ボーダフォンの業績が下降している。既報のとおり、電気通信事業者協会(TCA)が2月7日に発表した1月の契約者動向で、ボーダフォンは約5万8700契約の純減を記録。2004年12月に新体制を発足させたばかりの津田志郎氏は、わずか2カ月で経営陣の刷新を決断した。現在Vodafone UK社長を務めるウィリアム・ティー・モロー氏を4月1日から新社長に迎え、自らは会長職に就任する(2月7日の記事参照)。
年頭に「反転攻勢」をうたった津田氏だが(1月5日の記事参照)、2004年12月には純増数でツーカーを下回り、今また2004年7月以来となる純減に転落するなど、契約者数の増減で見れば状況はかえって悪化している。津田氏は現状をどう認識しているのか、そしてなぜ、モロー氏の力が必要なのか。2月7日に開かれた緊急記者会見でその答えを探った。
いまから半年前、社長就任にあたり津田氏が早期に取り組むべき課題として挙げたのが「2Gサービスから3Gサービスへの移行」だった(2004年8月16日の記事参照)。実際、9月には冬商戦向け3G端末7機種が発表され(9月22日の記事参照)、これが状況改善のきっかけになるはずだった。
しかし、11月〜12月のクリスマス商戦をターゲットにした7機種は、「902SH」が12月29日に発売(関東・甲信以外では1月8日発売)され、「802SH」が1月14日の発売。「802N」に至っては2月4日に発売されるなど(携帯データBOX参照)、リリース時期が遅れた。
「もうちょっと早く投入する予定だった。予定よりズレてしまった」(津田氏)。期待の3G端末は、投入開始からいきなりつまずいた。
プリペイド端末への逆風もあった。プリペイド携帯が犯罪に悪用されるケースが増えていることを受け、総務省がプリペイド携帯の本人確認で新制度を導入(11月30日の記事参照)。「プリペイドのネガティブな面が強く(強調される結果に)なってしまった」(同)。この結果、1月には全体としての販売台数が少なくなってしまったという。
今回の人事は、現体制では好転が望めないと判断して、テコ入れを図ったもの。COOを務めていたデイビッド・ジョーンズ氏は退職してVodafone本社に戻る。新たにウィリアム・モロー氏が来日して、代表執行役社長の座に就く。
社長職を退いた津田氏だが、経営の一線を退くわけではない。自身は代表執行役会長に就任し、モロー氏と2頭体制を築く考えだ。明確なトップを示す“CEO”のポストは置かない。「トップは誰かと言われれば……『社長はモロー氏だ』と答えざるをえない」(ボーダフォン)。津田氏は、「二人三脚」の関係を強調している。
実は、今回の人事は津田氏が望んだものだという。モロー氏はかつて日本テレコムホールディングスの社長を務めており、日本市場に詳しい。「(社内の)人気も高く、私との意見の食い違いもない」(津田氏)。このため、「モロー氏に戻っていただき、私とパートナーを組ませてもらえないかと(VodafoneグループのCEOである)アルン・サリーン氏にお願いし、聞き入れてもらった」。
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