「やらされ感」は気持ちの毒――「しなければ」を「やってしまおう」に言いかえてみる田中淳子の人間関係に効く“サプリ”(2/2 ページ)

» 2013年09月05日 11時00分 公開
[田中淳子,Business Media 誠]
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「しなければ」を前向きな言葉に置きかえてみる

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 ただ、こういう語彙を意識的に変えることはできそうだ。

 「ああ、この資料、早く完成しなきゃいけないけど」という代わりに、「この資料、早く完成させてしまおう」と言う。

 「早く片付けないと締切も迫っているし、お客さんにも怒られそうだし」と思ってしまうところを、「早く片付けちゃおう。そうすれば締切にも余裕で間に合うし」とあえて前向きな言葉を使ってみる。

 言葉には力があるので、自らが発した言葉によって、自分の考えや想いは影響を受ける。自分が発した言葉が自分自身にフィードバックされ、考えや想いに変化を来すという側面があるはずだ。

 だから、「はぁ」とため息をついて「これをしなければ」と義務感に駆られた言葉を口にするよりも、「よしっ! これ、片付けちゃおう」と前向きな言葉を使って取り組み始めるほうがよりよい成果につながりそうだ。

 僧侶の小池龍之介さんは、その著書『「自由」から自由になる沈黙入門』にこんなことを書いている。

 「言葉というのは、精神の食事。よくない言葉を聴くのは悪い栄養を取ってしまうこと。不の感情を抱くとそれは積もり積もってどこかで芽を出してしまう」

 これは、“他者のよくない言葉を聴くと、聴き手である自分の中を通り過ぎるからよくないよ”という話なのだが、自分の言葉だって同じことであろう。

 自分が口にした言葉を一番多く聴いているのは、ほかならぬ自分自身だ。だから自分が口から出した言葉に最も影響を受けるのも、他者ではなく、実は自分なのである。否定的な言葉、義務感に駆られた言葉をたくさん使うと、自分の心の持ちようもその言葉に添ったものになっていくだろう。前向きな言葉、自分の意思を表す言葉を使えば、自分の気持ちも前向きになり、行動にも弾みがつくのではないだろうか。

 口から発する言葉は自分の考えや行動に影響する。そして、自分を取り巻く周囲の人の考えや行動に影響を及ぼす。

 何に取り組むにしても、常に「○○をしなければならない」「○○をしないわけにはいかない」と言い続けていると、それを聴いている周囲も「やらされ感」を持つようになるかもしれないし、発する自分も意識はせずとも「やらされ感」を抱きやすくなることもあるだろう。

 もちろん、どんな場合でも前向きな言葉を使い続けるのは難しいかもしれない。ただ、時々は、自分の使う言葉をよく観察してみるのもいい。

 私たちは生来「する」「したい」の世界に生きていたのだ。きっとできないことはない。

著者プロフィール:田中淳子

田中淳子

 グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー。

 1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタル イクイップメントを経て、96年より現職。IT業界をはじめさまざまな業界の新入社員から管理職層まで延べ3万人以上の人材育成に携わり27年。2003年からは特に企業のOJT制度支援に注力している。日経BP社「日経ITプロフェッショナル」「日経SYSTEMS」「日経コンピュータ」「ITpro」などで、若手育成やコミュニケーションに関するコラムを約10年間連載。


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