書籍『発想フレームワーク55』の著者である永田豊志さんが、55もある発想フレームワークの中でオススメする発想技法は「四則演算」。特に5W2Hでアイデアを細かく、倍々にするところがポイントだという。
「アイデアってきらきらしていて、すばらしいものっていうイメージがあるけど、僕にとっては単なる選択肢」「ポジティブな気持ちにならないと発想は出てこない。それを持つことでポジティブな気持ちになれるならそれでOKなんじゃないかな」
そう話すのは、書籍『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』の著者である永田豊志さん。55もある発想フレームワークの中で一番のオススメは発想の「四則演算」だ。
アイデアは量が勝負。1つ1つはくだらないアイデアでも量を出せば、面白いアイデアが見つかるかもしれないし、組み合わせによっては面白いアイデアに変わる可能性が高まるからだ。とはいえ、たくさんのアイデアを出すのはなかなか大変だ。
発想の「四則演算」でもポイントはアイデアをたくさん出すこと。四則演算でいうと「割り算とかけ算」だという。「アイデアの元になるような事柄を割り算でブレークダウンして、かけ算で倍々ゲームする」のである。
割り算といっても、発想やアイデアは算数や数学ではないので、単純に数字で割るわけではない。5W2H(Why、When、Where、Who、What、How、How Much)で割るのだ。いつ、どこで、誰が、どうして、いくらで、どうやった――。How MuchやHow ManyなどHowをどう分類するかでいくつか種類があるが、基本的には5W1Hや5W2H、5W3Hなどと言われるものである。
気をつけたいのは「何のために」という目的軸であるWhyを忘れないこと。「とにかく改善したい時は、この機能をああして、こうしてとなりがちですが、そうすると目的軸がぶれます。機能を優先して考えてしまうと、最終的になぜこうなったんだろうということに陥ってしまいます。すると場合によっては、前より使いづらいものになっていることもあるのです」
そのためには、ロジカルシンキングだけでも難しい。「自分自身がユーザーになりきれるかどうかにかかっています」と永田さん。「アンケート調査から商品企画はできますが、ユーザーの回答で作った機能だけで、本当に購入や利用に結びつけることができるのでしょうか。ターゲットとなったユーザーの気持ちが動くかどうかは、数式では出せません。自分自身がユーザーになりきった時に、本当に心が動くかどうかが分かるのです」
「お財布を開いてもらうには、感情の振り幅が重要」とも。「PCの起動時間でベンチマークを計る記事がありますが、2割アップと書かれていても実際に触るとほとんど分かりません。感情の振り幅が起こるには、量であったら少なくとも2〜3倍。量でダメならまったく違う質を提供しないと。『なるほど、役に立ったな』ぐらいだと変わりません。驚きがないと」
人の気持ちになるには「視点の移動」が必要だ。例えばスーパーマーケットのマネジャーなら、客の視点のほか、レジの視点、配送ドライバーの視点、近隣の住民の視点――などである。「視点はイメージするしかない。イメージすることは発想のトレーニングにもなります。僕は無神教だけど、そういう意味では宗教家は発想に優れていると思います。神様という自分以外の視点を持っていますから」
例えば、スーパーの売り場で雰囲気が悪いという評価があったら、「笑いなさい」「愛想をよくしなさい」という対処療法的な指示は誰でもできるはず。だが、「その指示の効果である程度改善されても本質的なことは変わっていないのではないでしょうか」。そこで、レジの人が笑わずにはいられなくなるような方法を考えてみると、経営もよくなって、レジもよくなって、お客さんも気持ちいい――。「1つ上の視点に立った、Win-Winであり、全体最適なのです」
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