では実際に一般的なサラリーマンが関係しそうな控除を具体的にみていこう。前回も掲載したとおり所得税の主な控除は表のようになっている。この中で今回は配偶者控除・配偶者特別控除、扶養控除、社会保険料控除、生命保険料控除、医療費控除、寡婦控除に重点を置いて説明したい。
控除名 | 金額 | 概要 |
---|---|---|
基礎控除 | 38万円 | 全員が一律に受けられる控除 |
配偶者控除 | 38万円 | 所得が38万円(年収103万円)以下の奥さん(配偶者)がいると受けられる控除 |
配偶者特別控除 | 3〜38万円 | 所得が38万円を越え76万円未満(年収103〜141万円)の奥さんがいる場合の控除 |
扶養控除(一般) | 38万円 | 16歳以上の子どもや親の面倒をみていると受けられる控除 |
扶養控除(特定) | 63万円 | 所得が38万円以下で19歳から22歳の子どもがいると受けられる控除 |
扶養控除(同居老親) | 58万円 | 公的年金が158万円以下で直系、同居、70歳以上の親の面倒をみていると受けられる控除 |
扶養控除(同居老親以外) | 48万円 | 公的年金が158万円以下で70歳以上の親の面倒をみていると受けられる控除 |
寡婦控除 | 27万円+α | 夫と死別、離婚した女性のための控除。条件により増額 |
寡夫控除 | 27万円 | 妻と死別、離婚し子を扶養、所得500万円以下の男性のための控除 |
社会保険料控除 | その年の支払額 | 年金や健康保険、雇用保険を納めた分の控除 |
一般生命保険料控除 | 旧:〜5万円、新:〜4万円 | 一般の生命保険の支払いがあると受けられる控除 |
介護医療保険料控除 | 新:〜4万円 | 新制度の介護・医療保険の支払いがあると受けられる控除 |
個人年金保険料控除 | 旧:〜5万円、新:〜4万円 | 個人年金保険の支払いがあると受けられる控除 |
地震保険料控除 | 〜5万円 | 地震保険の支払いがあると受けられる控除 |
医療費控除 | その年の支払額−10万円 | 年間の医療費の10万円又は所得金額の5%を超えた分に対する控除 |
所得税の主な控除の一覧 |
最初は配偶者控除。結婚して奥さんがいるともらえるのが配偶者控除だ。控除額は所得税で38万円、住民税で33万円。ただし奥さんの収入に条件があり、年収で103万円(給与所得控除65万円を引いた所得で38万円)以下であること。
これから結婚を考えている人は籍を入れるタイミングに注意しよう。配偶者がいるかいないかの判定は年末で行うからだ。12月に籍を入れればさかのぼって1月から12月まで丸々1年分として計算される。日割りや月割りではないということだ。「元日に入籍すれば分かりやすいし、忘れないから……」と言われたら、「やっぱクリスマス入籍でしょ」と切り返そう。
仮に年末年始の休みを利用して新婚旅行に行くなら、籍を入れてから旅立つと節税となる。課税所得によるが数万円から十数万円が旅費の足しとなる。離婚するときはその逆。年が明けてから離婚届けを提出すれば前年分の配偶者控除を失わずにすむ。
ただし、収入の条件があるので正社員(=年収103万円超)として働いている彼女と結婚する場合は年末も年始も関係ない。もともと配偶者控除の対象ではないので、いつ籍を入れても同じだからだ。
出産が近付き退職する場合は、年始から退職までの収入が103万円以下なら、その年から配偶者控除の対象となる。もしかしたら1カ月早く辞めたら節税になるかもしれない。しかし正社員の場合は1カ月働いたほうが、節税額より手取りが多くなりそうだ。筆者は真面目に書いているが、ここまでくると読者は真剣に考えるほどのことではないかもしれない。
年収(給与の場合) | 控除額 |
---|---|
103万円超 105万円未満 | 38万円 |
105万円以上 110万円未満 | 36万円 |
110万円以上 115万円未満 | 31万円 |
115万円以上 120万円未満 | 26万円 |
120万円以上 125万円未満 | 21万円 |
125万円以上 130万円未満 | 16万円 |
130万円以上 135万円未満 | 11万円 |
135万円以上 140万円未満 | 6万円 |
140万円以上 141万円未満 | 3万円 |
141万円以上 | 0円 |
配偶者特別控除 |
では103万円を超えたら控除が0円になるかというとそうでもない。103万円を超え141万円未満であれば配偶者特別控除の対象となる。配偶者特別控除は年収が増えると徐々に控除額が減り、141万円になると0円となる。ただし103万円を超えると奥さん自身も課税対象者となるので所得税を納税する義務が発生する。奥さんの年収と配偶者特別控除の控除額は右表のとおりだ。
配偶者特別控除には旦那さん側の所得に条件がある。給与所得控除後の所得で1000万円以下でないと控除が受けられない。年収ではないので注意しよう。年収と所得の関係は次の式で表されるので、
給与所得控除は年収が1000万円を超えた場合、
となっているから、逆算すると年収が1231万5790円を超えると所得が1000万円を超えることとなる。
旦那さんがガッツリ稼いでいると配偶者特別控除の対象外となるので、奥さんの年収が103万1円になると旦那さんは所得税38万円、住民税33万円の控除を失う。仮に旦那さんの年収1250万円、各種控除により差はあるが所得税の税率が23%、住民税の税率が10%なら12万0400円の増税となってしまう。
奥さんの収入にはほかにも注意点がある。年収が103万円以下なら、給与所得控除の65万円と基礎控除の38万円を引いて課税所得は0円となり、所得税は0円=無税となる。しかし、住民税が無税となる上限額は市区町村で異なる。東京23区の場合は年収100万円を超えると住民税の所得割、均等割が課税されるが、93万円を超えると均等割の課税対象となる地域もあるのでお住まいの市区町村のWebサイトなどで確認してほしい。
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