ブランクがあっても帰れる場所に――住友スリーエム「働きやすい」を形に イマドキの福利厚生(2/2 ページ)

» 2008年11月21日 09時00分 公開
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「働き続けられる」「復職できる」仕組みを強化

 また再雇用支援制度は、出産や配偶者の転勤、介護などの理由で退社した勤続3年以上の従業員が対象。即戦力になる上、安心感もある元社員を積極的に採用したいという管理職層からの強い要望が、導入の追い風となった。

 従業員にとってもこの制度は、まさに制度のコンセプトでもある「働き続けられる仕組み」そのものだ。しかし再雇用は、常に希望にかなった再就職ができるというわけではない。

 それでも、介護などでやむなく退職した従業員にとって、「会社が自分を必要としている」「ブランクがあっても帰る場所がある」という思いを抱けることは、精神的な支えだろう。

 再雇用の際は、正社員のほかに契約社員も選択でき、ここにも各自の生活環境を考慮し、両立しやすい配慮がなされている。「また当社では、b-プラザ(共済会)でも、介護に関する支援活動を行っています」と坂下さんは説明する。

b-プラザ(共済会)の支援制度

介護融資 限度額50万円(無利子)

介護休職見舞金 介護休職開始月から最大12カ月まで支給

ホームヘルパー料補助 実費×60%(上限5000円)

介護用品購入補助 1カ月の自己負担額の半額(上限5000円)

レンタル利用補助 1カ月の自己負担額の半額(上限10万円)

介護クーポン券 求人受付手数料と求人紹介手数料の割引


 仕事と家庭の両立支援制度により従業員が安心して働ける環境整備を推進する「ファミリー・フレンドリー企業表彰」という催しがある。2006年に厚生労働大臣優良賞を獲得したことからも分かるだろう。

法令化に先駆け、介護休職制度を発足

 日本の住友電気工業と米国の3Mなどが合併して1960年に設立された住友スリーエム。2007年現在の平均年齢は44.7歳。社員数は2328人だ。そして、社員のうち約16%が女性。さらにそのうちの約35%がワーキングマザーである。ワーキングマザーの多さは、仕事と家庭の両立がしやすい職場の表れともいえる。

 事実、住友スリーエムでは、かねてより女性従業員への支援や活用に熱心だ。女性社員を取り巻く制度の歴史も長い。女性に負担がかかりがちな介護に関しても、介護休業制度が法令化される2年前の1993年に「介護休職制度」を発足。1999年には「介護短縮勤務制度」を導入している。

 また育児に関しては1983年、すでに育児休職制度をスタート。以降、介護や育児関連をメインに制度を充実させてきた。そして現在は、女性だけでなく男性も取得しやすいかを考慮しながら、計画を進めている。その結果、社内では性別に関係なく制度への関心や、制度を利用する人への理解と協力体制も高まっている。こうした雰囲気は、女性だけでなく男性も休業を取得しやすい雰囲気作りの原点になっているようだ。

 介護休業制度は、制定したもののまだ利用者がいないという企業が大半。そんな中でも住友スリーエムでは「まだまだ少ない」といいながらも、すでに多くの利用者がいて、2007年も3人がこの制度を使っている。

 さらに介護期間も、1〜12カ月と、それぞれが必要に応じて取得した後に復職している実績がある。介護はいつ誰に降りかかるか分からない。それだけに誰もが取得しやすく、 ニーズに合った制度を設けることは、従業員との信頼関係を強める。同時に企業の好感度を高め、アピールポイントにもなるだろう。

社内のイントラネットでも相談や申請可能に

 制度を作ったあとは、従業員に広く認知し、活用してもらうためにイントラネットを使った仕掛けも用意した。住友スリーエムのイントラネットには「My Page」というワークフローがある。ここでは各自が自分の給与明細、休暇といった個人情報の確認や各種の申請ができるようになっている。この中には、介護に関するいくつもの項目もあり、Web上で申請ができる。

 各項目での支援内容も、ここで確認できるようにした。この手軽さも、制度を身近に感じさせる有益な方法だろう。近頃は、このフローを使っての問い合わせや相談も増えてきたという。

 さまざまなアイデアと行動力で、制度を構築している住友スリーエム。坂下さんは「これからも、さらにニーズにマッチした制度を構築するとともに、相談に乗りやすい体制作りを検討していきたい」と話す。今後も、精力的で細やかな活動に注目したい。

『月刊総務』2007年10月号

「仕事も家族も大切にしたい 従業員の要求を満たす介護支援制度を作ろう!」(P18〜19)より


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