ビジネスに取り組んでいると、否が応でもぶち当たってしまうのが「嫌いな人」という存在です。しかも、そういう人が上司にいたりすると、毎日のビジネスライフは、かなりしんどいものになってしまうでしょう。
感情をきちんとコントロールできる人なら、不快な気持ちを抑えてお付き合いできるのでしょうが、私がセミナーや研修でお会いする人たちには、感情のコントロールがきちんとできているという人は1割も見かけません。たいていは、嫌いという感情の強さに振り回されてしまうようです。
とはいえ、そんな嫌いな人にも学ぶべき側面があったりします。ところが嫌いな人から学ぶのは、精神的にもストレス。そこで今回は、そういう嫌いな人からいかにしてストレスを感じることなく効果的な学びを得るか、ということを考えてみましょう。
嫌いな人から学ぶ手法として一般的なのが「反面教師」という考え方。嫌いな人が何で嫌われているのかということに注目し、自分自身は同じようなことをしないように心がけるというものです。
ですが、反面教師として学んだ結果、ああはなりたくないと思っている人に、結果的になってしまうというケースが多いということ、皆さんご存じでしょうか。
ちょっと胸が痛む話でありますが、この話を端的に表しているのが、幼児虐待の事例であります。幼いころ、親から虐待を受けた人は、よほど根性がねじ曲がっていない限りは、自分に子供ができたら絶対に暴力はふるわないぞ、と思うはずです。
しかし、ある調査によると、幼児虐待者のうち実に39.6%の人が過去、自分も親から虐待を受けていた、という事実があるそうです(「児童虐待の病理とその対応策」岩井宜子 1999年刊『犯罪と非行』120号8ページ以下)。
確かに、私自身も、以前テレビで幼児虐待の話などが取り上げられた番組を見ていたら虐待した親が、
親にやられた虐待は、絶対自分の子供にはやるまいと思っていたのに……
とコメントしていたのを聴いたことがあります。こういった虐待者は少なくないだろうな、と私も思います。
もっと身近な例で言えば、皆さんの中にも、入社したてのころには「あんな上司のようには絶対にならないぞ!」と思っていたにもかかわらず、数年もすると、あれほどいやがっていたあんな上司になってしまった、という人もいるのではないでしょうか。
つまり、反面教師は一見役に立つように見えながら、多くの場合、あなた自身をダメにしてしまうのです。
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