冊子の中綴じ製本を行う方法を新たに2つ紹介する。前回紹介した「ナカトジ〜ル」も含めて、メリットとデメリットを比較してみよう。
前回、普通のホッチキス単体では難しい「中綴じ」を簡単に行えるツールとして、多機能スケール「ナカトジ〜ル」を紹介した。今回は、前回の記事に対して読者諸兄から教えてもらった中綴じのための別の手法やツールを紹介しつつ、それぞれのメリットとデメリットについて考えてみたい。
最初に紹介するのは、タテヨコホッチキス「ホッチくる」。外観は一般的な家庭用ホッチキスと変わらないが、針を収めるマガジン部分を90度回転させることにより、中綴じに対応できるという製品だ。ちなみに発売元は「ナカトジ〜ル」と同じマックスである。
奥行きが最大で7センチまでしか対応しないため、事実上A4サイズ以下の中綴じにしか対応できないが、実売500円台で“オールインワン”の中綴じツールはこのほかにない。普段は通常のホッチキスとして使えるので、これから新たにホッチキスごと購入するのであれば、有力な選択肢になるだろう。
実際に使って多少気になったのは、台座に厚みがあるため、針の「打点」がやや高い位置になってしまい、机上に置いて使うにはやや安定感に欠けることだ。通常のホッチキスと同じ形状であることを優先したことによるものだが、この点に関しては、台座の幅が広い「ナカトジ〜ル」のほうが安定していると感じた。
製品名 | 実売価格 | 発売元 |
---|---|---|
ホッチくる(HD-10V) | 630円 | マックス |
もう1つはツールではなく“ワザ”。プラスチック消しゴムを中綴じの台座として用いる方法だ。ホッチキス針を通す位置の裏に消しゴムを当てて台座代わりとし、針を通す。消しゴムに刺さった針の先端を指先で折り曲げ、中綴じを完成させる、というテクニックである。
この方法が秀逸なのは、どこにでもあるプラスチック消しゴムが利用できるため、ホッチキス本体以外には別途ツールを用意しなくて済む点だ。また、「ナカトジ〜ル」や「ホッチくる」のように針を打つ位置の制限がないため、A4サイズや新聞紙サイズといわず、自由な位置に針を打てるのもメリットだ。
デメリットとしては、針を指先で折り曲げるという工数が余計にかかるぶん、作業に時間がかかること。また、ガイドがないために位置合わせがしづらいことや、紙にしわがついてしまう危険性が高いこともデメリットだ。小部数であれば慎重に行うことで解決できそうだが、大量の部数をこなそうとするとどうしても作業が雑になり、ミスが発生しやすい。
結論として言えるのは、ページ数の少ない冊子が数部程度であればお勧めできるが、一定以上の部数を生産するのであれば、「ナカトジ〜ル」や「ホッチくる」といったツールに頼ったほうがよさそうだ、ということだ。消しゴムから針を抜いて机上に置き、紙を重ねて針を打ち、また消しゴムから針を抜いて、という作業を何十回も繰り返すには、それなりの時間と労力が必要になるからだ。
前回の「ナカトジ〜ル」も含めてまとめたのが以下の表だ。
ツール名もしくは方法 | ナカトジ〜ル(MC-140) | ホッチくる(HD-10V) | 消しゴムを利用 |
---|---|---|---|
価格 | 399円 | 630円 | 消しゴムがあれば0円 |
針のサイズ | 10号 | 10号 | 制限なし(ただし太すぎると貫通しない可能性あり) |
枚数の多さ | 10枚 | 15枚 | 10枚程度(ホッチキスに依存) |
作業の簡単さ | ○ | ◎ | △ |
位置の合わやすさ | ○ | ◎ | △ |
対応サイズ | 新聞サイズまで | A4まで | 制限なし |
部数 | 小〜中部数向き | 小〜大部数向き | 小部数向き |
その他 | 手持ちのホッチキスが流用可能 | − | 手持ちのホッチキスが流用可能 |
付加価値 | 定規として使える | − | 字が消せる、紙がめくれる |
ナカトジ〜ル、ホッチくる、消しゴム――。それぞれにメリットとデメリットが存在する。用途ごとに合った方法を選ぶとよいだろう。
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