キャリアは航海である――新社会人に贈る言葉(3/4 ページ)

» 2012年03月27日 08時00分 公開
[村山昇,INSIGHT NOW!]
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「地図に目的地を描け」――一職業人として何者でありたいか

 さて、航海において、船を造りました、羅針盤も持ちました。で、どこを目指すのですか? ──これが3つめのテーマである「地図を持ち目的地を描く」です。

 実際の航海であれば、どこを目的地にするかというのは当たり前のことです。目的地の定まっていない船にみなさんは乗りますか? ところが、キャリアという航海で目的地を決めている人は、実は少ないのです。「ほとんどいない」と言っていいかもしれません。ちなみに、職場に配属された後、先輩社員や上司に、職業人として何を目指しているか、将来的にキャリアをどうしたいかを聞いてみてください。恐らく明快に答えられる人は少ないでしょう。

 会社という組織に入ると、全社事業目標という計画があり、そこから仕事は細かに分業され、各自が果たすべき業務の量や質が決められます。それをきっちりこなしていけば、組織から評価され、昇進があり、給料ももらえます。いわば、働くべき量と質は組織の枠の中で決められ、与えられるものになります。

 そうしたことに毎年毎年慣れていくと、ついぞ、自分が一職業人として何を目指すべきか、仕事を通し社会に何の価値を届けたいか、組織の肩書きを外して何者でありたいか、などを考えなくなってしまうのです。つまり、悪い意味で会社員という狭い世界に意識が閉じてしまい、個人としてたくましく広い世界に意識を開いていかないのです。目的地を描かない航海とはこういうことです。

 サラリーマンという働き方は、目的地を描かずとも、定年まで勤め上げることができます。それはそれで1つの姿ではあります。ですが、組織という守られた湾の内で船を漕いでいた人が、いざリタイアとなって、余生という名の本当の大海原に放り出されたとき、果たして人生の最終目的地を描けるかどうか……これは覚悟しておかねばなりません。

 とはいえ、組織の中にいても、立派に個人として目的地を描き、そこに向かっている人はいます。ぜひ、そうした人を見つけて、よい刺激を受けてください。そうした人は、仕事上の大いなる目的(夢や志)を持っています。その目的を成就するために、会社という組織をよい意味で手段として使い、舞台として踊っています。そして、社内外の多くの人たちと一緒にプロジェクトという名の思い出をたくさん作っています。おそらくその人は、定年を迎えたときに、「ライフワーク」を見つけていて、定年後も一個人としてそれを楽しむに違いありません。

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