本田: 簡単にいうと、優秀な店長さんたちが持つ暗黙知をモデル化して、売上やコストの状況から判断して、次に打つべき手を示唆します。卓あたりの客単価が想定よりも低ければ「1ドリンク追加注文を取りましょう」とか、人件費が高くなりそうなら「午後のシフトを見直しましょう」とか。メールを配信する機能もあって「火曜日によく来るお客さんをターゲットにダイレクトメールを出しましょう」といった提案もします。
岡田: おお、店長さんの軍師的な存在ですね。
本田: そういう意味では、勤怠管理機能やシフト管理機能も標準搭載です。多くの店長は、初期シフトを引く作業に1日の3分の1とか4分の1とかを費やしています。これは1〜2週間に1度くらいの作業ですが、実際には「バイトが来られなくなりました」といった事態が起こり得るわけです。すると予定の組み換えをしなきゃいけない。こういった作業に予想外に多くの工数を割かれている店長を手助けしたい。
また、組んだシフト予定から人件費予算を、実際の勤怠情報から人件費実績を自動的に集計して、正しい業績管理に連動できます。計算といえば、店長の業務で毎日20〜30分かかるものがありますが、岡田さん、何だか分かりますか?
岡田: 毎日の計算で……、うーん、何でしょう?
本田: ほとんどの店長が、レジを締めて金額の付け合わせをするのと同時に、ランチのフードがいくら、ドリンクがいくら、ディナーのフードとドリンクがいくらといったデータをExcelでまとめて、そこから客単価を計算して、そしてリポートを書いてから帰っています。こういう数字は全部自動計算できます。あとは今日の気付きとか課題といった定性的なものを入力してもらえば日報は完成です。
仮に店長の給料が1カ月30万円だったとして、毎月200時間働いていたら時給は1500円ですね。日報を書く30分の作業コストは1日750円。1カ月だと1万5000円。年間だと18万円。10店舗あれば180万円です。飲食店の営業利益率は約5%と薄いんです。人件費率が30%くらいということを考えると、POS+導入によるコスト削減によって収益の大きな改善が期待できます。
岡田: クラウド型モバイルPOSを開発するうえで、一番気を使った点は何でしょうか?
本田: 一般的なクラウドサービスは、注文データも売上データもすべてネットの向こうのサーバを介してやり取りします。逆にいえば、ネット回線が切れてしまったら業務も止まります。POS+では、レジやオーダー端末にもデータベースを持たせることで、クラウド側とのやりとりができなくなっても現場の機器同士で通信をして業務を止めない仕組みとしました。
かつて、誰もが知っているレストランチェーンで、無線システムの不具合によってオーダーが取れなくなり臨時休業せざるを得なくなるという業界でも前代未聞のトラブルが発生しました。それを踏まえ、POS+で導入する無線アクセスポイントは民生品ではなく、劣悪な通信環境でもつながる法人向け機器を採用しています。その分、初期費用が数万円高くなりますが万が一の機会損失を考えれば……。
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