衝撃の人事――ボーダフォン新社長は、元ドコモの津田氏

» 2004年08月16日 18時35分 公開
[杉浦正武,ITmedia]

 ボーダフォン新社長は、元ドコモの“社長候補”と呼ばれた人物だった。

 既報のとおり、ボーダフォンホールディングスおよびボーダフォンは8月16日、津田志郎氏をボーダフォンの代表執行役社長兼CEOに任命する人事を決定したと発表した。12月1日付けで社長に就任する。同氏は過去に、ドコモの副社長を務めている。

photo 握手する津田氏と、ボーダフォン取締役会議長のブライアン・クラーク氏

 6月23日にダリル・E・グリーン氏が「一身上の都合」により社長を辞任して以来(6月23日の記事参照)、正式な後任の社長は空席となっていた。ここへ新たに、ライバル企業であるドコモの要職にあった津田氏を迎える。

津田氏の過去と、ボーダフォン入社の理由

 津田氏はボーダフォンの社長に就任する理由として、「ボーダフォンの経営陣が移動体通信を好きで、その熱意に感銘を受けた。また、自分のこれまでの経験を高く評価してくれた上、自分もボーダフォンに貢献できると考えた」と話している。

 だが、これを言葉どおりに受け取る人間は少ないだろう。同氏はかつて、“ドコモの次期社長就任が確実”ととりざたされたという過去を持つ(4月8日の記事参照)。ふたを開けてみれば、実際に社長に昇格したのは中村維夫氏。これと時期を同じくして、津田氏は副社長を退任、6月にドコモエンジニアリングの社長に就任している(6月18日の記事参照)

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 会場からは、津田氏のボーダフォンへの転身は「ドコモへの意趣返しの意味もあるのではないか」との質問が飛んだ。これに対し津田氏は、「記者の方にすれば、(そういう解釈をすれば)記事として面白いかたちで書けるかもしれない」と釘をさしつつ、「そういうわけではない」とコメントする。

 「(長年勤めた)ドコモへの思いは深く、それは変わるものではないが、ボーダフォンにはさらなる成長という意味で貢献できるのではと考えた」

 報道陣からは、重ねて「なぜドコモの副社長を務めた人材が、ドコモエンジニアリングという子会社の社長になり、その後グループを出ることになったのか」を問う声も上がった。

 津田氏の答えは「それは、私に対してというよりはドコモに聞いてほしい。そもそも(ドコモの社長候補という話題は)マスコミが過大に記事にしたこと」。

 そうしたいきさつと、今回のボーダフォン社長就任を関連付けて考えられるのは「心外だ」とした。

Photo ボーダフォンの取締役会議長、ブライアン・クラーク氏。津田氏の社長就任は「ポジティブな選択」であり、同氏が「過去にどのようなことがあったにせよ、我々の候補だった」と強調した

ボーダフォンの現状への認識

 ボーダフォンの業績は、決して順風満帆というわけではない。同社側は「一過性の現象」と説明するが、電気通信事業者協会(TCA)が発表した資料では、同社の契約者数は7月に純減を記録している(8月6日の記事参照)

 事業が必ずしも好調ではない理由を、津田氏は「私自身、それほど(社内の)細かい情報をつかんでいるわけではない」と断った上で、W-CDMAのスケジュールが遅れていることを指摘する。

 「グローバルで少しスケジュールが遅れており、それが日本にも影響している。2Gから3Gへ切り替えるという通信方式の転換期にあって、厳しい数字が出ているのではないか」

 津田氏は、ドコモ時代はIMTネットワーク推進室長を兼務し、ドコモの3Gサービス開始に向けた準備を指揮した経歴を持つ。ボーダフォンの現状は「いくつかの施策で改善を図れる」ものであり、「その中で私が貢献できる点もある」と力強く宣言した。

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