日本の2G携帯電話塩田紳二のモバイル基礎講座 第2回(2/3 ページ)

» 2005年03月22日 22時42分 公開
[塩田紳二,ITmedia]

 このTDMA-FDD方式は、2G携帯電話の主流となる方式です。たとえば米国でIS-54と呼ばれているものや、世界中で広く使われているGSMなどもTDMA-FDDに分類されます。しかし、音声をデジタル化する方式や転送レートなどがそれぞれ違っています。

 音声をデジタルデータに変換するやり方を「コーデック」といい、単に音声をデジタルに変換するだけでなく、さまざまな処理をしてデータを圧縮します。圧縮することで、一定時間内に送るデータを減らすことができ、1つの周波数を時間で区切り、複数の端末が同時に接続できるわけです。ただし、音声をいったん蓄積してそれから圧縮などを行うため、どうしても時間のずれができてしまいます。

 どうして圧縮するのかという理由は、もう1つあります。一定時間内に送るデータが少ないと、通信のための回路を高速で動作させる必要がなく、また、無線部分も高速通信を行う必要がなくなります。このため端末や基地局のコストを押さえることができました。たとえば、データレートが高いということは単位時間あたりに処理しなければならないデータが多いことを意味します。そうなると、よりコストが高くなる高いクロックのCPUを使わねばなりません。

フルレートとハーフレート

 PDCでは、VCELPと呼ばれる米Motorolaが開発した方式が使われていました。時間を3分割することで3つの端末が同時に接続が可能で、これをフルレートと呼びます。しかし契約者が増えてきたため、後に同時に6端末の接続が可能なハーフレート方式のコーデック(NTTが開発したPSI-CELPという方式)に切り替わりました。この方式だと、1つの周波数で同時に6端末が接続になるのです。しかし、音が悪く上に遅延が大きくなるので、評判はあまりよくありませんでした。

 そこで、対策のために登場したのが、状況を見てレートを上げる「ハイパートーク」と呼ばれる方式です。ただしフルレートになるのは、基地局に余裕があり、かつ相手が固定電話や同じハイパートークに対応した端末の場合だけです。

 PDCの場合、周波数を25kHz単位で分割し、この範囲を3つまたは6つの端末で同時に使うわけです。例えばハーフレートでは時間を6つに区切って、6つの端末が順番に送受信を行います。PDC方式でいう「TDMA-FDD」とは、端末同士の多重化は時分割(TDMA)で、送信と受信は、周波数を分けて(FDD)行うという意味てす。

 PDCを使うのは、NTTドコモ、ツーカー、ボーダフォンです。ただしNTTドコモだけが、電電公社時代からの割当てを引き継ぎ800MHz帯、ツーカーやボーダフォンなどは1.5GHz帯を使っています。また、NTTドコモは、PDCを使い、1.5GHz帯でシティフォンという別サービスを行っていました。これは、周波数帯を分けることで利用者が集中する都市部などでの混雑を緩和するためでしたが、現在では通常のPDCサービスで混雑を緩和するために利用されています。

cdmaOneの優位性

 現在使われているもう1つの2G方式は、米国仕様のIS-95を利用した、「cdmaOne」と呼ばれる方式です。このため、cdmaOneを採用する携帯電話は、若干の仕様変更で他国地域での利用が可能になります。ただし世界の多くの国では、自国内で利用できる無線機器に認定が必要になっています。これは、有線機器と違って無線機器には、ほかの通信に妨害を与える可能性があるため、各国とも自ら定めた仕様に合致しているかどうかを認定しているためです。従って、cdmaOne方式を採用し該当国の仕様に合った携帯電話機であっても、該当国で認定を受けた機器のみが利用できます。この認定を取るのは簡単なことではなく、特定の電話機のみ(auの場合には、グローバルパスポート対応機種のみ)利用ができます。もう1つ、日本の携帯電話会社と該当国の携帯電話会社とがローミング契約を結んでいなければなりません。

 このcdmaOneは、CDMA-FDDというカテゴリになり、PDC同様に上りと下りで違う周波数を使います。ただしPDCと違い、同一周波数を複数端末で利用するのに時間で分割するのではなく、送信するデジタルデータと「拡散コード」と呼ばれるデータを掛け合わせて送信します。拡散コードとは一定のパターンからなるデジタルデータで、これを端末ごとに違う拡散サードを使うことで同一周波数であっても、受信側では、個々の端末からの送信を区別することができます。

 また、TDMA方式などでは、利用可能な周波数帯を細かく区切って使います。PDCの場合には、25kHz幅で周波数を区切り、その中をTDMA技術により、3つまたは、6つの端末で同時に利用します。

 これに対してCDMAでは、利用可能な周波数帯をこまかく分けることなく、1.25MHzという広い範囲を同時に利用します。この範囲の中で64個の通信を同時に行えます。ただし実際に携帯電話が利用できるのは、このうち55個。つまり、55台の端末が同時に通信できます。

CDMA方式では、元データと拡散データを合成して送信するデータを作る。受信側では、パターンから端末を区別し、元データを再現する(上)、端末ごとに違うパターンを使うことにより、同じ周波数を複数の端末、基地局が同時に利用できる(下)

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