防災の日「都内幹線道路97カ所通行止め」をみる:防災・防犯ラボ(3/3 ページ)
9月1日の防災の日、警視庁は都内の道路100カ所(実際は97カ所)で、10分間いっせいに通行を止める訓練を行った。筆者も実際に取材してきた。
初めて命が吹き込まれた「防災型信号機」
環状七号線では、各交差点で都心方向への流入をストップさせる訓練を実施。JR中央線の高円寺駅を降りると、警視庁のヘリコプターが環七上空を飛んでいた。空から状況を確認するのだろう。
早稲田通りと交差する大和陸橋交差点では、警察官が15人ほど、民間の警備員も出て誘導に当たっていた。結構な大人数で当たっている。
午前9時少し前に、規制が始まった。港区愛宕にある警視庁交通管制センターの遠隔操作で、信号の点灯パターンが変化した。
早稲田通り上り(東行き)の大和陸橋交差点信号は通常の「赤→青→黄→赤+右折矢印→赤」のパターンから「赤→赤+左折矢印→黄→赤+右折矢印→赤」のパターンに変わり、直進して都心方向に向かうことができなくなった。交通規制のときのみに点灯する「左折矢印」は「防災型信号機」と呼ばれ、初めて点灯した。
今回の交通規制は例外なしで行われ、路線バスも流入を制限されたため、規制終了まで左折して側道で待機する措置がとられた。大きなクラクションが鳴り続ける。見ると白いBMWが環七内回りに右折しながら鳴らしていた。「抗議」しているのだろうか。
意外と少なかった規制中の渋滞
10分間の規制で、渋滞はどのくらい伸びたか。早稲田通り上り線の渋滞を見ると、規制開始よりも短くなっていたのはちょっとした驚きだった。規制開始直前までは、この時間の渋滞としてはやや長いと感じていたので、おそらく規制を避けて、早く都心側に入ってしまおうと考える運転者が多かったのではないだろうか。
先ほど紹介したとおり、東日本大震災直後の大渋滞は、首都高の前面通行止めに始まり、鉄道が止まっていることから迎えに出た車が拍車をかけて全面マヒ状態になった。小さな要因が重なることで、短時間で深刻な渋滞につながるというのが、東京における3.11の教訓だったといえる。
だから地震発生直後の段階で、その要素を摘んでしまうことが必要だ。現在の震度6からの規制という条件を厳しくすることも検討すべきだし、運転者にも状況を見ながらの自重が求められる。このような訓練は年1回だけでなく、もっと短いインターバルで繰り返すことで、自動車のみならず自転車、歩行者に至るまで「交通の一要素」だという自覚をもって行動することが、次に来るだろう首都直下型地震をはじめとする大地震への備えとして必要なのではないだろうか。
なお、これらの交通規制や首都直下型地震を想定した東京都・警視庁・東京消防庁の即応体制については、月刊『東京人』7月号の「首都直下型地震特集」にくわしく書いた。書店ではすでに8月号に切り替わっているが、特集の性格上まだ置いている書店もあるので、ご参照いただければ幸いである。
※この記事は、誠ブログの「高瀬文人の『精密な空論』:防災の日、都内幹線道を100カ所通行止めにする警視庁の『本気』」、「高瀬文人の『精密な空論』:防災の日『都内幹線道路97カ所通行止め』をみる」より転載、編集しています。
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