/kw/aspiration.html◇やる気◆ | ◆http://www.itmedia.co.jp/bizid/kw/money.html◇マネー◆ | ◆http://www.itmedia.co.jp/bizid/kw/assumption.html◇就任・着任◆ | ◆http://www.itmedia.co.jp/bizid/kw/businesstrip.html◇出張◆ | ◆http://www.itmedia.co.jp/bizid/kw/ingenuity.html◇工夫◆ | ◆http://www.itmedia.co.jp/bizid/kw/jinzai.html◇人材◆ | ◆http://www.itmedia.co.jp/bizid/kw/kensyu.html◇研修◆ | ◆http://www.itmedia.co.jp/bizid/kw/memopad.html◇メモ帳◆ | ◆http://www.itmedia.co.jp/bizid/kw/minute.html◇議事録◆ | ◆http://www.itmedia.co.jp/bizid/kw/promotion.html◇昇進◆ | ◆http://www.itmedia.co.jp/bizid/kw/videoconferencing.html◇ビデオ会議◆ | ◆http://www.itmedia.co.jp/bizid/kw/workingstyle.html◇仕事術◆ □□ □ ●著者紹介 樋口健夫(ひぐち・たけお)  1946年京都生まれ。大阪外大英語卒、三井物産入社。ナイジェリア(ヨルバ族名誉酋長に就任)、サウジアラビア、ベトナム駐在を経て、ネパール王国・カトマンドゥ事務所長を務め、2004年8月に三井物産を定年退職。在職中にアイデアマラソン発想法を考案。現在ノート数338冊、発想数26万3000個。現在、アイデアマラソン研究所長、大阪工業大学、筑波大学、電気通信大学、三重大学にて非常勤講師を務める。企業人材研修、全国小学校にネット利用のアイデアマラソンを提案中。著書に「◆http://www.amazon.co.jp/dp/4415400264/itmedia-22/ref=nosim/◇金のアイデアを生む方法◆」(成美堂文庫)、「◆http://www.amazon.co.jp/dp/4569667627/itmedia-22/ref=nosim/◇できる人のノート術◆」(PHP文庫)、「マラソンシステム」(日経BP社)、「稼ぐ人になるアイデアマラソン仕事術」(日科技連出版社)など。アイデアマラソンは、英語、タイ語、中国語、ヒンディ語、韓国語にて出版。「◆http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4774131628/itmedia-22/ref=nosim/◇感動する科学体験100〜世界の不思議を楽しもう〜◆」(技術評論社)も監修した。「◆https://www.justmyshop.com/app/servlet/item?item_code=9003919◇アイデアマラソン・スターター・キットfor airpen◆」といったグッズにも結実している。アイデアマラソンの公式サイトは◆http://www.idea-marathon.net/◇こちら◆。 □□ 関連記事 http://www.itmedia.co.jp/bizid/higuchi_index.html 樋口健夫の「笑うアイデア、動かす発想」

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