2月16日、ゼンリンとゼンリンデータコムがGIS(地理情報システム)アプリケーション「OA-Light III」の発表会を開催。その席上で同社のデジタル地図ビジネスの現状と将来の展望が語られた(2月16日の記事参照)。ゼンリンによると、デジタル地図の需要は官公庁から民間企業まで高まっており、「2007年には(第3世代)携帯電話にGPS機能が標準搭載される動きもあり、裾野の拡大が予想される」(ゼンリン)という。
デジタル地図市場の広まりとともに重要なのが、デジタル地図の高密度化・高付加価値化である。分かりやすい例としてはカーナビケーションがある。現在のカーナビは道路の高低差まで加味した位置測位や、車線別の規制情報に基づいたルート案内を行っている。これらの機能を実現するため、カーナビ用のデジタル地図は進化し、今では「高低差情報」や「車線別情報」が含まれるようになった。本来は2次元の地図に立体的に付加価値情報が載り、高密度化しているのだ。
2004年には、パイオニアとソニーが街の景観をCGで再現する機能を搭載した。この機能を実現するために、実際の街並みをカメラで撮影し、デジタルスキャンされた「構造物情報」が地図に含まれるようになった。今後、カーナビはクルマの先進安全装備や快適装備とも連携していくが、それを実現する上で重要なのが「正確で、情報密度の高いデジタル地図」である。
また、歩行者向け情報サービスにおいてもデジタル地図は重要だ。「歩行者ナビゲーション」はまだ発展途上だが、それは歩行者が求めるリアルワールドの情報に対して、デジタル地図の情報量が圧倒的に少ないからだ。カーナビならば道路とロードサイド施設の情報があれば一応の満足感が得られる。しかし歩行者は、クルマよりも多様なルートを歩くことができる上に、移動中に可能な行動の選択肢が多い。おのずと周囲に求める情報も増えることになる。例えば最近ならば、「明るくて人通りが多く、安全な道が知りたい」というニーズは多いだろう。しかし、現在のデジタル地図ではそういった情報は知りようがない。
今回、ゼンリンが展示した「歩行者用ナビゲーション」では、道路(車道)中心の考え方だった従来のナビゲーション地図から一歩踏み出し、歩道や地下通路、公共施設の建物内通過など、歩行者の視点に立った地図作りを行った。このようなデジタル地図の高密度化ができるのは「約27万人の調査員による実地調査体制のたまもの」(小袋克美・ゼンリン営業本部企画推進部課長)だという。
「地図師があまりに正確な地図を描くと、地図は街と同じ大きさになってしまう」──古くから伝わる地図のジレンマは、デジタル化と検索技術の発達で乗り越えることができた。携帯電話の進化が、デジタル地図のポータブル化も可能にした。“街と同じ大きさのデジタル地図”はリアルワールドの情報化で欠かせない要素であり、その完成は様々な新ビジネスの礎になるだろう。
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