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» 2006年02月15日 11時40分 公開

メーカー再編の春一番が吹いた 神尾寿の時事日想:

三洋電機とノキアが、携帯電話事業の合弁企業設立で合意した。両社にとってこの提携は、どのようなメリットをもたらすのだろうか?

[神尾寿,ITmedia]

 2月14日、三洋電機とフィンランドのNokiaが、CDMA携帯電話事業についての新会社を設立することを発表した(2月14日の記事参照)。2006年第2四半期に最終合意書に調印し、第3四半期には新会社の運営開始を目指す。新会社の社名は「三洋ノキアモバイルデバイシス」になるという。

 筆者は2月6日のコラムにて、日本メーカーの「国内11メーカー体制」が限界に達すること、メーカー再編の中で海外メーカーが重要な役割を果たすと書いた。しかし、これほど早いタイミングで動き出したことは予想外だったのも事実だ。それだけ日本メーカーの中長期的な展望は厳しいという事だろう。

三洋電機再編の中でのノキア提携

 今回の三洋電機とノキアの提携については、それぞれの背景事情を鑑みると、合理的な補完関係といえる(2月14日の記事参照)

 まず三洋電機であるが、同社は現在、経営危機と言える状況にあり、事業の切り売り説が業界内で囁かれていた。中でも注目されていたのが、高い将来性が見込まれる電池事業部の行方だ。電池はIT産業にとってキーデバイスであるだけでなく、自動車産業にとっても垂涎の的。「売りに出れば自動車メーカーがすぐに飛びつく」(自動車メーカー関係者)と言われていた。だが、これは「電池事業がなければ三洋電機の企業価値は大きく下がる」ということでもある。三洋にとっては、堅調な事業部の再生をしながら、電池事業を死守できるかが重要な課題になっている。

 その中で、現在は堅調だが中長期的に見れば「国内市場にしがみつけばジリ貧」の携帯電話事業の趨勢が重要な役割を担ってくる。三洋は今回、携帯電話事業をノキアに切り売りするのではなく、あくまで「(苦境から)脱出してリスタートする」ために新会社設立に踏み切った。三洋電機にとって貴重な黒字事業の分離になるが、世界規模での携帯電話市場の成長と役割の変化を考えれば、閉じた日本市場でみすみす腐らせる方がリスクが大きい。新会社の出資比率や経営権など不分明な点は多いが、北米やBRICsといった成長市場で力をつけさせることは、三洋電機にとって将来の布石になるだろう。

ノキアが欲しかったCDMA2000の切符

 一方、ノキアの思惑はさらに明白だ。同社は以前から、日本と北米の3G市場参入のテコ入れをしたいと考えており、その中で必要だったのが「CDMA2000」という切符だった。

 周知のとおり、ノキアはGSMおよびW-CDMA分野ではトップブランドになっており、技術面でも牽引役になっている。しかし、それ故にCDMA2000市場のサポートでは後手に回っており、W-CDMAとCDMA2000が市場を分け合う日本と北米市場では出遅れた感が否めない。

 特に北米市場では、スマートフォンがPC的な発展や普及をする兆候が見え始めている。市場ボリュームの魅力ももちろんだが、高機能端末や新サービスの将来に布石を打つという質的な意味での重要性が高い。となると、ノキアには北米3Gシェアが大きいCDMA2000系の市場を是が非でも獲得する必要性が出てくる。

 ノキアは今回、三洋電機をパートナーとすることで、CDMA2000市場への切符を手に入れた。キャリアとの関係が難しい日本市場はもちろん、三洋電機のリソースとノキアのブランドを組み合わせれば、北米市場でも強さを発揮できる。ノキアにとって三洋電機は魅力的なパートナーであり、今回の提携は北米市場への将来投資という意味合いが強いだろう。

さらなる再編が進む可能性

 三洋電機とノキアは、それぞれの事情や思惑はあれど、ほぼ理想的な伴侶を手に入れた。提携の結果が実際に現れるのは少し先になるが、日米の市場で重要なプレーヤーになっていくのは間違いない。特に筆者は、三洋電機の優秀な人材が、その力を海外で遺憾なく発揮してほしいと思う。

 そして、国内市場を振り返ると、三洋=ノキア提携は“メーカー再編の春一番”になりそうである。2007年以降の国内市場の飽和・縮小、高コスト体質の問題などを考えれば、日本メーカーは今後、海外市場を視野に合従連衡を進めざるを得ない状況になるだろう。その動きが日本の携帯電話産業にとって前向きなものになることに期待したい。

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