フェリカネットワークスに聞く「モバイルFeliCaの2005年」：神尾寿の時事日想（3/3 ページ）

[神尾寿，ITmedia]

地域格差の問題にどう対応するか?

神尾 モバイルFeliCaへの対応では、JR東日本のモバイルSuicaなど都市部では積極的ですが、地方での対応は不十分だと思います。携帯電話は全国均一的なサービスとして発展してきましたが、FeliCa携帯に関して言えば「地域格差」が生まれている。この問題にどう対処されますか?

河内 モバイルFeliCaのソリューションはリアル社会が関わっているだけに、（FeliCaで）先行していた東京圏など都市部と、地方との間に格差が生じてしまいます。これは当初から認識していた部分です。端末は（FeliCa携帯への機種変更で）自然と増えていくわけですから、実際に「かざす場所・使える場所」を増やしていくのが急務だと考えています。

神尾 具体的な方策は？

河内 まず最初の段階として重要なのが、モバイルFeliCaを理解し、広めてくれる地方のSI企業とパートナーシップを作ることです。先ほどご紹介した16社の提携企業の中に、地方在所や地方を網羅できるSI企業が含まれていますし、フェリカネットワークスの中でも地方のソリューションをバックアップする体制を作っています。また、インターネットのホームページで利用できるサービスとして「かざポン」を無料で用意しています（2004年11月15日の記事参照）。地方のリアル店舗を増やすとともに、インターネット側からのアプローチで利用を促進したいと考えています。

神尾 地方で利用できる場所というのは、どういった分野から開拓されるのでしょうか。

河内 電車やバスなど公共交通へのアプローチが1つですね。あとは地方の流通の要となる場所です。

神尾 地方の流通は、コンビニと大規模ショッピングモールが中心です。そこをピンポイントで狙っていくということでしょうか。

河内 コンビニエンスストアへの展開は全国規模の取り組みとして継続していきますし、（地方経済における）大規模ショッピングモールの重要性は認識しています。地方の流通の核となる大多数のショッピングモール事業者と、すでにお話し合いをさせていただいています。

神尾 地方経済の「動線」ともいわれるロードサイドビジネスへの展開はいかがですか。

河内 道路に沿った形での集中展開というのは、まだ着手していません。しかし、クルマの重要性は理解しており、すでに複数の自動車メーカーに（モバイルFeliCaを）検討していただいています。

今後のモバイルFeliCaにおける障壁

神尾 ここまでのお話を伺っていると、モバイルFeliCaは順調に伸展しており、順風満帆な印象を受けます。逆に、将来のモバイルFeliCaにとって障害や死角になるようなものはないのでしょうか。

河内 リアル店舗のモバイルFeliCa対応における、従来のシステムの存在が障壁になっていますね。多くの事業者にモバイルFeliCaの有用性を認めていただいているのですが、旧来の業務用システムがボトルネックになってモバイルFeliCa導入に時間がかかっているケースが多くあります。これらの業務システムは、ずいぶんと昔に作られていたり、システムの拡張や改変が"つぎはぎ"のように繰り返された結果、モバイルFeliCaのような新システムへの対応が難しくなっている。メリットは理解されているのに、導入が難しい。現在、モバイルFeliCa対応でスタックしている案件の多くが、この問題を抱えています。

神尾 その障壁にどのように対応されますか?

河内 リアルな事業者の皆さんには、それぞれ投資のタイミングがありますので、それにあわせるような形での対応になっていきます。特に流通分野ではPOSレジの入れ替え時期がありますから、そこでのモバイルFeliCa対応、という事になるでしょう。

神尾 中小規模の事業者では対応に時間がかかりそうですね。

河内 いや、そんなことはないんですよ。逆に地域密着型で2〜3店舗で展開されているような事業者の方が、システムの規模が小さい分、改修や変更が容易なケースが多い。むしろ大規模に展開されている事業者の方が、システム規模も巨大ですから、特に古いものだと対応に時間がかかる場合があります。

神尾 最後に読者に対するメッセージを頂けますか。

河内 我々は（モバイルFeliCaが）新しいライフスタイルと産業を創出するという確信を持って事業をやっています。もし、“ケータイでFeliCa”という体験をされていない方がいましたら、是非お試しいただき、そのメリットと可能性を実感していただきたいと考えています。

神尾 ありがとうこざいました。