連載
» 2005年06月29日 10時19分 公開

子どもの交通事故を減らせ──携帯+自動車産業の可能性神尾寿の時事日想

「セキュリティ機能を持つ通信端末」になりうる携帯電話。さまざまな防犯ソリューションと結びつきつつある携帯電話だが、筆者は自動車産業との組み合わせに、ある可能性を見いだしている。

[神尾寿,ITmedia]

 過日、筆者の友人が空き巣の被害にあった。その時、現場検証にきた警察官に叱られたのだという。

 「一戸建てで昼間に留守にするなら、監視カメラを設置するか、(民間の)警備サービスくらい加入しておかないと。鍵をかけたくらいで毎日留守にするなんて、無防備すぎるよ」と。東京郊外の、ある住宅街の話である。

 警察の努力が追いつかないほど、治安は悪化しているのだろう。自衛が当たり前になる中で、民間のセキュリティサービスは急速に充実している。

 6月24日、コクヨがGPSとDoPaを用いた子ども向け防犯システム「コクヨどこライン」を発表した(6月27日の記事参照)。5月23日にはKDDIがau携帯電話向けに居場所確認サービス「安心ナビ」を投入(5月23日の記事参照)。また、この分野の草分けとしては、セコムの「ココセコム」も有名だ。

 また6月27日、ワオ・コーポレーションと大日本印刷が発表した「KIDS IN FEEL」のように、保護者へのメール連絡機能を持つ入退場管理ソリューションも今後、普及が進むだろう(6月28日の記事参照)。当面は塾や私立校からの普及になりそうだが、不審者侵入事件・犯罪が相次ぐ中、中長期的には公立校も含めた多くの学校で、FeliCaやRFIDを用いた入退場管理ゲートが設けられるだろう。

 カード型と携帯電話型の両方が使えるという点で、ここでもFeliCa/モバイルFeliCaが普及する可能性がある。

子どもが通信端末を持つ──そこにある可能性

 専用端末もしくは携帯電話として、子どもがセキュリティ機能を持つ通信端末を持ち歩くようになる。筆者はここに、もうひとつの「安全」への可能性があるのではないかと考えている。歩行者ITSによる交通安全だ。

 周知の通り、交通事故死亡者は減少傾向にある。しかし、これは衝突安全ボディの進歩や、クルマの電子安全装備の進化・普及がもたらしたものであり、事故自体は増加傾向だ。事故死亡者減少は、いずれ壁にぶちあたる。

 その壁とは、歩行者と二輪車の死亡者だ。彼らはクルマと違い、衝突安全ボディという鎧をまとわない。プリクラッシュセーフティや自動ブレーキといった電子安全装備の恩恵にもあずかれない。クルマの安全技術が向上する中で、歩行者・二輪車との安全格差は広まっている。

 歩行者の安全をどうやって守るのか。

 筆者は多くのITS関係者と意見交換や議論をしているが、その中でひとつの案としてあがっているのが、歩行者の位置をクルマに知らせる「インフォメーションセーフティ」だ。

 歩行者が発信器を持ち歩き、クルマはカーナビなど車載器で歩行者の存在を知る。位置情報は厳密でなくてもいい。歩行者の存在を知らせることがドライバーの注意を喚起し、安全に繋がるという発想である。

 もちろん、すべての歩行者・すべてのクルマにこの仕組みを普及させるのは時間とコストがかかり、現実的ではない。また「歩行者信号がなければ歩行者はいない」とドライバーがシステムを過信するようになったら、安全のためにはむしろ逆効果だ。

 そこでアイデアとしてあがっているのが、クルマから見つけにくい子どもに発信器を携行させるというものだ。クルマ側は大型商用車に歩行者情報の受信を義務づけ、乗用車もカーナビ機能の一部として対応。任意だが、ミニバンやSUVなど死角の多いクルマを中心に利用を啓蒙する。

 子どもを守るための歩行者ITS。未だアイディア段階のこのプランが、携帯電話や専用端末で普及する子ども向けセキュリティシステムに合流できないか。

 使用する電波をどうするか、端末コストはどうなるのか、端末・携帯電話のサイズやバッテリーへの影響はどうか。規格統一、ビジネスモデルはどうするのか。確かに課題は多い。

 しかし、歩行者の交通事故死亡者を減らす上で「まずは子どもから」というのは悪くないアプローチのはずだ。少なくとも、保護者のサービス利用意欲は他のユーザー層よりも高く、学校やPTAと連携すれば普及の道筋も立てやすい。

 自動車産業と連携すれば、子ども向けセーフティ市場にも可能性があるのではないだろうか。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセスランキング
  • 本日
  • 週間

    Digital Business Days

    - PR -