知の巨人・梅棹忠夫に学ぶ、「発見」の書き留め方知的生産の技術とセンス(1/3 ページ)

今の時代は、どんな情報でも一瞬で手に入る便利な時代です。しかしこの状況は、情報の受け手である私たちに限られた時間でどの情報を受け取るべきか、どう取捨選択するかという問題をも引き起こしています。

» 2014年11月21日 08時00分 公開
[堀正岳, まつもとあつし,Business Media 誠]

連載「知的生産の技術とセンス」について

本連載は堀正岳、まつもとあつし著、書籍『知的生産の技術とセンス 〜知の巨人・梅棹忠夫に学ぶ情報活用術〜』(マイナビ新書)から一部抜粋、編集しています。

私たちは、かつてなかったほどさまざまな「情報」に囲まれ、日常的な仕事や生活で「知的生産」を行っています。

しかし、私たちが日々生み出している情報は、こういった環境の進化に追いついているでしょうか? 道具や環境が整った今だからこそ「知的生産」のための技術について、あるいは「知的生産」とはそもそもどういうものなのか、その源流をたどる必要が高まっています。

本書では、元祖ライフハックと言っていい、知の巨人・梅棹忠夫氏が提唱した「知的生産の技術」を、できる限り生かせるように再解釈し、周囲にある道具や環境に適用できるようアップデートを試みました。

さあ、「知的生産」という人生の武器を手に入れましょう。


好奇心が磨くインプットのセンス

 知的生産の本質は、情報を扱う上での「センス(個性)」です。このセンスの磨き方を、知的生産における情報のインプット、アウトプットに当てはめて考えていきます。

 さて、情報のインプットにおけるセンスとは何でしょうか? 一見、今の時代はどんな情報でも一瞬で手に入る便利な時代です。

 最新のニュース、流行のトレンド、有用無用な広告など、Webを開けばいくらでも情報はあふれています。TwitterやFacebookなどはリアルタイムに更新される情報が洪水のように流れており、いつでも、いくらでも情報はインプットできるような気がします。

 しかしこの状況は、情報の受け手である私たちに限られた時間で何を受け取るべきか、どのように取捨選択するかという問題を引き起こしています。あふれるばかりの文献や情報におぼれてしまうという状況は、以前ならば大学の研究者などのような知的生産を職業とした人に限られていましたが、今では仕事の現場から家庭の中にいたるまで、すべての人が情報の激しい流れのただ中にいるのです。

 どんな情報を選び、どのように探してくるか。それが情報インプットのセンスと言っていいでしょう。

 梅棹先生(※1)はこのセンスをどのように養ったのでしょうか?

 民族学者としての梅棹先生の仕事においては、「情報」とは研究するフィールドで取材する内容であったり、写真であったりが中心です。戦時中のモンゴル遊牧民の調査では持ち帰った野帳(フィールド・ノート)が数十冊に及んだといいますし、現タンザニアのマンゴーラにおける9カ月足らずの調査ではB5判70ページのノートが12冊、それを半裁したノートは46冊にも及んだそうです。

(※1)梅棹忠夫プロフィール:日本の生態学、文明学、民族学、情報学といったさまざまな学術分野で功績を残し、大阪万博の企画、その跡地に建つ国立民族学博物館(民博)の初代館長も務めた。『知的生産の技術』ほか、著書多数。(1920年6月13日―2010年7月3日)

 野帳とは、野外研究を行う人にとっては調査をやったかやらなかったかの分け目になるほど重要なものです。有益な情報をキャッチしたとしても、それを野帳に書きつけておかなければ、出会わなかったも同然です。逆に言えば、野帳に何を書くかにその人の研究者としてのセンスが現れるわけです。

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