誰でも実践できる――野口悠紀雄に聞いた「超」説得法「超」整理手帳の野口悠紀雄氏に聞く(2/3 ページ)

» 2013年04月26日 10時00分 公開
[渡辺まりか,Business Media 誠]

「超」説得法で欠かせない2つの要素

――本書で紹介していた、一撃の説得法で必要な「比喩」についてお聞きします。使う比喩は説得する相手によって変える必要があると述べていましたが、それには豊富な経験と知識が必要になる気がします。社会経験が少ない若手社員などには難しくないでしょうか?

野口氏 相手にふさわしいかどうか恐れて使わないより、使うことが大切なんです。使ってみてダメだったらまた別の比喩を使えばいい。

 例えばわたしが専門にしている経済の話は、比喩がないと分かりづらいんです。金融緩和は麻薬のようだ、一時は良いが使い続ければ害になる、とよく例えます。痛みを和らげるから麻薬のようなものであって、根本的な治療はされない。もし治療するのであれば、痛みを伴う手術をしなければならない。そう言うと分かりやすいでしょう?

――そうですね、経済についてよく分からない人でも比喩を使うことで納得できます。

野口氏 そうです、だから比喩を使うことが大切なんです。また比喩にはトリックがあって、そのトリックをうまく使うことで一撃を加えることができます。比喩が強力であればあるほど、誰も反論できなくなるんですよ。

――比喩のトリックについては、本書の中では聖書のイエス・キリストの言葉も引き合いに出されていましたよね。シェイクスピアはまだしも、読者の中には聖書の背景を全く知らない人も多いと思うのですが、引用されるのに戸惑いはなかったのでしょうか?

野口氏 2000年の実績がありますからね、聖書は。むしろ知らないのであれば読んで欲しいくらいですよ。ドラッカーを読むなら聖書を読め、と言いたいです。ダイヤモンドさんに怒られちゃいますかね(笑)

相手の信頼を得るテク「バーナムステイトメント」を使う

――本書で紹介していた相手に信頼してもらうテクニック「バーナムステイトメント(誰にでも当てはまる命題)」についてお尋ねします。「あなたには実力があるのに、認められていないんだよ」など、心地の良い意見を述べる手法ですが、先生は使われたことがありますか?

野口氏 それはもう、いつも使っていましたよ。特に、学生のころには失恋した友人に「お前の良さが分からない人と別れて、逆に正解だよ」などと言って慰めるのはしょっちゅうでした。これを言われると、大抵の場合「そんなことないよ……」と首を横に振るんだけど、実は喜んでいる。そして、続くアドバイスを受けてれてもらいやすくなる。そういう場面をいくつも経験してきました。

――すると、内容は「あなたは良いのに、他人が分かっていない」ものを少しずつアレンジして使う、ということでしょうか。

野口氏 そうです。それでほとんど納得してもらえます。それから、これは自分にも使えるんですよ。今の状況は自分がダメだからではなく、本当は才能があるのに、まだ発揮できていないだけなんだ、とか。自分の言っていることは正しいのに、世の中が認めてくれないだけなんだと。まあ、これはわたしが自分を慰めるのに使っているんですけどね。

――先生の著書のうち、「超」の付く最初のものは1993年、今から20年以上も前に出版した書籍ですが、今でも読まれ、多くの人が実践しています。それ以外の書籍も同様です。これほど長く多くの人に読まれている理由は何だと思われますか。

野口氏 それは、内容と提案した方法が正しいからでしょう。あとはタイトルもあるかもしれません。1993年の『「超」整理法』は当初、分類しないで整理する方法を提案したので「反分類整理法」にしようと思っていました。しかしそれにしていたらインパクトが弱く、ここまでのヒットにはつながらなかったでしょう。

――やはりタイトルは大切ですね。

野口氏 そうですね。もちろん、タイトルだけが良くて内容が良くなければ生き残れないのは言うまでもありません。このIT時代になって、なおのことわたしの提案した方法が正しいと証明されたように思えます(編注:野口氏は、著書『超「超」整理法』の中で、検索の極意を著している。その中ではPC内のファイルも分類整理するのではなく、検索して必要な情報にアクセスする方法を提案している)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ