スマホ活用のクレジットカード決済サービスが相次いで登場する中、Twitterの創始者が開発した米最大手「Square」が日本に上陸。業界最安値の決済手数料、無料カードリーダー、無料レジアプリの提供で市場拡大を目指す。
クレジットカード決済システムの導入、スマホやタブレットを使ってもっと手軽に――。こんなコンセプトから生まれた米Squareの中小店舗向け決済サービス「Square」が、5月23日、ついに日本に上陸した。カードリーダーはWeb経由で無料で提供。無料のPOSレジアプリも合わせて提供する。
Squareは、Twitterの創始者であるジャック・ドーシー氏が4年前に立ち上げた決済サービス。スマートフォンやタブレットのイヤフォンジャックにカードリーダーを差し込むだけでクレジットカード決済を行えるという手軽さ、据え置き型のシステムに比べて安い導入コスト、ネットがつながれば時間や場所を選ばず使えるという利便性の高さが注目を集め、街の小さな店舗から大手コーヒーチェーンのスターバックスまで、北米で420万の加盟店を擁するまでに成長した。
日本進出にあたって同社は、三井住友カードと提携。三井住友カードは米Squareに1000万ドルを出資しており、「単なるアクワイアラー(加盟店管理会社)にとどまらない戦略的パートナーとして、共同でSquareのサービスを展開する」(三井住友カード 代表取締役社長の島田秀男氏)考えだ。
小型のカードリーダーとスマートデバイスを利用した決済サービスは、「PayPal Here」を皮切りに、PayPalのスピンアウト組が立ち上げた「コイニー(外部リンク参照)」、楽天が提供する「楽天スマートペイ(外部リンク参照)」らが参入している激戦市場。日本市場では後発組となるSquareは、安価な導入コストと付加価値サービスの提供で市場シェアの拡大を目指す。
Squareの大きな特徴は、現金決済にも対応するレジアプリとカードリーダーを無料提供している点と、先行組に比べて決済手数料を最も低い3.25%に抑えている点。また、現金化についても、Squareが指定する銀行を利用していれば翌営業日、その他の銀行でも1週間以内に振り込まれるなど経営に影響しないよう配慮している。
現状、カードリーダーを無料で提供しているのはコイニー(期間限定)のみで、決済手数料はPayPal Hereが5%、コイニーが4%、楽天スマートペイが4.9%となっている。POSシステムとの連携も、ようやく対応が始まったばかりであり、Squareの提供するサービスは先行組を脅かすものになりそうだ。
項目 | Square | PayPal Here | コイニー | 楽天スマートペイ |
---|---|---|---|---|
カードリーダー | 無料 | 1200円前後 | 無料(期間限定) | 2980円 |
決済手数料 | 3.25% | 5% | 4% | 4.9% |
対応クレジットカード | VISA、MasterCard | VISA、MasterCard | VISA、MasterCard | VISA、MasterCard、楽天 |
アプリの種類 | iOS | iOS、Android | iOS(Androidは2013年夏) | iOS、Android |
その他 | ウォレット(予定)、無料レジアプリ | 顔パス決済(予定) | ー | ー |
スマートデバイスを利用したクレジットカード決済サービス各社は、カードリーダー端末の販売や店舗へのアプローチで通信キャリアと組んで動いており、PayPal Hereはソフトバンクグループと、楽天スマートペイはKDDIと協力してサービスの拡大を図っている。
Squareと提携した三井住友カードはNTTドコモと資本提携しており、最後の大物同士が協力するかどうかが注目される。これについて三井住友カードの島田氏は「カードリーダーを一緒に販売していく、(ドコモのスマホ向けコンテンツ販売サービス)dマーケット等で一緒にやっていくなど、いろいろなことが考えられる」とし、一緒に検討する方向で話を進めていることを明らかにしている。
米国でサービスを開始したSquareは、2012年の10月にカナダでサービスを開始しており、日本は3カ国目の展開となる。北米以外の初の海外進出先として日本を選んだ理由についてジャック・ドーシー氏は、190万規模といわれる個人事業主や中小店舗にクレジットカード決済システムが浸透していないこと、こうした市場にアプローチするためのパートナー企業(三井住友カード)と提携できたことなどを挙げる。「(日本は)成功するには難しい市場」(ドーシー氏)としながらも、この市場で培ったノウハウは他の国にサービスを展開する際に生かせるとみている。
今後は、アプリを通じて顔写真とクレジットカード番号を登録し、ネット上で決済した商品を実店舗で“顔パス”で受け取るウォレットサービスも展開する予定。日本でニーズが高い紙のレシートの発行もアプリで対応するとし、既存のPOSシステムとの連携についても順次対応していく考えだ。
三井住友カードの島田氏によると、Squareと提携する狙いは2つあるという。1つは中小店舗が導入しやすいクレジットカード決済サービスの提供による、国内アクワイアラー(加盟店管理会社)市場でのプレゼンス向上。あわせてスモールビジネス市場や地方でのクレジットカード決済の拡大にも期待しているという。
もう1つはカード会員や加盟店に向けたサービスの強化。例えば、米コーヒーチェーン大手のスターバックスが提供している“顔パス”決済サービス「Squareウォレット」など、米Squareが開発する先進的なサービスをいち早く日本市場で提供することで、“一歩先行く三井住友カード”を印象づけるのが狙いだ。
なお、今回の決済サービスの提供において、Squareは包括加盟店という位置付けになり、加盟店に端末を提供するほか、加盟店の開拓管理や精算業務を行うという。米Squareは同社の100%子会社としてSquare株式会社を設立しており、戦略的業務提携は米Square、Square、三井住友カードの3社の間で締結されている。
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