携帯電話用メモリカード普及の先にある「ケータイビデオ」の可能性神尾寿の時事日想:

» 2005年02月08日 09時09分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 インフォプラントが運営するインターネットリサーチサイト「C-NEWS」によると、調査対象者の5割弱が携帯電話でメモリカードを活用していたという(2月7日の記事参照)。携帯電話は現在、急速にコンパクトデジタルカメラ市場を浸潤しており、その結果がこの数値に表れたのだろう。ファミリーユーザー層に絞った筆者のユーザーヒアリングでは、携帯電話を「簡易型ビデオカメラ」として気軽なホームムービーの撮影に使っているという声も聞かれた。今後、日常利用のカメラ、ムービーとして携帯電話が使われるようになると、それに伴って小型・大容量メモリカードのニーズも増大するだろう。

 もう1つ、筆者が携帯電話向けメモリカードの追い風だと考えているのが、DVD+HDDハイブリッドレコーダーの普及である。

 JEITA(電子情報技術産業協会)の資料によると、04年に出荷されたDVDレコーダーは407万1000台。そのうちHDD内蔵タイプは317万8000台である。昨年のオリンピック特需のあとも、メーカー間の競争激化による値下がりもあり、DVD+HDDハイブリッドレコーダーは売れ続けている。今後、ホームVTRの市場がハイブリッドレコーダーにシフトしていくのは間違いないだろう。

 ハイブリッドレコーダーの普及は、ユーザーのテレビとの接し方を変化させる。ハイブリッドレコーダー所有者へのヒアリングと追跡調査によると、ハイブリッドレコーダー購入者は、VTR時代よりも積極的にテレビ番組を録画する傾向にある。これはEPGによる簡易な録画設定と、内蔵ストレージですべてをまかなうHDD録画の気軽さゆえである。また、ソニーの「スゴ録」や「PSX」の“おまかせ・まる録”機能のように、ハイブリッドレコーダーはリライタブルが容易で大容量なHDDの特性を活かした「自動録画」の方向へ進む可能性が高い。

 そうすると生じるのが、大量に撮りためた番組を「いつ観るのか」という問題である。実際のハイブリッドレコーダー所有者の声でも、「(録画した)番組を見るヒマがなくて、結局、削除してしまう」という意見は多く聞かれた。

 ハイブリッドレコーダーの普及が、テレビ以外にも、撮りためた番組の「出力先」を求める事になる。その先に、小型・大容量メモリカードを使った「携帯電話でのビデオ視聴ニーズ」があるだろう。これは携帯電話キャリアのビジネスにとってあまりメリットがないが、デジタル家電と携帯電話の連携として、もっともユーザーに分かりやすい機能の1つになる。メーカーの努力に期待したい。

神尾寿

通信・ITSジャーナリスト。IT雑誌契約ライターを経て、業務委託で大手携帯電話会社のデータ通信ビジネスのコンサルティングを行う。1999年にジャーナリストとして独立。移動体通信とITSを中核に通信が関わる分野全般を、インフラからハードウェア、コンテンツ、ユーザーのニーズとカルチャーまでクロスオーバーで取材している。ジャーナリストのほか、IRICommerce and Technology社レスポンスビジネスユニットの客員研究員も努める。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.