今月は社食特集。さっそく「社食じゃない」がコンセプトの博報堂の社食を訪ねると――全料理とも名店KIHACHI製だったりライブラリーを併設していたりと、飛び道具がずらり。その狙いとは?
1月の総務特集は社員食堂だ。ただ腹を満たすのではなく心まで満たす。そんな「プラスα」を打ち出し、進化しつづける社食の今に迫る。第1回は「社員食堂ではない」という大胆なコンセプトを掲げる博報堂の社食だ。
社名 | 創立 | 事業内容 | 従業員数 |
---|---|---|---|
博報堂 | 1895年10月6日 | 広告代理業 | 3094人(2008年5月現在) |
「もしオフィス内になければ、普通のダイニングカフェだと思って、うっかり客として入店してしまいそう」。広告会社博報堂の社食に足を踏み入れた瞬間、そんな思いが頭をよぎった。
モダンなインテリアに囲まれた社食は、本社受付奥とその階下の2フロアにまたがり広がっている。テーブルが100台あることから「100tables」という。2008年5月、東京・赤坂への本社移転に伴いオープンした。
この移転に先駆け、博報堂は2006年春、新社屋のオフィスコンセプトを検討するプロジェクトチームを発足。当時プロジェクトリーダーを務めた中馬淳(ちゅうま・じゅん)さんは、「第三者から見たら社員食堂かもしれないが、社員食堂ではない」と、100tablesのコンセプトを説明する。社食ではない社食とは一体どういう意味だろうか。
以前、イマドキの福利厚生特集で博報堂大学を取り上げた際、「博報堂は人がすべて」というセリフが出てきた。社食に関しても同じで、「社員は資産だから、社食にも投資すべき」と、社員にとって居心地のいい空間を追及していったところ、「社食でない社食」に行き着いたようだ。
「チープなデスクにチープなイスの、小汚い場所に人は集まらない」(中馬さん)。そこで白を基調にした、開放的で居心地のいいインテリア空間を作った。100tablesは、ランチを求めて社員が押し寄せる昼時が最も混雑する。しかし社食としての機能は、100tablesの持つ機能の一部にすぎないと中馬さんは言う。「人」や「情報」と出会うためのさまざまな機能を備えているというのだ。
例えばライブラリーとしての機能。
下階のフロア奥には、約4万冊の雑誌や書籍を収蔵。映像のDVDもあり、持ち込んだ自分のPCで鑑賞できる。また、「ナレッジコンシェルジュ」といったライブラリー担当者が、特定のテーマに沿って選んだ複数の書籍を、すべて表紙が見えるように縦横に並べて陳列したり、発売キャンペーンを行ったりと、通りすがりに本を手に取りたくなるような工夫を凝らしているという。
社内外との打ち合わせスペースとしての機能もある。
少人数でのちょっとした打ち合わせが落ち着いてできるよう、いくつかのブースが透明な間仕切り付きで並んでいる。もちろん、間仕切りのないオープンスペースで打ち合わせをすることも可能だ。筆者が訪問した時は、オープンスペースに社内ミーティング中らしきグループを何組か見かけた。
さらに、第2のデスクや気分転換としての機能。
複数でなく、「1人で物を考えるのに来る人も多い」と中馬さんは言う。自分のデスクでは落ち着かない。ちょっと気分転換したい。仕事に切羽詰まっていて1人で集中したい――。そんな時の第2のデスクや憩いの空間になるというわけだ。
1人で訪れている人も多いオープンスペースでは、コーヒーの香ばしい香りや菓子の甘いにおいが、会話や食器の音が作る心地いいざわめきに溶けている。個人的な印象ではスタバなど街角のカフェと雰囲気が似ているように感じた。
また、筆者が訪れたのは夕刻だったが、席は適度に埋まっていた。100tablesの営業時間は朝9時から21時。「移転前の社食は、昼のピーク時を過ぎると閑散としていた」というから大きな違いだ。「いつでも人が集まる心地のいい空間を目指した」という狙いは、筆者が見た限り当たっているようだった。
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