給料の「高い会社」と「低い会社」に分かれるワケずっと「安月給」の人の思考法(3/4 ページ)

» 2013年08月06日 11時00分 公開
[木暮太一Business Media 誠]

理由3 「利幅」の天井が決められているから

 もう1度右の表を見てください。注目してほしいのは、業種によって平均給与に大きな差がある、ということです。

 「小売業」の給与が低いですよね。最近、政府からの「要請」によってローソンやセブンアンドアイなど、小売企業が賃上げに動いています。そのため、小売も給料が上がっていくようなイメージを持つかもしれませんが、そんなことはありません。総じて見ると給料が低いです。

 なぜでしょうか? それは利幅の天井が決められているからです。

 カール・マルクスの著書『資本論』の理論では、商品の価格は商品の価値(かかった労力、コスト)で決まっています。

 そしてこの「商品の価値」には、一般的に必要な流通の手間もすでに考慮されています。工場で製品ができたからといって、すぐにお客さまに買ってもらえるはずはありません。お客さまがいるところまで持って行かなければならず、また売る努力も必要です。だからそれにかかる労力も商品の価値に含まれています。

 ということは、でき上がった商品をどのように流通してどのように店舗で陳列しても、その商品の価値は変わらず「妥当な値段」も変わらないということです。

 つまり、卸業者や小売業者がどんなにがんばっても、商品の価値を引き上げることはできず、その商品の「妥当な価格」を引き上げることはできない、ということなのです。

 『資本論』では、卸や小売は「流通資本」と呼ばれており、本来メーカーが自分で行うべき流通プロセスを代行している、とされています。

 商品は生産してその辺に置いておけば売れるわけではなく、当然「流通」「販売」の仕事が不可欠です。しかし、この活動は付加価値を生みません。いくらがんばって売ったとしても、商品(モノ自体)の価値が増えるわけではありません。よって、生産者(メーカー)は、できるだけこのプロセスを効率化しようとします。しかし自分は「メーカー」なので、なかなか効率的にできない。そこで流通業者に委託するようになるのです。

 流通業者は、流通を専門にすることで、その道のプロになります。そして、メーカーが自分で行うよりも低コストで効率的に流通をすることができるようになります。「おたくの代わりに流通しまっせ」と仕事をもらい、メーカーよりも効率的に行うことで差額のコストを利益とするのです。

 委託された流通業者は、本来メーカーが行うべき流通・販売業務を肩代わりし、その代わりに本来100の価値がある商品を80で仕入れ100で販売しています。この差額の20が流通業者の「利益」になるのです。

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