NECとNECエレクトロニクスは2月7日、携帯電話や情報家電端末向けに、1つのプロセッサの中で複数のCPUコアを配置した、マルチコアプロセッサ技術を開発したことを発表した。米国サンフランシスコで2月6日から10日まで開かれるISSCC 2005でこの技術を発表する。
携帯向けCPU「MP211」は、この技術が使われた最初のCPUだ。最大200MHz動作のARM9(926)コアを3個搭載し、並列動作を行える(2004年9月27日の記事参照)。
3つのCPUコアのそれぞれにLinuxベースのOSが載っており、複数のアプリケーションを同時に実行できるが、CPUコアは仮想化されているため、アプリケーションからは1つのCPU上で動作してるように見える。OSやアプリケーションを書き直すことなく、従来のLinux用のものをそのまま使えるのがポイントだ。
MP211については、2004年9月に発表済みだが、この日は製品レベルのプロセッサを用いてデモが行われた。
携帯電話の高機能化や多機能化に伴い、組み込み用CPUには『多用なサービスを利用したい』『バグやウイルスに強く』『プラットフォーム化したい』『消費電力は小さく』など、さまざまなニーズが出てきている。
CPUのマルチコア化を推進する理由について、NECシステムデバイス研究所長の福間雅夫氏は「高速化や多用な処理、端末のプラットフォーム化といったニーズには、処理能力の高い汎用CPUで応えられる。逆に低消費電力、高いセキュリティといったニーズは、組み込みプロセッサが強いところだ。マルチコア化することで、汎用CPUと同じ性能を、低消費電力で実現できる。例えば1GHzのCPUを1つ使った場合の処理性能は、333MHzのCPUを3つ並列処理することで得られるが、周波数の低いCPUを使ったほうが電圧が低くて済むため、結果として全体を低電力化できる」と説明した。
マルチコア化のメリットはほかにもある。例えば端末の基本機能(プラットフォーム)用、テレビ機能などの付加機能用、ダウンロード処理用を分け、別々のCPUに搭載する。CPUコアを減らせばコストを削減できるので、ローエンド端末にはプラットフォーム部分のみを載せ、フラッグシップモデルにはCPUコア3つすべて載せることにすれば、プラットフォーム部分はそのままに、廉価版と多機能モデルと2機種展開することも簡単だ。また、プラットフォーム部分以外のCPUに付加価値機能を搭載すれば、企業向けのオーダーメード端末なども設計しやすい。
また、ユーザーが自由に追加したソフトなどを独立したCPUコアに処理させることにより、ウィルスなど悪意のあるアクセスから端末を守ることができると説明した。例えばインターネットからダウンロードしたソフトによってウイルスに感染して不具合が起こったとしても、CPUが独立していれば基本機能部分には影響がないとする。
発表会では、1月26日に発表した、携帯電話で音声認識を行うデモと、地上デジタル放送の受信をしながら、Javaで書かれたRSSリーダーを同時に実行するデモが行われた。
NECでは、各CPUコアの消費電力や電圧、使用するメモリなどを動的にコントロールできるマルチコアDVFS(Dynamic Voltage and Frequency Scaling)用のクロック&バス技術の研究も進めており、さらに低電力化を進めたいとしている。
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