連載
» 2005年06月23日 12時03分 公開

携帯汎用OSがもたらす変化神尾寿の時事日想

SymbianやLinuxなど、汎用OSを携帯電話に搭載する動きが世界的なものになってきている。現在はハイエンド端末への搭載がほとんどだが、長中期的なニーズはむしろ「コスト削減」だ。

[神尾寿,ITmedia]

 6月22日、英Symbianの新CEOナイジェル・クリフォード氏の来日記者会見が行われた(6月22日の記事参照)

 同社は3G分野でリードする日本市場を重視しており、富士通、三菱、シャープ、ソニーエリクソンがSymbian OSの採用を決めている。Symbian OSやLinuxなど携帯電話向け汎用OSの採用に向けた動きは、ここにきて加速してきている。ひとつには3G分野への移行が進み、ハイエンド端末を中心に「高機能化」が進んできているためだが、中長期的なニーズは「コスト削減」と「開発スピードの向上」にある。

 このニーズが特に強いのが、NTTドコモをはじめとする携帯電話キャリアだ。

 国内市場の成熟に伴い、今後の携帯電話販売は「買い替え」や「買い増し」が中心になる。端末販売が新規契約の獲得と同義だった時代は終わろうとしている。その一方で、市場が成熟した結果、コンシューマー層/ビジネス層の両方でニーズが細分化し、端末ラインナップを多様化しなければならないのが現状だ。MNPや新規参入組の登場を前に、キャリア間の競争もさらに激しくなる。

 「今の3G端末(の調達価格)は高すぎる。日本市場の先進性で仕方がない部分はあるとはいえ、端末コストの削減は急務。一方で、(端末の)開発スピードはさらに上げる必要がある」(ドコモ幹部)

汎用OSの流れは「エントリーモデル」へ

 しかし、汎用OSへの移行は端末メーカーにとって大きな負担になる。ソフトウェアのモジュール開発体制が進めば、コスト削減と開発スピード向上の効果が得られるが、その前にソフトウェアを作り直し、検証作業を一から行わねばならないからだ。また、汎用OS向けソフトウェアのチューニングには時間がかかるため、「従来製品よりも(ソフトウェアの)レスポンスが悪くなる、当初はバグなど不具合が発生しやすくなるといったデメリットがある」(端末メーカー関係者)。

 現在、汎用OS採用機はハイエンドモデル中心だが、そこには、汎用OSへの移行コストやCPUに求められるパフォーマンスを考えると「ハイエンド端末からにせざるを得ない」という事情がある。

 しかし、汎用OSの狙いであるコスト削減と開発スピード向上を考えると、将来的な流れは低価格なエントリーモデルに向かうだろう。クアルコムのBREWプラットフォームや、マイクロソフトの「Windows Mobile 5.0」などは、明らかにエントリーモデルまで含めたプラットフォーム戦略を意識している。

 先進市場の成熟と新興市場への拡大は、それぞれ異なるベクトルから端末コスト削減ニーズを生み出している。それらの動向を考えれば、携帯電話端末全体の汎用OSへのシフトは避けられない流れだ。機能ソフトウェアのモジュール化、OSおよびUIのプラットフォーム化は今後、急速に進んでいくだろう。

 先のコラムとも関連するが、汎用OSへの移行は、携帯電話端末市場のボーダーレス化を後押しする。日本の携帯電話メーカーにとって、これは試練であると同時に、チャンスでもある。

 日本メーカーは汎用OS化の流れをしっかりと掴み、海外市場への進出、世界規模でのシェア獲得を真剣に考えるべき時期にきている。

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