電波で情報を送れる仕組み 2塩田紳二のモバイル基礎講座 第6回(2/3 ページ)

» 2005年06月15日 09時21分 公開
[塩田紳二,ITmedia]

周波数拡散(FS)と直接拡散(DS)

 一般にスペクトラム拡散変調には「周波数拡散(Frequency Spread:FS」と「直接拡散(Direct Spread:DS)」2種類があります。

 周波数拡散は、搬送波の周波数を変化させる方式です。一次変調された搬送波の周波数を時間に応じて変化させていき、帯域を拡大します。これには、飛び飛びの周波数を使う「周波数ホッピング」(Frequency Hopping:FH)と連続した周波数で変化させるチャープ変調(CHarp Modulation)があります。

周波数ホッピング(左)とチャープ変調(右)

 この方式では、一次変調した信号を次々と変化する搬送波に対して変調を行います。前者は、802.11a/g無線LANやBluetoothなどが採用している方式で、後者は、レーダーなどで使われていました。この方式では、周波数が変化するため、周波数によって発生する干渉などの影響を受けにくくなります。前回解説したマルチパスは、波長により干渉が発生する場所が変化します。このため、ある周波数では、マルチパスにより信号が弱くなっていても、別の周波数でも弱くなるとは限らず、強め合う場合もあります。

 直接拡散は、PSKなどで一次変調した信号をさらに、拡散コードと呼ばれる特殊なビット列を使って2次変調するもので、この拡散コードによる変調は、ベースバンドよりも高い周波数(高い転送レート)で行われるため、結果的に占有周波数帯域が広がります。

 拡散コードは、擬似ランダム信号(あるいは擬似雑音信号。PN:Psudo Noiseともいう)とも呼ばれるデジタル信号で、一次変調した信号にこのPN信号を掛け算すると、細かく変化する信号が作られ、結果的に広い帯域を占有するようになります。

 この処理を「拡散」といい、これを元に戻すことを「逆拡散」といいます。処理としては拡散も逆拡散も同じで、受信信号に対してPN信号を掛け算します。ただし、受信側ではPN信号を掛け算するタイミングは、送信側と合わせなければなりません。これがずれていると、結果がゼロになってしまうため、判別は容易です。受信側で送信側と同じタイミングを見つけることを「同期」といいます。もし、受信信号にノイズが入ってしまっても、逆拡散のときにノイズは、全体に拡散されてしまうため、受信信号への影響が小さくなります。これが混信などに強い理由です。

転送する信号を一次変調した信号(ここではPSK信号)に、さらにPN信号を掛けるのが拡散処理。逆拡散の時も同様にPN信号をかけることでPSK信号に戻せる

「チップ」とは?

 PN信号は、一見、ランダムに変化しているように見えるバイナリデータです。計算の関係から、PN信号は、1とゼロではなく、1と-1から作られます。直接拡散では、送信側、受信側が同じPN信号を使います。受信した信号に対してPN信号を掛け算すると、二次変調する前の信号を得ることができます。ただし、このためには、送信時と同じタイミングでPN信号を掛け算しなければなりません。

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