そうして「ブレーキを使う」ことを実践していった結果、吉見さんの講師術はみるみるうちに上達していきました。そのためにやったことといえば、これだけです。
もっとも、「これだけ」とは言っても
「ゆっくり発声」にしても「沈黙タイム」にしてもごく簡単なテクニックのように見えますが、いざやってみるとほとんどできないものです。必ず事前に何度も練習しておいてください。ぶっつけ本番であわてる前に、リハーサルをしておくことが肝心です。
吉見 でも、開米さん、それだけじゃないですよね? ほかにもいろいろ直したほうがいいポイント、ありますよね?
開米 ええ、ありますよ。あります。でも、まずはこの「ゆっくり発声」からやりましょうよ。ゆっくりしゃべれるようになったら気持ちの余裕が出てきます。そうするとほかのことにも気を配れるようになりますから。最初からあれもこれもと欲張るより、まず「ゆっくり発声」だけ考えるのがいいですよ。
吉見 分かりました! じゃ、残りはおいおい教えてください!!
開米 がってんです!
というわけで、今回から新シリーズ「プロ講師に学ぶ、プロの技術を教えるためのトーク術」を始めます。組織全体で不断の学習が求められる現代、「教える技術」は決してプロ講師だけが持っていればいいものではありません。取引先や社内でのちょっとした説明会、あるいは後輩の相談に乗るときなど、活用できるシーンは非常に多いのです。ぜひ、この機会に身につけて仕事に生かしてください。
なお、このシリーズでは、「教える技術」のなかでも、「講師としてのトーク術」を中心に扱います。しかし、「トーク術」となると文章で伝えることが難しいので、必要に応じて動画で事例を紹介する予定です。また、読者参加型セミナーの開催も検討中ですので、どうぞご期待ください。
IT技術者の業務経験を通して「読解力・図解力」スキルの再教育の必要性を認識し、2003年からその著述・教育業務を開始。2008年は、「専門知識を教える技術」をメインテーマにして研修・コンサルティングを実施中。近著に『ITの専門知識を素人に教える技』、
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