NECエレ、マルチコア搭載の携帯向けアプリCPU

» 2004年09月27日 16時44分 公開
[斎藤健二,ITmedia]

 NECエレクトロニクスは9月27日、3つのCPUコアを搭載した携帯電話向けアプリケーションプロセッサ「MP211」を開発したと発表した。

 高速シングルコアではなく、200MHz程度のCPUを並列処理させる。それにより高速処理と低消費電力を実現し、さらに従来のアプリケーション資産の流用が容易になるというメリットをうたう。2005年1月からサンプル出荷を開始し、価格は1個5000円。2007年度までに月産100万個規模の量産を行う計画だ。

3CPU搭載でスケーラブルに

 MP211の特徴は、最大200MHz動作のARM9コアを3個搭載し、並列動作させられるところにある。必要とされる性能に応じて利用するCPU数を変更することで、低消費電力と高パフォーマンスの両立を狙った。

 「1GHzのCPUを載せるのではなく、300MHzを並べて処理を分散させる。普及機から高性能機まで対応できる、スケーラブルなソリューションだ」(同社第三システム事業本部長 兼 第四システム事業本部長の小坂秀敏氏)

 同社は英ARMと提携して、マルチプロセッシング対応コア「MPCore」を開発しているが(2003年10月20日の記事参照)、MP211はその前段階といえるものだ。

CPUとDSPは、アプリケーションによって利用構成を変更できる。メディア処理を重視する場合は、2CPUとDSPをメディア処理に使い、基本機能は1CPUで行う。重いアプリケーションを動作させる場合は、アプリ処理に3CPUを使い、メディア処理はDSPのみで行う

 3つのCPUのほか、音声/動画などのメディア処理用にNEC製のDSPを搭載。携帯電話向け地上デジタルテレビ放送(1セグ)で使われる符号化方式H.264を、ソフトウェアで処理できる。

 同社モバイルシステム事業部長の山品正勝氏は、「H.264のソフト処理ができるのは弊社だけ。早送りなどの高機能化が容易にできる」と、ハードウェア処理に対する利点を説明した。

 また地上デジタル放送の受信やテレビ電話などの消費電力が、1CPUの通常のアプリケーションプロセッサと比べて約3割低減できるという。H.264処理など、最も重い処理を行う場合で、消費電力は約100ミリワットとなっている。

H.264をソフト処理で再生しながら、Javaの動作を並列で行うデモ。複数のCPUコアを別々のアプリケーションに割り当てることで、負荷分散を行う
2D/3Dのグラフィックエンジンのほか、暗号化を行うハードウェアエンジンMSE(モバイルセッキュリティエンジン)も搭載する。昨今のアプリプロセッサのボトルネックとなっていたバスも、新開発のバスアーキテクチャを採用。3つのCPUとDSPが1つのメモリを共有し、転送速度はGbpsクラスだという。チップは、64MバイトのDDR SDRAMをスタックしたSiP(システムインパッケージ)で提供される。製造プロセスは0.13μm

既存ソフトを流用可能に〜開発効率アップ

 3CPUのもう一つのメリットは、既存のアプリケーション資産を容易に流用できることだ。「既存アプリケーションは1つのCPUで動作させ、新規アプリケーションは別のCPUに実装する」(山品氏)ことができ、新規アプリケーションに集中して不具合検証を行える。

 また同社が開発したCPUの抽象化レイヤーソフトにより「複数のCPUを1つのCPUに見せる」(山品氏)ことが可能になっている。

 これらのミドルウェアは、現状Linux OSのみに対応しているが、Symbian OSなどへの対応も可能だという。

 こうした仕組みにより、ソフトウェア開発行程が半分から3分の1程度に減ると、同社では想定している。

将来はARM11コア〜SMPに

 CPUコアは、来年の次世代機ではARM11コアに変えていく予定だ。併せて、製造プロセスも90ナノメートルへ移行していく。

 また今回は、「現状、ARM9コアで性能要求を満たせた」という理由からMPCoreを採用していないが、将来はMPCoreを使い、SMP(対称型マルチプロセッサ)に対応していく計画となっている。

 現在、NECの3G携帯電話は、アプリケーションプロセッサに米TIのOMAPを使っているが(1月28日の記事参照)、将来MP211に変更していくかは未定。NEC モバイルターミナル事業部長の田村義晴氏は「並列CPU技術は、今後のアプリケーション拡張を行う上で重要な技術の1つと考える。特に、高性能、低消費電力を同時に実現できる技術として、またLinux OSを搭載したプラットフォームとして期待できる」とコメントしている。

 同社は、日本や韓国を当初のターゲットとして販売し、続いて欧州市場を狙う計画だ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年02月10日 更新
  1. 「iPhoneの調子が悪いです」の文言、なぜアイホンのFAQに? 実はAppleと深く関係 (2026年02月08日)
  2. 総務省有識者会議が「手のひら返し」な我が国への示唆――日本を国際標準から遅れさせたのは自らの愚策のせい (2026年02月08日)
  3. 「東京アプリ」で1.1万円分をゲット、お得な交換先はどこ? dポイント10%増量+楽天ペイ抽選が狙い目か (2026年02月05日)
  4. KDDI、楽天モバイルとの「ローミング重複エリア」を順次終了 松田社長が言及 (2026年02月06日)
  5. 楽天モバイル、1000万回線突破も残る「通信品質」の課題 5G SAの早期導入とKDDIローミング再延長が焦点に (2026年02月07日)
  6. Googleが台湾のPixel開発拠点を公開 「10 Pro Fold」ヒンジ開発の裏側、“7年サポート”を支える耐久テスト (2026年02月09日)
  7. 東京アプリ、PayPayがポイント交換先に追加される可能性は? 広報に確認した (2026年02月05日)
  8. ソフトバンク、短期解約を繰り返す「ホッピングユーザー」を抑制 その理由は? (2026年02月09日)
  9. 東京アプリ、PayPayとWAON POINTをポイント交換先に追加 交換時期は「決まり次第案内」 (2026年02月09日)
  10. 「小型iPhone SEを復活させて」──手放せない理由SNSで話題 どこが“ちょうどいい”と評価されるのか (2025年11月29日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2026年