スマートデバイス導入は担当部門の意識合わせが重要:スマートデバイス導入のお悩み相談室
やらされ感ではダメ。プロジェクトが成功することで、得られることを想像しながら着手しましょう――スマートデバイス導入が成功する鍵は、担当部門の意識合わせが大切です。
本連載「スマートデバイス導入のお悩み相談室」について
スマートフォンやタブレットなどスマートデバイス端末を業務でも積極的に活用したいという現場からのニーズがある一方、管理負荷の問題やセキュリティの不安などから、企業側では導入に踏みとどまるなど、頭を悩ませています。本連載では、そうしたスマートデバイスの業務利用に関する悩みについて、複数社のスマートデバイス導入に携わってきた京セラコミュニケーションシステムの早田麻子(はやた・あさこ)事業部長に、アドバイスをもらいます。
多くの企業では、社内のITシステムを運用管理する情報システム部門が存在します。スマートフォンやタブレットなどのスマートデバイスを導入する際にも、深くかかわってくる部門です。ではそうした部門が、スマートデバイス導入に際して気を付けておくべきことは何でしょうか? 今回はそんな悩みを持つ食品メーカーの情報システム部門、30代女性からの質問です。
今回のお悩み:スマートデバイス導入で、情報システム部門はまず何をすればいいですか?
営業からスマートデバイスの導入を検討してほしいと要望がありました。経営層が乗り気なので、恐らく来年度から本格導入することになりそうです。既に導入した企業の事例などを見ていると、端末管理やセキュリティ対策など、面倒なことが増えそうで、憂鬱(ゆううつ)です。情報システム部門は、まずは何から考えればいいのでしょう?
早田さんの回答:まずは何のために取り組むのか、意識合わせが大切
面倒なことが増えそうで憂鬱(ゆううつ)ですよね。脅すわけではありませんが、想像以上に大変だと思っていた方がいいでしょう。端末管理やセキュリティ対策に加えて、実際にやるべき作業は、想定を超えるほどあります。
ではまず何からする必要があるのでしょうか。それは激務や人の調整など、後から出てくる問題に対応できるメンタリティーを持つことです。何のために自分がこの(スマートデバイス導入)プロジェクトに参加するのか、やらされるのと、スマートデバイス導入によって社員の働き方が変わり、皆がより充実した時間を過ごせる可能性があると期待を持ちながら取り組むのとでは、全然違いますよね。
私は複数社のスマートデバイス導入を支援してきましたが、成功した企業とそうでない企業とでは、スタート時のプロジェクトチームのメンタリティーが結果を左右していたように見えました。
チームの主メンバーとなる情報システム部門は日常、現場の問い合わせ対処など、どちらかというと裏方で苦労をしているかと思います。それが、スマートデバイス導入によって一躍スポットが当たる可能性があるのです。このプロジェクトが成功することで、社員がいきいきと仕事ができ、それが業績につながるとしたらどうでしょう。
スマートデバイスの導入は、これまでのITシステム導入とは異なって、社員の私物端末を利用するなど新しい取り組みができます。企業のコストも下がり、社員の働き方が変わり、充実した時間が増える――自分たちの取り組んだ仕事が企業、そして働いている社員個々の人生を豊かにするプロジェクトなんだと、初めにそう思っている人、またそうした話ができるプロジェクトマネジャーがいれば必ずや成功します。
チームの意識合わせをするには、プロジェクト合宿などコミュニケーションの場を設けてはいかがでしょうか。実際私はプロジェクト合宿を実施してします。ひざとひざを付き合わせながら、リーダーがプロジェクトへの熱い思いを語り、メンバーの気持ちを高める。夜はお酒を酌み交わしならメンバーそれぞれが持つ期待や不安を語り合い、全員で目標を共有しましょう。
プロジェクトチームで意識合わせができたら、後はロジカルにやるべきことを進めていきましょう。スマートデバイス導入の最終着地点の明確化やセキュリティガイドラインの策定、運用ルールの決定です。以上は社内で決めるべき事項で、後の事柄は専門家に相談したり、アウトソースベンダーに聞いたりしながら進めていきましょう。
早田麻子(はやた・あさこ)さん
京セラコミュニケーションシステム(KCCS)ICT第1営業本部ビジネスイノベーション営業統括部事業部長。京都市出身。1994年、同志社女子大学学芸学部日本語日本文学科卒業。同年、山一證券入社。1996年、KCCS入社。1997年、情報通信営業部東京営業部のグループ長に赴任。2001年、首都圏営業1課課長。2004年、IPサービス事業本部 IPイノベーション営業部 部長に就任。2007年、東日本ICT 営業本部 東日本ビジネスイノベーション営業部 事業部長。2011年、組織変更に伴い現在の役職に至る。1女児の母。
スマートデバイス導入に関しては、モバイル通信の普及当初からリモートアクセスサービス事業に携わり、その後MVNO事業の立ち上げに従事。最近は大手企業向けのスマートデバイス導入プロジェクトにもかかわり、その経験を基にスマートデバイス関連のセミナーで数多く講演。自身もモバイル環境を活用して積極的に仕事をこなす傍ら、母親としてのワークライフバランスを実践している。
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