2月22日、ソニーがPalm OS搭載PDA「CLIE」シリーズの新機種投入を終了すると発表した(2月22日の記事参照)。同社は、2000年に投入した「PEG-S500C」「PEG-S300」の頃から一貫して、斬新なアイディアとエンタテイメント性あふれるユニークなPDAを開発。ビジネス分野で今ひとつパッとしなかった日本のPDA市場に対して、コンシューマー分野から切り込もうとした。だが、その試みは、残念ながらうまくいかなかったようだ。
苦境にあるのはCLIEだけではない。IDGが2月2日に発表した統計によると、10〜12月期の世界PDA出荷台数は前年同期より18.7%減って280万台となり、4四半期連続で前年より減少したという。PDA市場は縮小傾向にあり、ソニーに続いて、他のメーカーが「PDA撤退」をいつ表明してもおかしくない状況だ。
PDA市場は今後どうなるのだろうか。欧米では、ホワイトカラーを中心にPDAのビジネス利用に一定量のニーズが存在し、それを昇華・吸収する形でスマートフォンが普及し始めている。PalmOSやWindows CEといったPDA向けOSは進化の方向性をスマートフォンに定めており、携帯電話から発展したシンビアンOSとともに、この分野のニーズを開拓している。PDAの後継者としてスマートフォンが擁立され、ビジネス分野におけるモバイルソリューション市場の拡大と歩調を合わせながら、順調に発展している。PDA市場の縮小は世界的な動きだが、海外のそれはモバイルソリューション市場の主役をスマートフォンにバトンタッチしているからだ。
一方、日本市場では、既存キャリアは欧米型スマートフォンのニーズに懐疑的だ。これまで築き上げたコンテンツ流通モデルの観点では、その存在に否定的ですらある。日本の携帯電話市場はコンシューマーニーズの開拓と著作権コンテンツの流通によって発展してきただけに、スマートフォンの可能性に対して、キャリアの見方が厳しいものになっている。
しかし、今後のモバイルソリューション市場の拡大を考えると、現在の「コンシューマー向けパッケージ」の使い回しが、今後のビジネスシーンにおいても最適であるとは言い難い。PDAが不振だったからといって、その先のスマートフォンのニーズや市場が限定的だと判断するのも危険だろう。
近い将来、モバイルソリューション市場の発達に伴って、ビジネス利用を前提に作られたスマートフォンの必要性が高まる可能性がある。
ドコモやボーダフォンは、海外メーカー製のスマートフォンを法人市場向け端末として輸入する方針である。しかし、操作性や求められる機能の点で、海外製スマートフォンが日本において最良の選択かというと疑問が残る。世界で標準的な汎用OSを使いながらも、操作性や機能では日本市場に合わせた作り込みが必要だ。
日本のキャリアとメーカーは「日本市場向け国産スマートフォン」を模索する必要があるのではないだろうか。コンシューマー分野で世界に先駆けたように、ビジネス分野のスマートフォンでも、世界に先駆けるくらいの気構えがほしい。
そのためには、キャリアはスマートフォンの可能性について、もう少し公平な視点を持つべきだ。そして、長期的な視野から、「日本製スマートフォン」の端末およびサービス開発に取り組む必要があるだろう。
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