連載
» 2005年10月28日 18時28分 公開

ドコモショップにEdy自販機を設置したらどうだろう 神尾寿の時事日想:

おサイフケータイを始め、携帯の新しいサービス・機能の普及を阻んでいる理由の1つが「最初の1回を使ってもらえない」。トヨタの高級車ブランド「レクサス」の納車式には、携帯電話産業が学ぶべき“教訓”がある。

[神尾寿,ITmedia]

 「おサイフケータイは“利用経験”が増えるほど、満足感が高まる」

 本コラムで何度も指摘し、事例レポートでも紹介した事柄が、最新の調査報告でも実証された。NTTドコモが10月19日に公開した「おサイフケータイ(iモードFeliCa端末)」ユーザー4000人のアンケート結果によると、おサイフケータイ利用者の81%がサービスに満足し、うち99%が機種変更後も同機能を使い続けたいと答えたという(10月28日の記事参照)

 筆者のこれまでのユーザーヒアリングや事例取材でも同様の傾向が見られており、特に1日複数回の利用をするユーザーは極めて満足感が高い。「おサイフケータイが使えて当たり前」であり、利用は完全に習慣化している。利用可能な場所が広がることを強く望んでいるのだ。

 しかし一方で、「おサイフケータイ対応機を使っているが、使う最初のきっかけで躊躇する」という意見も、ユーザー取材でよく聞く。一般ユーザーにとって初めてのテクノロジー経験は、足を踏み出しにくいものなのだ。他のITサービスと同様に、一般ユーザーは「誰かに背中を押してもらう」必要がある。

見習うべきところが多いレクサスの「納車式」

 少し話題を脱線させよう。

 先日、あるセミナーにパネリストとして参加し、そこでデジタルメディアサービスの副社長である小島修氏と同席する機会があった。デジタルメディアサービスはトヨタのテレマティクス「G-BOOK」(4月14日の記事参照)の運営を行う会社である。小島氏とは控え時間にも歓談したのだが、そこでレクサス向けに新設された有人コミュニケーターサービス「レクサスオーナーズデスク」の話題になった。

 このサービスはレクサスの理念である“おもてなし”を、コミュニケーターとの電話とテレマティクスで提供するものであり、その運営には並々ならぬ努力があるのだが、この話題は別の機会に譲る。

 筆者が興味深く感じたのが、コミュニケーションセンターの稼働状況だ。レクサスオーナーズデスクは一人一人の人間がお客様に対応するため、混雑に応じた人員配置が必要なのだが、コミュニケーターの配置に六曜への配慮が欠かせないのだという。特に大安の日は「スタッフを増員する必要がある」(小島氏)ほど電話がかかってくる。これはなぜか。

 実はレクサスでは新車納車時に、専用のプレゼンテーションルームでオーナーとクルマが対面する「納車式」のセレモニーがある。ここでクルマの説明を受ける時に、必ず、オーナーズデスクに電話をかけてコミュニケーターとオーナーが話す機会を設けているのだという。

 「誰でも初めてサービスを利用する時は緊張しますからね。ディーラーで最初のコールをするようにしているのです。こうすると、その後も(サービスを)利用してもらいやすい」(小島氏)

 これでもうお分かりだろう。大安など六曜の吉日にコミュニケーションセンターが混み合うのは、納車式が多く実施されるから。レクサスは北米から凱旋したトヨタの高級ブランドだが、一方で多くのオーナーが吉日を気にするというのは、日本らしくてほほえましい。

最初の1回はショップで経験できるように

 このエピソードには携帯電話産業が“教訓”とすべき部分がある。

 おサイフケータイだけでなく、携帯電話の多くのテクノロジーは、購入後にユーザーが自発的に使い出すものとされてきた。NTTドコモでは、各地のドコモショップ単位で「ドコモ電話教室」などを積極的に展開し、リテラシー教育に努力してきたが、それもユーザーの自発的意志による参加が前提だ。

 新テクノロジーの利用はユーザー任せ。その結果として、機能の進化に“ついてこられない”ユーザーが生まれたのは周知の事実である。おサイフケータイは、このリテラシーの壁を越えるために生まれたが、それでも「最初の1回の利用」にハードルがある。

 ならば、レクサスの納車式は参考にならないか。

 最新の携帯電話の全機能を販売時に試してもらうのは無理だが、例えばドコモショップなどキャリアショップすべてにEdy対応の自動販売機を設置し、「最初の1回」としてドリンクを買ってもらうくらいはできるのではないか。新たにおサイフケータイを購入したら、ドリンク1本分のEdyバリューがプレゼントというサービスがあったら、気が利いている。

 おサイフケータイは「最初の1回」の壁を超えることが、一般層に広く普及する上での鍵だ。初めての1回はキャリアショップで経験できる、という環境作りは検討する価値がある。

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