どんなに有能な人でも、周囲の気持ちに配慮できる思いやりや優しさ、柔軟性は重要です。しずちゃんを射止めたのが出木杉ではなくのび太だったのは、のび太の優しさが大きかったのではないでしょうか。
この連載は書籍『ポケット版「のび太」という生きかた』(アスコム)から抜粋、再編集したものです。
勉強も運動も苦手でぐうたらしてばかりののび太。でも、映画版で大活躍し、しずかちゃんと結婚し――、実は人生の成功者だったのです。そんなのび太から、無理せずに自分らしく生きて夢まで叶えてしまう方法を学んでみませんか?
本書では、のび太から学べる人生の成功法則を「のび太メソッド」と提唱し、全部で37つ紹介しています。
・完璧をいきなり目指さない
・かっこいい自分を想像する
・直感で判断。とにかく動き出す
・夢は叶うと信じ切る
・自分より、まず他人の幸せを望む・「愛する存在」で心を強くする
など。
この「のび太メソッド」は、どんなダメな奴でも夢が叶う魔法の法則です。みなさんの人生にも役立つヒントがたくさん詰まった1冊です。
出木杉は勉強もスポーツもできて、おまけに美男子と、完璧すぎる存在です。一見すると欠点がないようにも見えますが、実は彼には大きな欠点があったのです。
それは、相手の感情を読み取ったり、対人関係を上手にすること。それがはっきりと出たエピソードを取り上げてみます。
「出木杉グッスリ作戦」
先生は「出木杉はりっぱだ。テストはいつも100点だし、宿題もきちんとやってくる。みんなも見習いなさい。きょうはたっぷり宿題をだしておく」と言って、今日の授業を終えます。
下校中、女の子たちに「頭がいいのね」と言われ、「たいしたことないよ」と返事をする出木杉。それを見て、ジャイアンやスネ夫は「じつにいやなやつ! あんなやつがいるから、こっちがめいわくするんだ」と気勢を上げ、のび太も「出木杉はぼくらの敵だ!」という意見に同調し、3人で出木杉を妨害しようと思い立ちます。
そして、ジャイアンは出木杉を野球に誘って、宿題ができなくなるまでクタクタにしごいてやろうという案を出し、出木杉を野球に誘います。しかし出木杉が野球を始めると、エラーどころか、超ファインプレー。打てば大ホームラン。女の子たちは「キャー、出木杉さんプロみたい」と絶賛、ジャイアンも「おまえのおかげで勝てた、ごくろう」と感謝する始末です。
野球が終わると大量の宿題が心配になり、スネ夫は3時間、ジャイアンは4時間、のび太は明日の朝までかかると大騒ぎしますが、出木杉は「へいきだよあれぐらい。10分もあればできるよ」とさらりと言い放ちます。
のび太は家に帰ると、ドラえもんからひみつ道具「グッスリまくら」を借ります。一番近い人を眠らすことができるこの枕で、出木杉を眠らせて宿題をやらせない作戦に出ますが、失敗に終わります。その代わりに、ジャイアンとスネ夫だけ眠らせてしまいます。しかも最後は枕が壊れて、逆に寝かせない電波が放出してしまい、それを浴びたのび太は眠れなくなったので宿題をして、気を紛らわすのでした。『ドラえもん(22)(てんとう虫コミックス)』小学館 より
EQ(Emotional Intelligence OnteQuotient)をご存じでしょうか。心の知能を測定する指標とされるもので、相手の感情を読み取る力も、このEQによってどの程度なのかが分かるといわれています。
精神科医の和田秀樹氏はEQの低い人たちを人間音痴と見なし、書誌学者の谷沢永一氏はEQを人間知であると見なしています。したがって、IQとEQのバランスが取れ、高い水準にある人たちが自らの能力を上手に発揮できる存在といえます。
出木杉は、知能指数と呼ばれるIQが非常に高そうです。しかし、「他人の感情の認知能力」や「対人関係処理能力」といった分野では問題がありそうなので、EQはそんなに高くないでしょう。勉強も野球も余裕たっぷりに臨んで難なくこなし、みんなが嫌がっている宿題も大したことはないと言い切る出木杉は、『ドラえもん』の世界でなくとも、敵を作ってしまいそうですから。
どんなに有能でも、周囲の気持ちに配慮できる思いやりや優しさ、柔軟性は重要といえるでしょう。これこそ、出木杉にはなく、のび太にはあるものです。
しずちゃんを射止めたのが、出木杉ではなくのび太であったのは、のび太の優しさの存在が大きかったと、私は考えています。
有能でも、優しさがなければ敵を作ってしまう。
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