ブランクがあっても帰れる場所に――住友スリーエム「働きやすい」を形に イマドキの福利厚生(1/2 ページ)

ブランクがあっても復帰できる。そんな「自分を必要としてくれる」会社があるだけで精神的支えになるはず。住友スリーエムではこの考えのもと、「働き続けられる」「復職できる」さまざまな仕組み作りに取り組んでいる。

» 2008年11月21日 09時00分 公開
[SOS総務]
SOS総務

 ブランクがあっても復帰でき、続けられる会社でありたい。大手メーカーの住友スリーエムではそんな考えのもと、子育てや介護がしやすい環境作りを法令化に先駆けて取り組んできた。中でも「次世代育成支援対策推進法」という新しい法律に合わせて作った、さまざまな制度を見ていこう。

1カ月で50件も申請、人気の「ファミリーサポート休暇」

 次世代育成支援対策推進法が公布されたのは2003年。同法第2章第3節の「一般事業主行動計画」では、従業員301人以上の企業事業主に、次世代の育成支援のための企業内制度を作り、実施することを義務づけている。

 これを受け、住友スリーエムでは、翌年の2004年に労使共同で次世代支援制度の策定プロジェクトチームを立ち上げることになる。チームの功績は「厚生労働大臣優良賞」(2006年)受賞でたたえられた。

 人事支援部主任で労政担当の坂下由紀子(さかした・ゆきこ)さんは「制度の内容は法律順守をベースにして検討していきました。さらに国、会社、健保、労働組合、共済会別に給付項目のリストを作成しました。従業員へのサポートが、満遍なく行き渡るようにするためです」と話す。

 そして、働き続けられる仕組み、風土や環境の改善、男性社員の制度利用促進という3つのコンセプトを打ち出した。それから上級管理職、子供を持つ社員やその上司といった人たちにヒアリングによる生の声を聞く機会を設け、従業員への意識調査を実施したのだ。

 プロジェクトチームは調査結果を踏まえ、会社の制度として法律を上回る支援制度を次々と決定していく。育児支援だけでなく、介護支援へも広がった。介護休業制度と介護の短時間制度を合わせて、対象家族1人につき、通算12カ月まで取得が可能、といった具合だ。

 また、次のような5つの行動計画を定めた。内容はすべて、社内での理解と応援を得て期間内に目標達成している。

次世代育成支援の実施における達成目標および達成状況
目標内容 達成状況
1 2005年までに看護/疾病予防/介護、子の学校行事に使用できる日にファミリーサポート休暇を導入 2005年7月1日にファミリーサポート制度を導入
2 2007年1月までに緊急時(急な残業や出張および病気時)にベビーシッターを依頼できる体制作りを行う 2005年8月1日に緊急時にも対応可能なベビーシッター会社と法人契約を締結
3 2007年1月までに利用目的に即し柔軟に対応取得できる有給休暇制度の拡充をはかる 2006年1月1日に4時間単位で取得できる有給休暇制度を導入
4 2007年3月までに出産、結婚、育児、配偶者の転勤、介護の事由により退職した社員で就労意思のある者への再雇用支援を行う 2007年3月29日に 再雇用制度を導入
5 計画期間計画に育児休業取得状況を次の水準以上とする
・男性社員の育児休業者1人以上
・女性社員の育児休業取得率80%以上
・男性社員の育児休業者2人
・女性社員の育児休業取得率100%

 「介護に関する項目は、事例が少ないので、ニーズの声をくみ上げるのが難しかったですね。このあたりも、育児関連の対象者との違いでしょう」と坂下さん。丹念に従業員の意見を聞いて構築するのは手間も時間もかかる。しかしその努力が実り、実用的な内容になった。

 その代表が「ファミリーサポート休暇」 だ。これは育児や介護に限らず、家族のために使うことを目的に、年5日間まで取得できる有給制度。同居の家族をはじめ、同居していない両親のために使うことができる。1カ月で50件もの申請があるなど、社内で大きな反響がある。

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