上口 著書『「新・ぶら下がり社員」症候群』の中で、吉田さんは「新・ぶら下がり社員チェックポイント」を10個挙げていました。これは出版した2011年当時と今とでは変わっていませんか?
吉田 そうですね。2週間ほど前にも30歳前後の人々に会いましたが、まさにという方が何人もいて、今も変わらないなとひしひしと感じています。
上口 「新・ぶら下がり社員」に共通点はあるのでしょうか? 会社規模や業種、性別など。
吉田 やはり安定している会社や、変化がしにくい会社には多いですね。一概には言えませんが、例えば最近多いなと思うのは大企業の子会社に勤めている社員です。上から仕事が降ってくる環境や、上層部が親会社の出向者で占められているケースなど。あとは社内異動がほとんどなく、ずっと同じ仕事が続く環境にいる会社の人などに多く見られます。
上口 仕事にメリハリがない、ということでしょうか?
吉田 ええ、変化がないんです。逆にいうと、ゲーム業界など割と変化が激しい業界の人は新・ぶら下がり社員になりにくいですね。どちらかというと、そうした変わらざるを得ない状況の中でバーッと走っている人よりも、「変わらなきゃ変わらなきゃ」とい言いつつも何となくやっている会社の人に多いですね。
性別の傾向については一概には言えませんが、業界によって違うなと思うことがあります。例えば旅行業界だと、女性は20代のころはやりがいを持って仕事に取り組んでいますが、30代になってくるとだんだん元気がなくなってくるんです。話を聞いていると、「私、旅行が好きです。お客さんにも旅行を楽しんでほしいです」と言うんです。それで20代のころは、実際にお客さんと触れ合いながら旅行の企画をして楽しく仕事をバリバリやっていたようなんです。
上口 やりがいがあったのですね。
吉田 はい。それが数年経って30代になると、次のキャリアが見えないんですよね。管理職になってくださいという話になると、「いやいや、私は旅行が好きで人を管理したいわけじゃないし」と。それで管理職になりたいわけでもないし、でもやることがそれほど大きく変わるわけでもない。
さらに仕事にも慣れているので、特に今以上の能力アップをする必要も自分で感じなくなってくる。すると20代のころは自身の成長も感じながら楽しくやっていたのが、30代になっていくとだんだんどうしていいか分からなくなる。それでぶら下がり状態になっていくんです。1つの業界の事例ですが、そういうケースもありますね。
一概にどの業界がっていうのはないですが、やはり業界によって多少の違いはあると思います。いま挙げた旅行業界について男女の違いで言えば、やはり聞いていると男性のほうがまだ管理職になるイメージがありますね。もちろん会社によっても違うでしょうし、男性にも上昇志向がない人はいるので、男性が女性がと決めつけはできません。しかし志望動機とも関連していると思いますが、特にそういう「旅行が好きだから入社しました」などの動機を持っている女性に多い、という話を聞きますね。
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