「超」シリーズで知られる野口悠紀雄氏の最新著書は、相手を一撃で仕留める説得法。どのようにすれば一撃の説得法が身に着くのか。野口氏に尋ねてみた。
誰かに何かを説明しようとしたとき、また自分の提案を受け入れてもらいたいと思ったとき、必要以上のことを言い過ぎてしまって逆に伝わらなかったという経験はないだろうか。
4月12日発売の『「超」説得法 一撃で仕留めよ』(講談社)は、「超」シリーズで有名な野口悠紀雄氏(早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問)による最新の著書だ。帯には「たくさん投げるは人の常 一撃突破は(あなたにもできる)神の業」と記されている。
誰かを説得するのに一撃がどのように効くのか、またどのようにすれば一撃の説得法が身に付くのか。野口氏に尋ねてみた。
――野口先生は経済に関してだけではなく「超」シリーズの著書をいくつも出版しています。今回この『「超」説得法』をテーマに選んだ理由を教えてください。
野口氏 1つは、日ごろから「説得」を意識していたからです。わたしの仕事は主に執筆ですが、伝えたいものが多いのになかなか伝わらないもどかしさがありました。相手を説得するには、工夫が必要だと感じたのです。まずはタイトル、そして説明のための比喩。仕事で常に意識していたこれらをまとめたのが『「超」説得法 一撃で仕留めよ』です。
そしてもう1つ。これも仕事柄、わたしは受験生を観察する機会が多くありますが、もう少し工夫すればいじわるな質問を面接官から受けずに済むのに、という場面を幾度となく目にしてきました。そんな彼らに、本書は面接をうまくこなせるアドバイスになればと思っています。
――そうすると、先生が説得したいと思われる場面、他の人が説得する場面、この2つのために今回のテーマを選んだのですね。先生がこの一撃説得法を身に着ける上でお手本となった人はいましたか?
野口氏 わたしが大蔵省に入りたてのころ、局議(局の会議)に参加していたある2人です。1人は竹内道雄。彼は後に大蔵事務次官になりましたが、おかしいと思うところでは驚異的な理解能力や暗算能力を発揮して、数字をばーんと挙げる。そうするともう誰も反論できないんですよ。まさに一撃説得でした。
もう1人は理財局長の吉岡英一。国税長官になった人ですが、彼は局議中、基本的に発言せずずっと黙って聞いています。そして2つの選択肢のうちどちらにしようか、という決断の場面で「これ」と指示をする。するとそれが決まっちゃう。これも一撃説得だなあと思いました。
――本書では、一撃説得法の反対に“負の一撃(たった一言で信頼を失ってしまうような一言)”を与えてしまうことについても注意が必要だとありました。負の一撃を与えないために必要となる「注意深さ」は、社会経験が浅い若手社員などは難しくないでしょうか?
野口氏 そうでもありません。一撃で人を説得しよう、とするのは一朝一夕ではなかなかできない。しかし負の一撃を加えないようにするのは誰でもできるのです。これは、意識しているかどうかの問題ですね。意識していないと、自分が負の一撃を与えてしまったことに気が付かないことが多い。しかし、意識するとまず会議などで他の人が放った一撃が説得するものだったのか負のものだったのかが分かるようになり、反面教師的に学べます。そうすると、自分も今ここでこれを言ったら負の一撃を与えることになってしまう、というのが分かり、避けられるようになるのですよ。
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